帝王切開(けいおうせっかい、または「きいせっかい」)は、自然分娩ではなく、外科的手術によって赤ちゃんを取り出す方法です。この手術は、母体や赤ちゃんの健康を守るために行われることが多く、分娩方法としては通常の分娩よりもリスクが高いとされますが、適切な状況下で行うことで、母体と赤ちゃんの安全を確保することができます。帝王切開にはいくつかの理由がありますが、それぞれのケースで異なります。以下では、帝王切開が行われる代表的な原因について詳述します。
1. 母体の健康状態による理由
母体の健康が悪化している場合、自然分娩は危険を伴うことがあります。例えば、以下のような病状がある場合には、帝王切開が選択されることがあります。

1.1 妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)
妊娠中毒症は、高血圧や浮腫、タンパク尿などを引き起こし、母体や胎児に深刻な影響を及ぼすことがあります。この病気が重症化すると、母体の命に関わることもあり、帝王切開が必要になる場合があります。
1.2 糖尿病
妊娠糖尿病を発症している場合、赤ちゃんの体重が異常に増加することがあり、これが自然分娩を困難にする原因となります。大きすぎる赤ちゃん(巨大児)は、骨盤を通り抜けるのが難しく、帝王切開を選択する理由となります。
1.3 心臓病や呼吸器系の疾患
母親が心臓病や呼吸器系の疾患を持っている場合、分娩中のストレスが健康に重大な影響を与えることがあります。このような場合、自然分娩を避け、帝王切開を行うことがあります。
2. 胎児の健康状態による理由
胎児の健康が母体に比べて問題を抱えている場合、帝王切開が必要になることがあります。以下はその代表的な例です。
2.1 胎児の心拍数異常
分娩中に赤ちゃんの心拍数が異常になることがあります。これが続くと、赤ちゃんの酸素供給が十分でない状態になり、命に関わるリスクが高まります。このような場合、帝王切開が迅速に行われることがあります。
2.2 胎児の位置異常
通常、赤ちゃんは頭を下にして産道を通る準備をしますが、逆子(お尻が下)や横向きの状態で位置することもあります。逆子のままで分娩を試みると、出産時に赤ちゃんが傷つくリスクが高くなります。そのため、逆子の場合には帝王切開が選択されることが一般的です。
2.3 胎盤の異常
胎盤が子宮内で正常に位置していない場合(前置胎盤や胎盤剥離など)、胎児の酸素供給が妨げられ、帝王切開が必要になることがあります。胎盤が早期に剥がれることがあると、母体と胎児の双方に危険が及ぶため、迅速な対応が求められます。
3. 出産進行の遅延や難産
自然分娩が進まない場合や、分娩中に母体や胎児に危険が及ぶ場合、帝王切開が選択されることがあります。
3.1 分娩の進行が遅い
陣痛が始まっても、子宮口が十分に開かない場合や、赤ちゃんが下がらない場合、自然分娩が困難になることがあります。長時間にわたって分娩が続くと、母体や胎児にストレスがかかり、最終的に帝王切開を選択することがあります。
3.2 子宮収縮が弱い
陣痛が弱く、子宮の収縮が十分に起こらない場合、赤ちゃんが産道を通るのが難しくなります。適切な収縮がない場合、帝王切開が必要になることがあります。
4. 産道に関する問題
母体の産道に異常がある場合、赤ちゃんが通過できなくなることがあります。このような場合、帝王切開が適切な選択肢となります。
4.1 骨盤狭窄
母親の骨盤が狭い場合や、骨盤の形状に異常がある場合、赤ちゃんが通るのが難しくなります。これを「骨盤狭窄」と呼び、赤ちゃんが骨盤を通過できない場合、帝王切開が必要です。
4.2 前回の帝王切開
過去に帝王切開を受けたことがある女性は、次回の出産でも同様の方法が推奨されることが多いです。前回の手術で子宮に傷がついている場合、次回の自然分娩で破裂のリスクが高まるため、帝王切開が推奨されます。
5. 医療的な理由
医療的な理由で、事前に計画的に帝王切開を行うことがあります。例えば、妊娠中に母体や胎児に異常が見つかった場合や、分娩に際して予測されるリスクがある場合です。
5.1 妊娠中の感染症
妊娠中にヘルペスウイルスやHIVなどの感染症が発症した場合、自然分娩では赤ちゃんに感染を広げる可能性があるため、帝王切開が選ばれることがあります。
5.2 産後出血のリスク
過去に大量出血を経験したことがある場合や、出血傾向がある場合には、自然分娩で出血が起きるリスクを避けるため、帝王切開が選択されることがあります。
結論
帝王切開は、母体と胎児の安全を確保するために行われる重要な手術ですが、その決定は医師と母親との協議によってなされます。自然分娩に比べてリスクは高いものの、適切なタイミングで行うことで、母体や赤ちゃんの命を守るための最適な方法となることが多いです。帝王切開が必要な場合には、医療チームによる十分な説明とサポートを受けることが大切です。