子宮腫瘍とは何か:原因、種類、診断、治療法、そして予後までの完全ガイド
子宮腫瘍とは、子宮に発生する異常な細胞増殖による腫瘍の総称であり、良性(非がん性)と悪性(がん性)の両方が含まれる。子宮は女性の骨盤内に位置する中空の臓器であり、妊娠の場であると同時に、ホルモンの影響を強く受ける器官である。腫瘍はその発生部位、組織の性質、成長の速度によって大きく分類される。以下では、子宮腫瘍の種類から診断、治療、予後までを包括的に解説する。

子宮腫瘍の主な種類
子宮腫瘍は、その性質と発生源により大きく二つに分類される。
1. 子宮筋腫(良性腫瘍)
子宮筋腫は子宮腫瘍の中で最も一般的な良性腫瘍であり、成人女性の約20〜40%が何らかの形で保有しているとされる。これは子宮の筋層(筋肉組織)から発生し、ホルモン(特にエストロゲン)に反応して増大する。
特徴:
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良性であるためがん化のリスクは極めて低い
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大きさや位置により症状の有無が異なる
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多くは無症状で偶然発見される
分類(発生位置による):
種類 | 発生部位 | 症状の出やすさ |
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筋層内筋腫 | 子宮筋層内 | 中程度 |
漿膜下筋腫 | 子宮の外側 | 無症状が多い |
粘膜下筋腫 | 子宮内膜に近い | 出血が多い |
2. 子宮内膜がん(悪性腫瘍)
子宮体がんとも呼ばれ、子宮内膜(子宮の内側を覆う組織)から発生する悪性腫瘍である。50歳以上の女性に多く、閉経後の不正出血が主な症状である。
リスク因子:
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閉経後
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肥満
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高エストロゲン状態
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糖尿病や高血圧
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遺伝的要因(例:リンチ症候群)
子宮内膜がんの分類(組織型による):
型 | 特徴 |
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類内膜腺がん | 最も一般的。ホルモン依存性で予後が良いことが多い |
漿液性がん | より悪性度が高く、進行も速い |
明細胞がん | 稀であるが予後は悪い傾向 |
子宮腫瘍の主な症状
腫瘍の種類や大きさ、部位により症状は大きく異なるが、以下が代表的である。
症状 | 発生しやすい腫瘍 |
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月経過多・不正出血 | 子宮筋腫、子宮内膜がん |
骨盤の痛み・圧迫感 | 大型の子宮筋腫 |
性交時の痛み | 粘膜下筋腫、悪性腫瘍 |
尿頻・便秘 | 漿膜下筋腫(膀胱や直腸への圧迫) |
閉経後の出血 | 子宮内膜がん |
診断方法
子宮腫瘍の診断には複数の方法が組み合わされる。
1. 問診と身体検査
患者の月経歴、出血パターン、妊娠歴、家族歴などを詳細に把握する。
2. 画像診断
検査名 | 特徴 |
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経膣超音波 | 子宮内部の様子や筋腫の有無を視覚化 |
MRI | 腫瘍の大きさ・浸潤度を詳細に評価できる |
CTスキャン | 転移評価や他の臓器との関係を見る際に有用 |
3. 細胞・組織診断
検査名 | 目的 |
---|---|
子宮内膜細胞診 | 子宮内膜のがん細胞の有無を調べる |
子宮内膜組織診 | 採取した組織の病理検査 |
子宮鏡検査 | 子宮内の視認と直接的な組織採取が可能 |
治療法
治療法は腫瘍の種類・大きさ・患者の年齢・妊娠希望の有無などによって異なる。
良性腫瘍(子宮筋腫)の治療
治療法 | 内容 | 適応 |
---|---|---|
経過観察 | 無症状または軽度の症状 | 筋腫が小さい場合 |
ホルモン療法 | GnRHアゴニストなどによる一時的縮小 | 症状緩和や手術前の準備として使う |
筋腫核出術 | 子宮を温存しつつ筋腫だけを摘出 | 妊娠希望がある場合 |
子宮全摘術 | 子宮全体を摘出 | 再発防止・閉経後・重症例 |
子宮動脈塞栓術 | 血流を遮断し筋腫を縮小 | 手術を避けたい場合 |
悪性腫瘍(子宮内膜がん)の治療
治療法 | 内容 | 適応 |
---|---|---|
手術療法 | 子宮全摘、卵巣・卵管の摘出、リンパ節郭清 | 初期段階や局所進行期 |
放射線療法 | 骨盤照射、腔内照射など | 術後補助療法や再発予防 |
化学療法 | 抗がん剤(パクリタキセル、カルボプラチン等) | 進行がんや再発例 |
ホルモン療法 | プロゲステロン製剤など | 低悪性度がんや妊娠希望時 |
子宮腫瘍の予後とフォローアップ
良性腫瘍の場合
子宮筋腫は良性であるため、命に関わることは少ないが、妊娠への影響や出血過多による貧血、生活の質の低下を招くことがある。治療後も定期的な婦人科検診が推奨される。
悪性腫瘍の場合
子宮内膜がんは比較的早期に症状が現れるため、早期発見・早期治療が可能であり、5年生存率はステージIで90%以上とされる。しかし進行例や非典型型では予後が不良となるため、定期的な画像診断や腫瘍マーカーの測定などのフォローアップが必須である。
まとめ:子宮腫瘍との向き合い方
子宮腫瘍は多くの女性にとって身近な疾患であり、特に子宮筋腫は年齢とともに高頻度にみられるがんではない腫瘍である。一方、子宮内膜がんは閉経後の女性に多く、初期に発見できれば治癒が期待できる悪性腫瘍である。いずれの腫瘍も早期発見・適切な治療・継続的なフォローアップが極めて重要である。月経の異常や骨盤の不快感など、どんな些細な症状でも放置せず、婦人科を受診することで、将来の健康と命を守ることにつながる。
参考文献
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日本産科婦人科学会「子宮体がん診療ガイドライン」
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厚生労働省「女性の健康支援情報」
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国立がん研究センター がん情報サービス
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ACOG Practice Bulletin No. 128: Diagnosis of abnormal uterine bleeding in reproductive-aged women.
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FIGO Cancer Report – International Journal of Gynecology & Obstetrics
この知識を通して、子宮腫瘍に対する正しい理解と適切な対応が日本のすべての女性の健康を守る礎となることを願ってやまない。