手の震え(手指の振戦)は、様々な原因によって引き起こされる身体的な現象であり、その原因は一つに限らず、さまざまな疾患や状態が関与しています。ここでは、手の震えが起こる原因を詳細に解説し、どのような病気や状況が関係しているのかを包括的に説明します。
1. パーキンソン病
手の震えの最も知られている原因の一つはパーキンソン病です。パーキンソン病は神経系の進行性疾患で、脳内のドーパミンを生成する神経細胞が減少することで、運動機能に影響を及ぼします。特に、休んでいるときに手が震える「安静時振戦」が特徴的です。手の震えは通常、片側の手から始まり、進行することで両側に広がることがあります。

2. 本態性振戦
本態性振戦は、明確な病気が原因ではなく、遺伝的な要因や特定の環境要因によって引き起こされる手の震えです。通常、手を使うとき(例えば、物を持つとき)に震えが発生します。進行性ではなく、長期間にわたって安定した症状を示します。本態性振戦は、特に40歳以上の成人に多く見られますが、遺伝的要因がある場合は若年層にも現れることがあります。
3. 低血糖(低血糖症)
低血糖は血糖値が正常よりも低くなる状態であり、手の震えを引き起こすことがあります。血糖値が急激に低下すると、体はエネルギー源として糖を補充しようとし、その結果、手や他の部分で震えが発生します。糖尿病の治療を受けている人や食事を抜いた人、過度な運動をした人に見られることが多いです。
4. ストレスと不安
心理的な要因も手の震えを引き起こすことがあります。特にストレスや不安が高まると、交感神経が刺激され、体は「闘争・逃走反応」に備えます。この反応の一環として、手の震えが現れることがあります。プレゼンテーションや試験、重要な場面で震えが見られることが多いですが、通常は一時的であり、ストレスが解消されると震えも収まります。
5. 薬物の副作用
いくつかの薬物は、手の震えを副作用として引き起こすことがあります。特に、精神科薬や抗うつ薬、抗精神病薬、気分安定薬、さらにはカフェインやアルコールの過剰摂取も震えの原因となります。薬物の影響によって神経系が過剰に刺激されると、手が震えることがあります。
6. アルコール離脱症状
アルコールを長期間摂取していた人が急にアルコールを断つと、身体はアルコールの欠乏に対して反応し、手の震えが現れることがあります。アルコール離脱症状の一つとして、震えが最も一般的に見られます。この症状は数時間から数日間続くことがあり、重篤な場合には震え以外にも、発汗、吐き気、焦燥感、さらにはけいれんを引き起こすこともあります。
7. 脳卒中や脳血管障害
脳卒中や脳血管障害(脳血栓症や脳出血など)は、脳内の神経機能に障害を与え、その結果、手の震えが生じることがあります。特に、脳の運動を司る部位に障害が生じると、手や顔、足に震えが現れることがあります。この震えは通常、脳卒中が発生した側の体の部分に見られることが多いです。
8. 神経障害
末梢神経障害(ニューロパチー)は、神経が損傷を受けることによって、手の震えを引き起こす原因となることがあります。糖尿病性神経障害やアルコール依存症による神経障害が一般的です。神経が正常に機能しないと、筋肉の制御がうまくいかず、震えが発生することがあります。
9. 甲状腺疾患
甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)や甲状腺機能低下症は、ホルモンバランスに影響を与え、体のさまざまな機能に影響を与えることがあります。甲状腺機能亢進症では、代謝が過剰になり、手の震えが起こることがあります。また、甲状腺機能低下症では、代謝が低下し、筋肉の緊張が低下することがあり、これも震えを引き起こす可能性があります。
10. 慢性疾患や神経変性疾患
アルツハイマー病や多発性硬化症などの神経変性疾患は、手の震えを引き起こす原因となることがあります。これらの疾患は脳内で神経細胞が損傷し、正常な運動機能が失われることが原因で震えが発生します。
11. その他の原因
その他にも、体温の低下(低体温症)、血圧の急激な変動、貧血、ビタミンやミネラルの欠乏(特にビタミンB12やマグネシウム)、または感染症や炎症なども手の震えを引き起こす原因となることがあります。
まとめ
手の震えは、多岐にわたる原因によって引き起こされることがあり、その原因を正確に特定することは非常に重要です。震えが一時的なものであれば問題ないこともありますが、慢性的に続く場合や他の症状が伴う場合は、医師の診察を受けることが必要です。手の震えは単なる不快感以上のものであり、健康状態のサインであることが多いため、適切な対処が求められます。