急性膵炎は、膵臓の突然の炎症を指し、消化酵素が膵臓内で活性化され、膵臓自身を消化することによって引き起こされる疾患です。この疾患は、軽度のものから重度で致命的なものまでさまざまであり、早期の診断と適切な治療が重要です。急性膵炎の症状、原因、診断方法、治療法について、完全かつ包括的に説明します。
急性膵炎の原因
急性膵炎の最も一般的な原因は、胆石とアルコールの摂取です。これらは膵臓の管を塞ぐことによって、消化酵素が膵臓内で活性化され、自己消化が始まります。しかし、急性膵炎の原因はこれに限らず、さまざまな要因が関与しています。

- 胆石:膵臓への膵管の閉塞を引き起こし、膵液が膵臓内に逆流します。これにより消化酵素が膵臓内で活性化され、膵臓自身を消化します。
- アルコール:過度なアルコール摂取は膵臓に負担をかけ、炎症を引き起こします。アルコールは膵液の分泌を異常にし、膵臓内で消化酵素が活性化される原因となります。
- 高脂血症:血中の脂質が異常に高くなると、膵臓に負担がかかり、炎症を引き起こすことがあります。
- 薬剤:いくつかの薬剤が急性膵炎の原因となることがあります。特に、免疫抑制剤や抗生物質が関連することが知られています。
- 外傷や手術:膵臓への外的な衝撃や手術によっても急性膵炎が引き起こされることがあります。
- 感染症:特定のウイルスや細菌感染も急性膵炎を引き起こす可能性があります。
急性膵炎の症状
急性膵炎の症状は多岐にわたりますが、最も特徴的な症状は腹部の激しい痛みです。症状は以下の通りです:
- 腹部の痛み:急性膵炎では、上腹部または腹部の中央に強い痛みが現れます。痛みは背中に広がることがあり、しばしば食後やアルコール摂取後に悪化します。
- 吐き気と嘔吐:膵臓の炎症により、消化不良や嘔吐が伴うことがあります。
- 発熱:炎症に伴い、体温が上昇することがあります。
- 膨満感と消化不良:腹部の膨満感や、食べ物が胃腸で正常に消化されない感じがすることがあります。
- 黄疸:膵臓の炎症が胆管を圧迫することにより、黄疸が現れることがあります。
急性膵炎の診断方法
急性膵炎の診断は、患者の症状、血液検査、画像診断を基に行います。
- 血液検査:膵臓に関連する酵素、特にアミラーゼとリパーゼの値が急激に上昇することが急性膵炎の指標となります。また、炎症を示す白血球数やCRP(C反応性蛋白)の上昇も診断に役立ちます。
- 画像診断:
- 腹部超音波:胆石の有無や膵臓の腫れを確認するために使用されます。
- CTスキャン:膵臓の炎症や合併症(膵臓の壊死、膿瘍など)を評価するために用いられます。
- MRI:膵臓や胆道系の異常を詳細に確認するために使用されることがあります。
急性膵炎の治療法
急性膵炎の治療は、炎症の軽減、合併症の予防、膵臓の回復を目的としています。治療は主に以下の方法に分かれます:
- 絶食と水分補給:膵臓を休ませるために、急性膵炎の患者は初期段階で絶食を行います。水分は点滴で補給され、脱水症状を防ぎます。
- 鎮痛薬:激しい痛みを和らげるために、鎮痛薬が処方されることがあります。
- 抗生物質:感染症が原因で急性膵炎が発症した場合、抗生物質が使用されることがあります。膵臓に膿瘍や壊死が生じた場合にも使用されます。
- 内視鏡的治療:胆石が原因で急性膵炎が発生した場合、内視鏡を使って胆管内の石を取り除く手術が行われることがあります。
- 外科的治療:膵臓が壊死し、大きな膿瘍が形成されている場合、手術が必要となることがあります。壊死した膵臓の一部を取り除くことがあります。
急性膵炎の予防
急性膵炎を予防するためには、いくつかの生活習慣の改善が必要です。予防策としては以下の点が挙げられます:
- 過度なアルコール摂取を避ける:アルコールが急性膵炎の最も一般的な原因のひとつであるため、適度な量を守ることが重要です。
- 健康的な食生活:脂肪分が多い食事を避け、バランスの取れた食事を心掛けることで、高脂血症を予防できます。
- 定期的な健康診断:胆石や膵臓に関連する疾患の早期発見が急性膵炎の予防につながります。
急性膵炎の合併症
急性膵炎が重症化すると、いくつかの合併症が生じることがあります。これらの合併症には、膵臓の壊死、膵臓周囲の膿瘍、感染症、心不全、腎不全などが含まれます。重篤な場合、急性膵炎が多臓器不全を引き起こし、命に関わることもあります。
結論
急性膵炎は膵臓の急激な炎症であり、軽度の症例から重篤なものまで様々な形態をとります。発症の原因には胆石やアルコール、薬剤、感染症など多くの要因が関与しています。早期の診断と適切な治療が予後を大きく左右し、重症化を防ぐためには、適切な管理が不可欠です。また、急性膵炎の予防には生活習慣の改善が重要であり、健康的な食事とアルコールの摂取制限が効果的です。急性膵炎を適切に治療し、予防することが、患者の回復に繋がる重要なステップとなります。