扁桃炎(扁桃腺炎)は、喉の奥にある扁桃腺が感染して炎症を起こす病気です。感染の原因となる病原菌は細菌やウイルスですが、特に細菌性の扁桃炎では抗生物質を使用して治療することが一般的です。この記事では、扁桃炎に対する最も効果的な抗生物質について詳しく解説します。
扁桃炎の原因となる細菌とウイルス
扁桃炎の原因となる細菌の中で最も一般的なのは、**A群β溶血性連鎖球菌(GABHS)**です。この細菌は、扁桃炎の症状を引き起こす主な原因となり、特に高熱、喉の痛み、飲み込みにくさを伴うことが多いです。ウイルス性の扁桃炎も存在し、これには風邪のウイルスやインフルエンザウイルス、アデノウイルスなどが含まれますが、ウイルス性の場合は抗生物質は効果がありません。

扁桃炎に対する抗生物質
1. ペニシリン系抗生物質
ペニシリンは、A群β溶血性連鎖球菌に対して非常に効果的な抗生物質です。ペニシリンは、細菌の細胞壁を破壊することによって細菌を死滅させる働きをします。ペニシリンは、扁桃炎の治療において最も広く使用されている薬です。
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アモキシシリン:ペニシリン系の抗生物質で、一般的に使用されます。通常、1日2回服用することで十分な効果が得られます。アモキシシリンは、ペニシリンにアレルギーがない人に適しています。
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ペニシリンVK:より伝統的なペニシリンの一種で、主にA群β溶血性連鎖球菌による扁桃炎に使用されます。服用は通常、1日数回に分けて行われます。
2. セフェム系抗生物質
ペニシリンにアレルギーがある場合、セフェム系抗生物質が代替薬として使用されます。これらの薬は、ペニシリンと似た作用を持っており、広範囲な細菌に対して効果があります。
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セファレキシン(Keflex):セフェム系抗生物質で、特にペニシリンアレルギーがある患者に対して使用されます。セフェム系は、ペニシリンと同様に細胞壁を攻撃して細菌を殺します。
3. マクロライド系抗生物質
マクロライド系抗生物質は、ペニシリンやセフェム系にアレルギーがある場合の第二選択薬として使用されます。これらの薬は、細菌のタンパク質合成を阻害することで効果を発揮します。
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アジスロマイシン(ジスロマック):アジスロマイシンはマクロライド系の薬で、1日1回の服用で済むため、患者の遵守がしやすいという利点があります。特にペニシリンアレルギーの患者や、抗生物質耐性が心配される場合に使用されます。
4. クインロン系抗生物質
まれに、細菌が抗生物質に耐性を持っている場合、クインロン系抗生物質が使用されることがあります。これらは強力な抗菌効果を持ち、他の薬に反応しない場合に処方されますが、通常は初期治療としては避けられます。
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レボフロキサシン:クインロン系抗生物質で、耐性菌に対して効果がありますが、副作用も多いため、最後の手段として使用されることが多いです。
扁桃炎の治療における注意点
1. 抗生物質の服用期間
扁桃炎の治療には、抗生物質を指定された期間、全て服用し続けることが非常に重要です。途中で症状が改善されたとしても、抗生物質を早期に中止すると、感染が再発する可能性があるためです。通常、抗生物質の服用は10日間が推奨されます。
2. 抗生物質耐性の問題
抗生物質を過剰に使用すると、細菌が耐性を持つようになることがあります。耐性菌に対しては、通常の抗生物質が効かなくなるため、扁桃炎の治療が困難になることがあります。そのため、抗生物質は医師の指示に従い、必要な場合にのみ使用することが大切です。
3. 他の治療法との併用
抗生物質による治療に加えて、扁桃炎の症状を和らげるためには、喉を温かい飲み物で潤す、塩水でうがいをする、適切な休養を取るなどの方法が効果的です。さらに、痛みや発熱を抑えるために鎮痛薬(アセトアミノフェンやイブプロフェンなど)の使用が推奨されることもあります。
扁桃炎がウイルス性の場合
ウイルス性の扁桃炎では、抗生物質は効果がありません。ウイルスによる扁桃炎は通常、数日から1週間程度で自然に回復します。この場合、症状を軽減するために鎮痛薬や抗ウイルス薬を使用することがありますが、基本的には安静を保つことが最も重要です。
結論
扁桃炎に対する最適な抗生物質は、原因となる細菌に基づいて選択されます。A群β溶血性連鎖球菌による細菌性の扁桃炎の場合、ペニシリンやアモキシシリンが最も効果的な治療法です。ペニシリンにアレルギーがある場合は、セフェム系やマクロライド系抗生物質が代替薬として使用されます。抗生物質の適切な使用と服用期間を守ることが、完全な回復には重要です。
扁桃炎の症状が改善しない場合や、再発を繰り返す場合は、専門医に相談し、さらに検査や治療を受けることが必要です。