心臓の弁膜炎(心臓弁炎)は、心臓の弁が炎症を起こす病状であり、通常、細菌やウイルスによる感染が原因です。弁膜炎は、弁の機能を妨げ、血液の流れを制限することがあり、最終的には心不全や他の深刻な合併症を引き起こす可能性があります。この記事では、心臓弁膜炎の治療方法について、原因、診断、治療法、予防策を包括的に解説します。
1. 心臓弁膜炎の原因
心臓弁膜炎は、通常、感染症によって引き起こされます。特に、以下の細菌やウイルスが関与しています。

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細菌性心臓弁膜炎(感染性心内膜炎)
このタイプの弁膜炎は、血流を通じて心臓の弁に到達した細菌が原因です。主に、口腔内の細菌(例えば、ストレプトコッカス)が血流に入り込むことで発症します。歯科治療や口腔内の感染が引き金となることがあります。 -
非感染性心臓弁膜炎
非感染性の弁膜炎は、リウマチ熱やその他の免疫系の障害によって引き起こされることがあります。これにより、心臓の弁に炎症が生じ、長期的には弁の機能に影響を与えることがあります。 -
ウイルス性心臓弁膜炎
一部のウイルス、特にコロナウイルスやエンテロウイルスが心臓に感染することがあり、これが弁膜炎を引き起こすことがあります。ウイルス性の場合、通常は細菌性よりも軽度であることが多いですが、慢性化すると重篤な影響を与える可能性があります。
2. 心臓弁膜炎の症状
心臓弁膜炎の症状は多岐にわたり、感染の進行具合や原因に応じて異なります。主な症状には以下のものがあります:
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発熱
細菌感染による弁膜炎では、高熱がしばしば見られます。 -
疲労感や倦怠感
血液の流れが妨げられ、心臓が十分に機能しないため、患者は極度の疲労を感じることがよくあります。 -
息切れや胸痛
血液の循環が悪化することにより、息切れや胸の圧迫感を感じることがあります。 -
心雑音
弁に異常が生じることで、心音に雑音が聞こえることがあります。これが診断の手がかりとなります。
3. 診断方法
心臓弁膜炎の診断には、いくつかの重要な検査が使用されます:
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聴診
最初の診断は、医師による聴診で行われます。心雑音があるかどうかを確認し、異常があればさらなる検査が行われます。 -
血液検査
感染の兆候を確認するために、血液検査を行います。白血球数の増加やCRP(C反応性蛋白)の上昇が見られる場合、感染症の可能性が示唆されます。 -
エコーカーディオグラフィー(心エコー)
心臓弁の異常を詳細に確認するため、エコー検査を行います。これにより、弁の損傷や血液の逆流が確認されます。 -
CTスキャンやMRI
より詳細な画像を得るために、CTスキャンやMRIが使用されることもあります。
4. 心臓弁膜炎の治療法
心臓弁膜炎の治療は、原因や症状の進行具合に応じて異なります。主な治療方法には以下のものがあります:
4.1 抗生物質による治療
感染が原因である場合、抗生物質が使用されます。細菌性の場合は、点滴で強力な抗生物質を投与することが一般的です。抗生物質は、感染の広がりを防ぐために早期に開始することが重要です。
4.2 手術
薬物療法では効果が不十分な場合や、弁の損傷が重度の場合には、手術が検討されます。手術の内容は以下のようなものがあります:
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弁の修復
弁の損傷が軽度であれば、修復手術が行われます。これにより、弁の正常な機能が回復します。 -
弁の置換
弁が著しく損傷している場合、人工弁への置換が必要となります。この手術は、患者の年齢や健康状態を考慮して行われます。
4.3 対症療法
感染症による発熱や倦怠感を軽減するために、解熱剤や鎮痛剤が使用されることがあります。また、心不全の症状を緩和するために、利尿剤やACE阻害剤などが処方されることがあります。
5. 予防策
心臓弁膜炎を予防するためには、以下の点に注意が必要です:
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口腔ケアの徹底
口腔内の細菌が血流に入るのを防ぐため、歯の治療や口腔ケアを徹底することが重要です。特に、歯周病や歯の感染症がある場合は、治療を早急に受けることが推奨されます。 -
予防的抗生物質の使用
歯科治療や外科的手術を受ける際、リスクが高い患者には予防的に抗生物質を投与することがあります。 -
定期的な健康チェック
心臓病の既往がある場合や心臓弁に異常が見られる場合、定期的な検診を受け、早期に異常を発見することが重要です。
6. まとめ
心臓弁膜炎は、早期に診断し、適切な治療を行うことで、重篤な合併症を防ぐことが可能です。感染が原因であれば、抗生物質による治療が有効であり、必要に応じて手術が行われます。また、予防策を講じることによって、この病気の発症を防ぐことができます。健康な心臓を維持するためには、日々のケアと定期的な検診が重要です。