慢性腎不全の診断:そのプロセスと重要な検査
慢性腎不全(または慢性腎疾患、CKD)は、腎臓の機能が徐々に低下する病気で、最終的には腎臓がその本来の機能を果たせなくなり、透析や腎移植を必要とする状態になります。日本においても、その発症率は高まっており、早期の診断と適切な治療が重要です。本記事では、慢性腎不全の診断方法について詳述します。

1. 慢性腎不全の診断における基本的な考え方
慢性腎不全の診断は、腎機能が持続的に低下しているかどうかを判断することから始まります。この状態は通常、数ヶ月から数年かけて進行します。初期の段階では症状がほとんど現れないため、診断が遅れることが多いのです。
2. 症状と兆候
慢性腎不全の進行に伴い、以下のような症状が現れることがあります:
- むくみ(特に顔や足)
- 尿の変化(頻尿や少尿)
- 倦怠感
- 食欲不振や吐き気
- 高血圧
- 貧血
これらの症状が出た場合、腎不全が進行している可能性があるため、早急に医師の診断を受けることが必要です。
3. 診断のための検査
慢性腎不全の診断には、さまざまな検査が用いられます。ここでは代表的な検査方法を紹介します。
3.1 血液検査
血液検査は、腎臓の機能を評価する最も基本的な方法です。特に注目すべき項目は次の通りです:
- クレアチニン濃度:クレアチニンは腎臓で排泄される老廃物で、血中のクレアチニン濃度が高い場合、腎機能が低下していることを示唆します。
- eGFR(推定糸球体濾過量):eGFRは、腎臓のろ過能力を示す指標です。eGFRが60未満であれば、慢性腎不全が疑われます。
- 尿素窒素(BUN):尿素窒素も腎機能を示す指標の一つです。これが高い場合、腎臓が十分に老廃物を排出できていないことが示されます。
3.2 尿検査
尿検査では、尿中の異常成分を調べます。例えば:
- 尿蛋白:尿に蛋白が含まれている場合、腎臓のろ過機能が障害されていることを示唆します。特に持続的な蛋白尿が見られる場合、慢性腎不全の可能性が高まります。
- 尿沈渣:尿中に異常な細胞や結晶が含まれているかどうかを調べます。
3.3 画像検査
腎臓の大きさや形状、構造的な異常を確認するために、以下の画像検査が行われることがあります:
- 超音波検査(エコー):腎臓の大きさや内部の異常(例えば腎石や腫瘍)を確認するために使用されます。
- CTスキャンやMRI:これらの検査は、腎臓のより詳細な構造を確認するために使用され、腎疾患の進行具合を評価するのに役立ちます。
3.4 腎生検
腎生検は、腎臓から小さな組織を取り出して顕微鏡で調べる検査です。これにより、腎臓の病変の原因を特定することができます。慢性腎不全の原因が不明な場合や、病態の評価を深める必要がある場合に行われます。
4. 慢性腎不全の分類
慢性腎不全は、進行具合に応じていくつかの段階に分類されます。一般的な分類法としては、以下の5つのステージがあります:
- ステージ1:eGFRが90以上、腎機能は正常だが、尿蛋白や血圧の異常が認められる場合。
- ステージ2:eGFRが60~89、軽度の腎機能低下が見られるが、症状はほとんどない。
- ステージ3:eGFRが30~59、中等度の腎機能低下があり、むくみや高血圧が現れることがある。
- ステージ4:eGFRが15~29、腎機能がかなり低下しており、透析が必要になることが多い。
- ステージ5:eGFRが15未満、腎不全の末期に達しており、透析や腎移植が不可欠。
5. 診断後の対応
慢性腎不全が診断された場合、早期の治療と管理が進行を遅らせ、生活の質を保つために重要です。治療方法には以下のようなものがあります:
- 血圧管理:高血圧は腎不全を悪化させる原因となるため、適切な降圧薬の使用が推奨されます。
- 糖尿病管理:糖尿病も腎不全の原因となるため、血糖値のコントロールが必要です。
- 食事療法:低蛋白食やナトリウム制限など、腎臓への負担を減らすための食事療法が行われることがあります。
- 薬物療法:腎臓の機能を保護するための薬(ACE阻害薬やARBsなど)が処方されることがあります。
6. まとめ
慢性腎不全の診断は早期発見がカギとなり、適切な検査を通じて腎機能の低下の程度や原因を特定することが重要です。進行した場合、透析や腎移植を検討する必要がありますが、早期に適切な治療を行えば、進行を遅らせることが可能です。定期的な健康診断を受け、腎機能に関するチェックを怠らないことが、健康維持に繋がります。