思春期とは、人間の成長過程において子どもから大人へと移行する重要な発達段階である。この時期は、身体的・心理的・社会的変化が急速に進行し、個人のアイデンティティが形成される決定的な時期である。一般的に、思春期は10歳頃から始まり、18歳頃まで続くが、個人差があり、開始時期や進行の速度には幅がある。
思春期の身体的変化
思春期の最も顕著な特徴のひとつが身体的な変化である。これらの変化は性ホルモンの分泌によって引き起こされる。男子では主にテストステロン、女子ではエストロゲンとプロゲステロンが中心的な役割を果たす。

男子の場合、声変わり、筋肉量の増加、身長の急激な伸び、顔や体の毛の発生、精通の開始などが見られる。女子では、初潮(初めての月経)、乳房の発達、皮下脂肪の増加、身長の伸びなどが起こる。
これらの変化は個人によって異なる時期に現れるため、同年代の間でも大きな違いが生じることがあり、これが思春期特有の不安感や劣等感の原因となることもある。
心理的・感情的変化
思春期には心理的変化も顕著であり、特に感情の起伏が激しくなる傾向がある。これは、脳の前頭前皮質(判断・意思決定を担う部分)の発達がまだ不完全である一方で、感情を司る大脳辺縁系の活動が活発になるためである