心血管疾患

心内膜炎の症状と治療

心内膜炎は、心臓の内膜(心内膜)に感染が広がる病気で、細菌や他の微生物が原因となります。この病気は、早期に診断して治療を開始しないと、重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、早期の認識と適切な治療が非常に重要です。この記事では、心内膜炎の症状、原因、診断方法、治療法について詳しく解説します。

1. 心内膜炎の症状

心内膜炎の症状は多岐にわたり、感染の進行具合や感染源によって異なることがあります。一般的に見られる症状は以下の通りです。

1.1 発熱

最も一般的な症状の一つが発熱です。発熱はしばしば高熱となり、感染が体内で進行している兆候として現れます。体温は通常、38度以上に達することがあり、抗生物質で治療を行っても症状が長引くことがあります。

1.2 倦怠感

心内膜炎にかかると、全身の倦怠感や疲れがひどくなることがあります。これは、感染が身体全体に影響を及ぼしていることを示しており、日常的な活動が困難になることがあります。

1.3 心臓の異常

心内膜炎が進行すると、心臓に異常が現れることがあります。これには心雑音や動悸、息切れが含まれます。特に、心臓の弁に影響を与えることが多く、心不全や弁膜症を引き起こすことがあります。

1.4 血行動態の変化

血圧の低下や脈拍の異常も見られることがあります。これは、心臓の機能が低下していることを示唆しており、進行した場合にはショック状態に至ることもあります。

1.5 皮膚や眼の異常

心内膜炎が進行すると、皮膚に異常が現れることもあります。小さな赤い斑点や、手足の爪に線状の出血が見られることがあります(Osler結節やJaneway病変)。また、目の周囲に出血や炎症が見られることもあります。

1.6 呼吸困難

心内膜炎が進行すると、肺に血栓が詰まることがあります。これにより呼吸が困難になり、息切れや胸の痛みが現れることがあります。これらの症状は、急速に悪化する可能性があり、早期に治療が必要です。

2. 心内膜炎の原因

心内膜炎は主に細菌感染が原因で発症しますが、ウイルスや真菌も原因となることがあります。以下は主な原因菌です。

2.1 ストレプトコッカス属

最も一般的な原因菌の一つです。特に、口腔内や喉に存在する細菌で、歯科処置や喉の手術などをきっかけに感染が広がることがあります。

2.2 スタフィロコッカス属

スタフィロコッカス・アウレウスなどの細菌も心内膜炎の原因となります。これらの細菌は、静脈内のカテーテルや注射器などを介して血流に入り、心臓に感染を引き起こすことがあります。

2.3 真菌感染

免疫系が弱っている人々や、長期にわたって抗生物質を使用している患者では、真菌による心内膜炎が発生することがあります。カンジダ属などが原因となることがあります。

2.4 その他の要因

慢性の心疾患や人工弁、過去の心内膜炎の履歴がある患者は、感染のリスクが高くなります。また、薬物注射を行っている人や免疫抑制剤を使用している患者もリスクが高いとされています。

3. 心内膜炎の診断方法

心内膜炎の診断は、症状の確認とともに、いくつかの検査を組み合わせて行われます。主な診断方法は以下の通りです。

3.1 血液検査

心内膜炎が疑われる場合、まず血液検査が行われます。感染症が疑われる場合は、血液培養検査が行われ、細菌が血液中に存在するか確認されます。培養で菌が検出されると、感染の原因となる微生物を特定することができます。

3.2 心エコー

心臓の構造や機能を評価するために心エコーが行われます。心内膜炎が進行すると、心臓の弁に異常が現れることがあるため、エコーでその状態を確認することができます。特に経食道心エコーが有効です。

3.3 CTスキャンやMRI

感染が心臓以外の部位に広がっている場合、CTスキャンやMRIが使われることがあります。これらの画像診断によって、感染の広がりや他の臓器への影響を評価します。

4. 心内膜炎の治療法

心内膜炎の治療は、感染の種類や進行具合によって異なりますが、基本的な治療法は以下の通りです。

4.1 抗生物質療法

細菌性の心内膜炎の場合、抗生物質が最も一般的な治療法です。血液培養で検出された細菌に応じて、適切な抗生物質が選ばれます。治療は通常、入院して点滴による投与が行われます。

4.2 手術療法

感染が心臓の弁に広がり、弁の損傷が進行した場合、手術が必要になることがあります。感染が広がりすぎている場合や、薬物治療が効果を示さない場合には、感染した弁を交換する手術が行われることもあります。

4.3 サポート療法

感染症が重症化した場合、心臓の機能が低下することがあります。この場合、心臓の機能をサポートするための薬物や、人工呼吸器を使用することがあります。また、重篤な合併症に対する治療も並行して行われます。

5. 予防方法

心内膜炎を予防するためには、以下のような方法が有効です。

  • 口腔ケア: 歯科治療や口腔手術後に心内膜炎を予防するため、抗生物質を予防的に投与することがあります。

  • 手術前の抗生物質投与: 重大な手術を行う前に、感染リスクが高い場合には抗生物質を投与することがあります。

  • 免疫系の強化: 健康な生活習慣を維持し、免疫力を高めることで感染症のリスクを減らすことができます。

結論

心内膜炎は、早期に発見し適切な治療を行うことで予後を改善できる病気です。発熱や倦怠感、呼吸困難などの症状が現れた場合、早期に医師の診察を受けることが重要です。心内膜炎のリスクが高いとされる人々は、予防措置をしっかりと行い、定期的な検査を受けることが大切です。

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