扁桃炎(または咽頭炎)は、風邪やインフルエンザといった一般的な感染症の原因となることが多いですが、場合によっては、もっと深刻な疾患に発展することもあります。その一つが、リウマチ熱(またはリウマチ性熱)です。リウマチ熱は、特に子供や若年層に多く見られる疾患で、喉の感染が未治療のままで放置された場合に引き起こされることがあります。この疾患は、心臓、関節、皮膚、さらには神経系にまで影響を及ぼし、長期的な健康問題を引き起こす可能性があるため、早期の発見と治療が非常に重要です。
扁桃炎とリウマチ熱の関係
リウマチ熱は、主にA群β溶血性連鎖球菌(GAS)という細菌によって引き起こされる咽頭炎(扁桃炎)が原因で発症します。扁桃炎を引き起こすGASに感染した後、免疫系が細菌に対抗しようとする過程で、免疫系が自己の組織を誤って攻撃してしまうことがあります。これがリウマチ熱の原因となります。

リウマチ熱は、細菌感染の直接的な結果ではなく、免疫反応が原因となって生じる自己免疫疾患です。感染後、通常は2~4週間の潜伏期間を経て症状が現れます。この疾患の特徴的な症状には、関節の腫れや痛み、心臓の炎症(特に心臓弁膜症)、皮膚に現れる発疹や小さな結節、そして神経系への影響としての舞踏病(不随意運動)が含まれます。
リウマチ熱の症状と進行
リウマチ熱は、急性期には非常に痛みを伴い、全身的な症状が現れることがあります。以下に主な症状を挙げます:
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関節炎: 多くの場合、膝や足首、肘、手首などの大きな関節に痛みや腫れが現れます。この症状は、数日から数週間続き、関節の炎症が治まるとともに関節機能は回復します。
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心臓の炎症: リウマチ熱が進行すると、心臓の内膜や弁に炎症を引き起こし、これが「リウマチ性心疾患」として知られる状態に繋がります。これにより、心臓弁が損傷し、心不全などの問題を引き起こす可能性があります。
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舞踏病: 神経系の影響として、筋肉の不随意な動き(舞踏病)が現れることがあります。これは、特に顔や手足に現れることが多く、患者の生活の質に大きな影響を与える可能性があります。
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皮膚の発疹: リウマチ熱の患者は、発疹や小さな結節が皮膚に現れることがあります。これらの発疹は、特に上半身や背中に現れることが多いです。
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熱と体調不良: 初期段階では、発熱や喉の痛み、倦怠感などの風邪に似た症状が現れることがあります。
リウマチ熱の診断
リウマチ熱の診断は、医師による詳細な病歴の確認と身体検査が基盤となります。特に過去に発症した咽頭炎や扁桃炎の病歴があるかどうかが重要です。また、リウマチ熱の診断を確定するためには、以下のような検査が行われることがあります:
- 血液検査: A群β溶血性連鎖球菌の感染を示唆する抗体(抗ストレプトリジンO抗体など)を検出することができます。
- 心エコー検査: 心臓の状態を評価するために行われ、リウマチ性心疾患の有無を確認します。
- 関節のX線検査: 関節に異常がある場合、これを確認するための検査が行われることがあります。
リウマチ熱の治療
リウマチ熱の治療は、感染を早期に治療することが最も重要です。感染後すぐに適切な抗生物質による治療を受けることで、リウマチ熱を予防することができます。特に、GASによる扁桃炎が疑われる場合、抗生物質の投与は症状の進行を防ぐために不可欠です。
治療には、以下の方法が含まれます:
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抗生物質: A群β溶血性連鎖球菌の感染を治療するために、ペニシリンなどの抗生物質が使用されます。早期に抗生物質を投与することが、リウマチ熱の発症を防ぐ最も効果的な方法です。
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抗炎症薬: 関節炎やその他の炎症を軽減するために、抗炎症薬(NSAIDs)が使用されることがあります。
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長期的な抗生物質治療: リウマチ熱の再発を防ぐために、感染後の数年間、抗生物質を定期的に服用することが推奨される場合があります。
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症状に応じた対症療法: 舞踏病や心臓の炎症が現れた場合には、追加の治療が行われます。舞踏病には神経系を安定させる薬物療法が必要な場合があります。
リウマチ熱の予防
リウマチ熱の予防の鍵は、A群β溶血性連鎖球菌による咽頭炎を早期に発見し、適切な抗生物質で治療することです。扁桃炎の症状が現れた際には、早期に医療機関を受診し、抗生物質の投与を受けることが重要です。また、家庭内で感染を広げないために、手洗いやマスクの着用、共用物の消毒など、基本的な感染予防策も効果的です。
結論
扁桃炎や咽頭炎を放置しておくことは、リウマチ熱という深刻な病気を引き起こす可能性があるため、早期に適切な治療を受けることが非常に重要です。リウマチ熱は心臓や関節に重大な影響を与える可能性があり、長期的な健康問題を引き起こすことがあります。したがって、喉の痛みや発熱などの症状が現れた場合には、すぐに医師の診察を受け、必要な検査と治療を受けることが、リウマチ熱の予防と早期治療に繋がります。