卵巣嚢腫（おうさのうしゅ）とは、卵巣にできる袋状の腫瘍で、女性の生理周期に関連するホルモンの変化によって発生することが多いです。卵巣嚢腫は通常、良性（がんではない）であることが多いですが、時には問題を引き起こすこともあります。この記事では、特に左卵巣にできた嚢腫の症状について、詳しく説明します。
1. 卵巣嚢腫の基本的な概要
卵巣は、女性の生殖器官の一部で、卵子を生成し、ホルモン（エストロゲンやプロゲステロンなど）を分泌する重要な役割を担っています。卵巣嚢腫は、これらの卵巣の一部に異常な膨張が生じ、液体が溜まることによって形成されます。多くの場合、嚢腫は良性で無症状であり、検診で偶然見つかることが多いです。しかし、症状が現れる場合もあります。
2. 左卵巣における嚢腫の症状
卵巣嚢腫は、右卵巣または左卵巣のどちらにも発生する可能性があります。左卵巣に嚢腫ができた場合、その症状は他の病状と混同されることがあるため、注意が必要です。左卵巣嚢腫の主な症状を以下に示します。
(1) 腹痛または骨盤痛
卵巣嚢腫の最も一般的な症状は腹部の痛みです。左卵巣に嚢腫ができると、左側の下腹部に鈍い痛みや違和感を感じることがあります。この痛みは、月経周期に関連していることもあり、特に排卵時や生理前後に悪化することがあります。痛みが持続的であったり、強くなったりする場合は、嚢腫が大きくなっていることを示唆している可能性があります。
(2) 生理不順
卵巣嚢腫がホルモンに影響を与えることがあるため、生理周期に異常をきたすことがあります。左卵巣に嚢腫がある場合、生理が遅れる、または過剰に出血することがあり、生理の周期が不安定になることがあります。特に排卵が不規則になることが多いため、周期の変動が顕著に現れることがあります。
(3) 腹部膨満感
嚢腫が大きくなると、左側の腹部が膨らんで感じることがあります。この膨満感は、嚢腫が物理的に周囲の組織を圧迫するために起こるもので、食事後に特に目立つことがあります。この症状は、消化不良や便秘と誤解されることもあります。
(4) 性交時の痛み
卵巣嚢腫は、性交時に不快感や痛みを引き起こすことがあります。左卵巣に嚢腫がある場合、性交後に左側の腹部に鈍い痛みを感じることがあります。この痛みは、嚢腫が大きくなることによって圧迫されることに関連しています。
(5) 尿意の頻度増加
嚢腫が大きくなると、膀胱や腸に圧力をかけることがあります。この圧迫により、尿意が頻繁に起こることがあります。特に、膀胱が圧迫されることによって、尿の回数が増えることがありますが、これは左卵巣に嚢腫がある場合でもよく見られる症状です。
(6) 激しい痛み（嚢腫破裂やねじれ）
卵巣嚢腫が急激に大きくなったり、破裂したり、卵巣がねじれたりすると、非常に強い腹痛が発生することがあります。この痛みは突然起こり、急性のもので、緊急の医療処置が必要です。嚢腫の破裂やねじれは、生命に関わる合併症を引き起こすことがあるため、早期の診断と治療が重要です。
3. 左卵巣嚢腫の診断方法
左卵巣に嚢腫があると疑われる場合、医師は以下の方法で診断を行います。
(1) 超音波検査（エコー）
超音波検査は、卵巣嚢腫の最も一般的で有効な診断方法です。非侵襲的で痛みを伴わないこの検査により、嚢腫の大きさ、形状、内容物（液体など）を確認することができます。
(2) 血液検査
卵巣嚢腫がホルモンに関連している場合、血液検査でホルモンバランスを調べることがあります。また、腫瘍マーカー（CA125など）を測定することで、嚢腫が良性か悪性かを推測する手がかりになることがあります。
(3) CTスキャンまたはMRI
嚢腫が非常に大きく、超音波検査での評価が不十分な場合、CTスキャンやMRIが行われることがあります。これらの検査は、嚢腫の詳細な位置や周囲の臓器との関係を評価するのに役立ちます。
4. 治療方法
左卵巣に嚢腫が発見された場合、その治療方法は嚢腫の大きさ、種類、症状の有無などによって異なります。
(1) 経過観察
小さな嚢腫は特に治療を必要とせず、定期的なフォローアップで経過を観察することが一般的です。嚢腫は時間と共に自然に縮小することもあります。
(2) 薬物療法
痛みがひどい場合や、ホルモンに関連した問題がある場合、医師が痛み止めやホルモン療法を処方することがあります。ホルモン療法は嚢腫の成長を抑えるのに役立つことがあります。
(3) 手術
嚢腫が非常に大きく、破裂のリスクが高い場合や、症状が強い場合は手術が検討されることがあります。手術は、嚢腫を取り除くためのもので、通常は腹腔鏡手術が行われます。
5. まとめ
左卵巣に嚢腫ができた場合、腹痛や生理不順、性交痛など、さまざまな症状が現れる可能性があります。しかし、嚢腫が無症状であることも多く、定期的な検診で発見されることが一般的です。症状が気になる場合や、急激な痛みを感じた場合には、早期の診断と治療を受けることが重要です。卵巣嚢腫の多くは良性であり、適切な治療を受ければ問題なく回復することができます。