心不全(または心臓の機能不全)は、心臓が身体に必要な血液を効率的に送ることができなくなる状態です。この状態は、通常、心臓の筋肉が弱まることや心臓の他の部分が正常に機能しなくなることによって引き起こされます。心不全は、突然の発症や徐々に進行する場合があり、早期に発見し治療を行うことが重要です。本記事では、心不全の原因やメカニズム、症状、診断方法、治療法について詳しく説明します。
1. 心不全の原因
心不全は様々な原因によって引き起こされることがありますが、以下のような主要な要因が考えられます。

1.1. 高血圧
高血圧は、心不全の最も一般的な原因の一つです。高血圧が続くと、心臓は血液を押し出すために必要以上に働き、最終的には心筋が肥大し、弱くなります。これにより、心臓が効率的に血液を循環させる能力が低下します。
1.2. 冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)
冠動脈疾患は、心臓に酸素と栄養を供給する冠動脈が詰まったり狭くなったりすることによって引き起こされます。これにより、心筋が酸素不足になり、心筋梗塞(心臓発作)が起こると、心筋が永久的に損傷を受け、心臓の機能が低下します。
1.3. 心筋症
心筋症は、心筋が異常に肥大したり硬くなったりする疾患です。この病気は、遺伝的要因やウイルス感染、アルコールや薬物の影響など、さまざまな原因で発症することがあります。心筋がうまく収縮できなくなるため、血液を十分に送り出せなくなります。
1.4. 弁膜症
心臓の弁が正常に開閉しない場合、血液の流れに障害が生じ、心臓に負担がかかります。弁膜症には、弁が閉じない「逆流性」、または開かない「狭窄性」があります。これらの状態は、最終的に心不全を引き起こす可能性があります。
1.5. 心臓のリズム異常(不整脈)
心臓のリズムが不規則になることで、心臓の効率的な拍動が妨げられ、血液の流れがうまくいかなくなります。特に、心房細動や心室頻拍などは心不全の原因となり得ます。
1.6. 糖尿病
糖尿病は、高血糖が続くことによって、血管や心筋を傷つける原因となり、心不全を引き起こすリスクを高めます。特に、糖尿病患者は冠動脈疾患や高血圧を併発することが多く、心不全の発症を助長します。
1.7. 肥満
肥満は心臓に過度な負担をかけ、心不全を引き起こす原因となります。特に内臓脂肪が蓄積することで、心血管系に悪影響を及ぼします。
1.8. 肺疾患
慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺高血圧症などの肺疾患は、心臓に負担をかけ、右心不全を引き起こすことがあります。これらの疾患では、酸素不足が心臓にストレスを与えるため、心不全のリスクが高くなります。
2. 心不全のメカニズム
心不全の発症には、心臓のポンプ機能が低下することが関与します。心臓が効率的に血液を送り出せなくなると、体内の血液循環が悪化します。その結果、身体の各組織に必要な酸素や栄養が届かなくなり、むくみ(浮腫)や呼吸困難、倦怠感などの症状が現れます。
心不全は、主に左心不全と右心不全に分類されます。左心不全では、心臓の左側が血液を送り出す能力が低下し、肺に血液がうっ滞します。これにより、息切れや喘鳴が生じることがあります。右心不全は、心臓の右側が血液を送り出す能力が低下し、全身に血液がうっ滞します。これにより、足や腹部のむくみが見られます。
3. 心不全の症状
心不全の症状は、病状の進行具合や原因に応じて異なりますが、一般的には以下のような症状が現れます。
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息切れ(特に運動時や横になると悪化)
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浮腫(むくみ)(足、腹部、顔など)
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疲労感や倦怠感
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夜間の頻尿
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体重増加(水分が体内にたまることによる)
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咳や喘鳴
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食欲不振や悪心
4. 心不全の診断方法
心不全の診断には、患者の症状、病歴、身体検査、そしていくつかの検査が行われます。主な診断方法は以下の通りです。
4.1. 血液検査
心不全の診断には、心臓の負担を示すバイオマーカー(例:BNPやNT-proBNP)を測定することが有用です。
4.2. 心電図(ECG)
心電図は、心臓のリズムや電気的な異常を評価するために使用されます。不整脈や心筋梗塞の兆候を確認できます。
4.3. 超音波検査(心エコー)
心エコーは、心臓の形態や機能を評価するために使用されます。心臓の収縮能力や弁の異常、心筋の状態を確認できます。
4.4. X線検査
胸部X線検査は、心臓の大きさや肺に水分が溜まっているかどうかを調べるために行われます。
4.5. MRIやCTスキャン
心臓の詳細な画像を取得するために、MRIやCTスキャンが使用されることもあります。
5. 心不全の治療方法
心不全の治療は、症状を軽減し、心臓の機能を改善することを目的としています。治療方法は、原因や病状の進行具合によって異なりますが、主に以下のような方法があります。
5.1. 薬物療法
心不全の治療には、以下の薬剤が使用されます。
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ACE阻害薬やARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬):血圧を下げ、心臓の負担を軽減します。
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β遮断薬:心拍数を減らし、心臓への負担を軽減します。
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利尿剤:体内の余分な水分を排出し、浮腫を軽減します。
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アルドステロン拮抗薬:心不全の進行を遅らせることができます。
5.2. 外科的治療
場合によっては、外科的手術が必要となることがあります。例えば、冠動脈バイパス手術や心臓移植が検討されることがあります。
5.3. デバイス治療
ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)が使用されることもあります。これらは、心臓のリズムを正常に保つために使用されます。
6. 予防と生活習慣の改善
心不全を予防するためには、生活習慣の改善が不可欠です。以下のような生活習慣の見直しが推奨されます。
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バランスの取れた食事(低塩分、低脂肪食)
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定期的な運動(医師の指導のもとで行う)
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禁煙と節酒
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ストレス管理(リラクゼーションや十分な睡眠)
心不全は、早期発見と適切な治療によって症状の改善が可能です。リスク因子を避け、健康的な生活を送ることが、心不全の予防に大きく貢献します。