急性膵炎の診断と治療

急性膵炎：定義、診断、予後、治療

急性膵炎は、膵臓の炎症が急激に発生する疾患であり、膵臓が自己消化を引き起こすことにより膵臓の機能が障害されることを特徴とします。この疾患は、適切な治療が行われない場合には生命を脅かす可能性があり、そのため早期発見と迅速な対応が求められます。急性膵炎は、その発症の原因や症状、診断方法、予後、治療法に関して多くの医学的な議論を生む分野であり、患者に対して最適な医療提供が必要です。本稿では、急性膵炎の定義、診断、予後、そして治療法について包括的に説明します。

急性膵炎の定義

急性膵炎は膵臓の急性の炎症で、膵臓内の酵素が異常に活性化され、膵臓自身を消化することによって引き起こされます。この消化過程により、膵臓組織が破壊され、炎症が広がるとともに、さまざまな全身的な合併症が発生することがあります。急性膵炎は、膵臓内での自己消化が引き金となって炎症を引き起こし、その結果として膵臓の腫れや出血が起こることが多いです。急性膵炎には重症と軽症があり、重症例では臓器不全や多臓器不全を引き起こすことがあります。

急性膵炎の原因はさまざまであり、最も一般的な原因には以下のようなものがあります：

• 胆石：胆嚢内にできた石が膵管を塞ぐことにより、膵臓の炎症が引き起こされます。

• アルコール摂取：過度のアルコール摂取が膵臓にストレスを与え、急性膵炎を引き起こす原因となります。

• 高脂血症：血中の脂質が高いと膵臓に負担をかけ、炎症を引き起こすことがあります。

• 薬物：特定の薬物が急性膵炎を引き起こすことがあります。

• 感染症や外傷：ウイルスや細菌感染、外的な衝撃によって膵臓が損傷することがあります。

急性膵炎の診断

急性膵炎の診断は、臨床症状、血液検査、画像検査を組み合わせて行います。典型的な症状としては、突然発生する上腹部の激しい痛みが挙げられます。この痛みはしばしば背中に放散し、食後に悪化することがあります。また、吐き気、嘔吐、発熱、膨満感なども見られることがあります。

血液検査

急性膵炎を診断するために最も重要なのは血液検査です。以下の項目が異常を示す場合、急性膵炎が疑われます：

• アミラーゼ：膵臓由来の酵素で、急性膵炎の場合、血中アミラーゼの濃度が急激に上昇します。

• リパーゼ：リパーゼも膵臓で生成される酵素で、急性膵炎においてはアミラーゼよりも敏感に反応します。

• 肝機能検査：胆石が原因の場合、肝機能障害が見られることがあります。

• 電解質や血糖値：膵炎による合併症が進行すると、電解質の不均衡や高血糖が見られることがあります。

画像検査

急性膵炎の診断には、以下の画像検査が有用です：

• 腹部超音波検査（エコー）：胆石が原因となっている場合に有効です。また、膵臓の腫れや膿瘍の有無を確認するためにも使われます。

• CT検査：膵臓の損傷や炎症の程度を評価するために広く使用されます。CTスキャンは、膵臓の形態的変化を明確に示すことができるため、重症度の評価に有用です。

• MRI：膵臓の詳細な画像が得られるため、CT検査と併用されることがあります。

急性膵炎の予後

急性膵炎の予後は、病気の重症度に大きく依存します。急性膵炎の予後は以下の要因によって影響されます：

• 病気の重症度：急性膵炎は軽症から重症までさまざまであり、重症例では死亡率が高くなります。重症の場合、膵臓の壊死や膵臓周囲の感染、臓器不全などの合併症が発生する可能性があります。

• 原因の特定：胆石やアルコールの摂取など、原因が特定されている場合、治療がより効果的に行われます。

• 早期の治療：早期の治療開始が急性膵炎の予後を大きく改善します。適切な治療が遅れると、重症化するリスクが増加します。

急性膵炎の予後を評価するためには、いくつかのスコアリングシステムが使用されます。最も広く使用されているのは、RansonスコアやAPACHE IIスコアです。これらのスコアは、急性膵炎患者の予後を予測するために、臨床症状や検査結果を基に点数化されます。

急性膵炎の治療

急性膵炎の治療は、基本的には症状の軽減、膵臓の安静化、合併症の予防が主な目的となります。治療法は軽症から重症までの患者に応じて異なりますが、以下の基本的なアプローチがあります。

1. 禁食と水分補給

急性膵炎が疑われる場合、まず最初に膵臓を安静に保つために、絶食を行います。絶食は膵臓の負担を減らし、炎症を抑える効果があります。初期の数日間は経口摂取を避け、必要に応じて点滴で水分や栄養を補います。

2. 痛みの管理

急性膵炎による痛みは非常に強く、痛みを管理するために鎮痛薬が使用されます。通常は、非ステロイド系抗炎症薬（NSAIDs）やオピオイド系の鎮痛薬が使用されます。

3. 原因の治療

急性膵炎の原因に対する治療も重要です。例えば、胆石が原因の場合は、内視鏡的逆行性膵胆管造影（ERCP）を用いて胆石を除去することがあります。アルコール摂取が原因の場合は、禁酒が指導され、適切なカウンセリングや治療が行われます。

4. 感染症の管理

急性膵炎によって膵臓の壊死や膿瘍が形成されると、二次的な感染症が発生することがあります。これには抗生物質の投与や、壊死組織の手術的除去が必要になることがあります。

5. 外科的介入

急性膵炎が重症化し、膵臓に壊死や膿瘍が生じた場合、外科的介入が必要となることがあります。場合によっては、膵臓の一部を切除する手術や、膵臓周囲の膿瘍を排除する手術が行われることがあります。

6. 集中的治療

重症例の場合、**集中治療室（ICU）**での管理が必要となります。多臓器不全や膵臓の壊死による合併症が進行する前に、適切な治療を行うことが重要です。

結論

急性膵炎は、早期の診断と治療が生命予後に大きく影響する疾患です。病因に応じた適切な治療を行うことで、多くの患者は回復しますが、重症化した場合には生命を脅かす可能性もあります。急性膵炎に関する理解を深め、患者に対する迅速かつ効果的な対応が求められます。