下痢は、特に小児において非常に一般的な症状であり、さまざまな原因によって引き起こされます。子供における下痢は、軽度であれば一時的なものに過ぎないことが多いですが、重症化すると脱水症状を引き起こす危険性もあるため、注意が必要です。本記事では、小児における下痢の原因、症状、診断、治療法について包括的に説明します。
1. 小児における下痢の定義
下痢とは、便が水分を多く含んでいる状態で、通常の便よりも回数が増加することを指します。小児の場合、下痢は一過性のものから慢性的なものまでさまざまな形態があります。急性の下痢は通常、感染症や食事の変化などが原因で発生しますが、慢性的な下痢は他の疾患が関与していることが多いです。
2. 小児における下痢の主な原因
(1) 感染症
感染症は、小児における下痢の最も一般的な原因です。ウイルス、細菌、寄生虫などが原因となることが多いです。特に以下の病原体がよく関与しています。
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ウイルス感染症
ロタウイルスやノロウイルスは、小児の急性下痢の原因としてよく知られています。ロタウイルスは特に小さな子供に多く見られ、発熱、嘔吐、腹痛を伴うことが多いです。これらのウイルスは主に口から感染し、汚染された食物や水、または感染者との接触を介して広がります。 -
細菌感染症
サルモネラ菌、大腸菌(特にO157:H7)、カンピロバクターなどの細菌が原因となることがあります。これらの細菌は、生肉や未加熱の食材を介して感染することが多く、発熱や血便を伴うことがあります。 -
寄生虫感染症
ギアジア、アメーバなどの寄生虫による感染も下痢の原因となります。これらは特に発展途上国で問題となることが多いですが、先進国でも汚染された水源などを介して感染する可能性があります。
(2) 食事や消化不良
食物アレルギーや食物不耐症(乳糖不耐症など)は、子供における下痢の原因として一般的です。乳児期には、母乳やミルクを与えた後に下痢を起こすことがあり、これがアレルギーや不耐症によるものと考えられる場合もあります。乳糖不耐症は、乳糖を分解する酵素が不足しているため、乳製品を摂取すると腹痛や下痢を引き起こすことがあります。
(3) 薬剤の使用
抗生物質の使用後に下痢を引き起こすことがあります。抗生物質は腸内の良性細菌をも殺してしまい、腸内フローラのバランスを崩すことがあります。この場合、抗生物質による腸内の乱れが原因で「抗生物質関連下痢」と呼ばれる症状が現れます。
(4) 腸疾患
慢性的な下痢は、炎症性腸疾患(IBD)や過敏性腸症候群(IBS)などの腸の疾患が関与していることもあります。これらは、特に慢性下痢を引き起こす原因となり、診断には専門的な医療評価が必要です。
(5) ストレスや心理的要因
子供が強いストレスを感じている場合、または新しい環境に適応しようとする場合に、消化系の不調が引き起こされることがあります。このような場合、心理的な要因が下痢の引き金となることがあります。
3. 小児の下痢の症状
下痢が発生すると、子供は以下のような症状を示すことがあります。
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頻繁な便通
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便が水分を多く含んでいる
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腹痛や膨満感
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嘔吐や発熱
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食欲不振
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脱水症状(口渇、涙が出ない、尿の回数が減る、乾燥した肌)
下痢が続くと、脱水症状を引き起こすリスクが高くなります。特に乳幼児や高齢の子供においては、脱水症状が急速に進行することがあるため、早期の対処が求められます。
4. 下痢の診断
小児の下痢の診断には、医師が病歴を詳しく聞き、症状や生活環境を確認することから始まります。また、以下のような検査が行われることがあります。
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便検査
感染症が原因であるかを確認するために、便を検査することがあります。細菌、ウイルス、寄生虫などが検出されることがあります。 -
血液検査
脱水の程度や、その他の健康問題を評価するために血液検査が行われることがあります。 -
内視鏡検査
慢性的な下痢や炎症性腸疾患が疑われる場合、内視鏡を使って腸の内部を調べることがあります。
5. 小児の下痢の治療法
(1) 水分補給
脱水症状の予防が最も重要な治療です。水分補給は、特に電解質を含む経口補水液(ORS)を用いることが推奨されます。ORSは、体内の水分と電解質を素早く補充するために特別に調整された溶液であり、下痢による脱水を防ぐのに非常に効果的です。
(2) 食事の管理
軽い下痢の場合、消化に優しい食事を与えることが推奨されます。例えば、白ご飯、リンゴソース、トーストなどが適しています。脂っこい食べ物や乳製品は避けることが推奨されます。重度の下痢の場合は、一時的に固形物を控えて流動食を与えることが多いです。
(3) 抗生物質や薬剤
感染症が原因の場合、細菌感染には抗生物質が処方されることがあります。しかし、ウイルス性の下痢には抗生物質は効かないため、症状を緩和する治療が中心となります。また、腸の動きを調整する薬(例:ロペラミド)は小児には使用が制限されることが多いため、必ず医師の指示を仰ぐ必要があります。
(4) 入院と点滴
重度の脱水症状が見られる場合、または他の合併症が疑われる場合には、入院して点滴治療が必要になることがあります。特に乳幼児や免疫力が低い子供では、早期の対処が重要です。
6. 予防
小児の下痢を予防するためには、以下のような対策が有効です。
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手洗いの徹底
食事の前やトイレの後には、手をしっかり洗うことが重要です。ウイルスや細菌の感染を防ぐために、衛生管理を徹底しましょう。 -
予防接種
ロタウイルスワクチンは、子供のロタウイルスによる下痢の発症を予防するために有効です。ワクチンを受けることで、重症化を防ぐことができます。 -
食物の衛生管理
生肉や未加熱の食物は避け、食品の衛生状態を保つことが重要です。特に旅行先での食事には注意が必要です。
