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実験と準実験の違い

実験的アプローチと準実験的アプローチの違いについて

心理学、社会学、教育学などの科学的研究において、データの収集と分析の方法は研究の目的に大きく影響します。実験的アプローチと準実験的アプローチは、特に因果関係を探る際に重要な手法ですが、それぞれには独自の特徴と適用範囲があります。本記事では、これらのアプローチの違い、特徴、用語について詳しく解説します。

実験的アプローチとは

実験的アプローチ(実験研究)は、科学的な方法の中でも最も厳密に因果関係を検証するための手法です。このアプローチでは、研究者が実験条件を厳密に制御し、特定の変数が他の変数に与える影響を観察します。実験的アプローチには、以下のような特徴があります。

1. 無作為割り当て(ランダム・アサインメント)

実験的アプローチでは、参加者が無作為に実験群と対照群に割り当てられます。このプロセスにより、研究者は群間の違いが処置(実験的な介入)によるものであることを確認できます。無作為割り当ては、外的要因が結果に影響を与えるのを防ぐために重要です。

2. 操作変数

実験では、研究者が独立変数(操作変数)を意図的に変更します。この操作によって、変数間の因果関係を明確にすることができます。例えば、教育方法を変更した場合、その変更が学生の学業成績にどのように影響するかを測定します。

3. 対照群の存在

実験的アプローチでは、必ず対照群(または比較群)を設置します。対照群は、介入を受けないグループで、実験群と比較することで、介入の効果を正確に測定することができます。

4. 結果の因果関係の明確化

実験的研究は、因果関係を明確に示すことができるため、非常に高い内部妥当性を持ちます。例えば、薬の効果や教育プログラムの有効性を直接的に測定することが可能です。

準実験的アプローチとは

準実験的アプローチ(準実験研究)は、実験的アプローチに似ていますが、実験的研究の厳格さを欠いています。準実験では、研究者が実験群と対照群を無作為に割り当てることができない場合があります。つまり、研究者は環境や状況によって群分けを行い、その影響を測定します。

1. 無作為割り当ての不在

準実験では、被験者がランダムに割り当てられることはほとんどありません。これは、実験条件が倫理的、実務的、または技術的な理由でランダム化できない場合に起こります。例えば、既存のクラスや地域社会で行われる研究では、無作為化が不可能なことが多いです。

2. コントロールが限られる

準実験では、実験的研究に比べて変数を厳密に操作したり、外部要因を完全に制御したりすることが難しいため、内部妥当性は低くなります。しかし、研究者はできる限りの統制を試みますが、完全な実験環境を再現することは不可能な場合が多いです。

3. 実験群と対照群の比較

準実験では、無作為割り当てができないため、実験群と比較群を慎重に選ぶ必要があります。このプロセスでは、群間の違いが介入によるものなのか、他の外的要因によるものなのかを慎重に評価しなければなりません。

4. 因果関係の推定

準実験では、因果関係を完全に証明することはできませんが、介入が結果に与える影響を推定することができます。これにより、実際の環境での影響を評価することが可能ですが、因果関係の解釈には慎重さが求められます。

実験的アプローチと準実験的アプローチの主な違い

実験的アプローチと準実験的アプローチの最も大きな違いは、無作為割り当ての有無にあります。実験的研究では無作為割り当てが行われるため、群間の違いがランダムに生じるため、因果関係を非常に強力に証明できます。一方、準実験では無作為化が行われないため、群間の違いが偶然によるものである可能性が高く、因果関係を断定するのが難しい場合があります。

さらに、内部妥当性も異なります。実験的アプローチでは、変数の操作がより厳密に制御されているため、因果関係を明確に示すことができますが、準実験では環境要因や外的要因による影響を完全に排除することはできません。このため、準実験は外的妥当性が高い場合が多い一方で、因果関係の確定には限界があります。

実験的アプローチと準実験的アプローチの適用例

実験的アプローチは、科学的な実験室での研究や、薬の効果、教育プログラムの有効性、心理学的介入の結果を検証する際に多く使用されます。例えば、ある薬の効果を実験的にテストする場合、被験者を無作為に割り当て、薬を投与した群と投与しなかった群を比較することになります。

一方、準実験的アプローチは、現実の社会で行われる研究においてよく使用されます。例えば、学校や地域社会で特定の介入が行われ、その効果を測定する場合、無作為化が難しいため、準実験的な手法が選ばれることがあります。また、企業や公共政策の評価でも、準実験は広く利用されています。

まとめ

実験的アプローチと準実験的アプローチは、どちらも因果関係を探るために重要な手法ですが、それぞれの特徴と限界を理解することが重要です。実験的アプローチは因果関係を明確に証明できる強力な手法ですが、準実験的アプローチは現実の環境で介入の影響を測定するために有効です。どちらのアプローチも、研究の目的や実施できる条件に応じて適切に選択することが求められます。

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