果物に含まれるビタミンB群の完全ガイド:種類・含有量・健康効果
ビタミンB群は、水溶性ビタミンの集合体であり、エネルギー代謝、神経系の機能、免疫力の維持など、体のあらゆる生理機能に不可欠な役割を果たしている。果物は一般的にビタミンCや食物繊維の供給源として知られているが、実はビタミンB群のいくつかも果物に豊富に含まれている。この記事では、果物に含まれる主要なビタミンB群の種類、それぞれの果物にどのビタミンBが含まれているか、そしてそれらがもたらす健康効果について、科学的根拠に基づいて詳しく解説する。
果物に含まれる主なビタミンB群の種類
ビタミンB群は以下の8種類から構成されており、それぞれ異なる機能を担っている:
| ビタミン名 | 別名 | 主な機能 |
|---|---|---|
| ビタミンB1 | チアミン | 糖質の代謝、神経・筋肉の機能維持 |
| ビタミンB2 | リボフラビン | エネルギー代謝、皮膚・粘膜の健康維持 |
| ビタミンB3 | ナイアシン | 代謝機能全般、皮膚や消化器官の健康維持 |
| ビタミンB5 | パントテン酸 | 脂質・糖質・タンパク質代謝、ホルモン合成 |
| ビタミンB6 | ピリドキシン | アミノ酸代謝、神経伝達物質の合成 |
| ビタミンB7 | ビオチン | 脂肪酸合成、皮膚・髪・爪の健康維持 |
| ビタミンB9 | 葉酸 | DNA合成、胎児の神経管閉鎖予防、赤血球形成 |
| ビタミンB12 | コバラミン(動物性に限る) | 神経機能、赤血球の形成、DNA合成 |
果物にはビタミンB12は基本的に含まれないため、本記事ではB12以外のビタミンB群について焦点を当てる。
各果物に含まれるビタミンB群の詳細
バナナ(ビタミンB6、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3)
バナナは特にビタミンB6の豊富な供給源であり、1本(約120g)で約0.4mgのB6を含む。これは成人男性の1日推奨量(約1.4mg)の約30%に相当する。B6は神経伝達物質の生成やホモシステインの代謝に不可欠である。
また、バナナには少量ながらビタミンB1、B2、ナイアシン(B3)も含まれているため、エネルギー代謝を助ける果物としても有用である。
アボカド(ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB9)
アボカドは脂質だけでなく、ビタミンB群の宝庫でもある。特にパントテン酸(B5)が豊富で、100gあたり約1.4mg含まれ、これは1日推奨量の約28%に相当する。また、葉酸(B9)も多く、妊娠中の女性にとって理想的な果物とされる。
オレンジ(ビタミンB1、ビタミンB9)
オレンジはビタミンCだけでなく、チアミン(B1)と葉酸(B9)の供給源でもある。100gあたり約0.1mgのB1と約30µgの葉酸を含み、神経系の健康と赤血球の生成に寄与する。
キウイフルーツ(ビタミンB6、ビタミンB9)
キウイにはビタミンCとともに、ビタミンB6と葉酸が適度に含まれている。抗酸化作用と同時に、アミノ酸代謝や胎児の健康維持にも役立つ。
マンゴー(ビタミンB6、ビタミンB9)
甘味が強いマンゴーも、ビタミンB6が豊富で、100gあたり約0.1~0.2mgのB6を含む。また、葉酸も100gあたり43µgと多く、妊娠中の葉酸補給に適している。
グレープフルーツ(ビタミンB1、ビタミンB5)
グレープフルーツにはチアミン(B1)とパントテン酸(B5)が多く含まれており、特に疲労回復や代謝促進に寄与する。
イチゴ(ビタミンB9、ビタミンB7)
イチゴは葉酸の宝庫で、100gあたり約24µg含む。また、ビオチン(B7)も微量ながら含まれており、皮膚と髪の健康に良い影響を与える。
パパイヤ(ビタミンB9)
パパイヤは葉酸含有量が非常に高く、100gあたり37µgを含む。消化を助ける酵素パパインと合わせて、消化器系に総合的に良い果物である。
ビタミンB群の健康効果
| ビタミンB群 | 健康効果 |
|---|---|
| B1 | エネルギー代謝促進、神経機能の維持 |
| B2 | 酸化ストレス軽減、皮膚・視覚の健康保持 |
| B3 | コレステロール低下、脳機能サポート |
| B5 | ホルモン合成、傷の治癒促進、免疫力向上 |
| B6 | PMS症状の軽減、うつ症状の緩和、妊娠悪阻の予防 |
| B7 | 爪・髪・皮膚の強化、血糖コントロールの補助 |
| B9 | 赤血球の生成、胎児の神経管欠損リスクの低減、DNA合成の補助 |
加熱や保存によるビタミンBの影響
ビタミンB群は水溶性であり、加熱や保存によって損失しやすいという性質を持っている。果物は基本的に生で食べることが多いため、これらのビタミンを最大限に摂取できる点で非常に優れている。また、冷凍や加工による損失もあるため、できる限り新鮮な状態で食べることが望ましい。
果物からのビタミンB群の摂取を最大化する方法
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生のまま食べる:加熱処理を避けることでビタミン損失を最小限に抑える。
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カット後すぐに食べる:酸素との接触による酸化を避けるため、切ってすぐに食べることが重要。
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皮ごと食べられる果物は皮ごと食べる:ビタミンやミネラルは皮付近に多く含まれる場合が多い。
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様々な果物を組み合わせる:一つの果物にすべてのビタミンB群が含まれているわけではないため、複数種類を取り入れることが鍵。
注意点:果物とビタミンB12の誤解
果物には動物由来でしか存在しないビタミンB12は含まれていない。そのため、完全菜食主義(ヴィーガン)の人々は、果物からB12を摂取することはできず、サプリメントや強化食品による補給が必要である。
まとめ
果物はビタミンCの宝庫として知られているが、実はビタミンB群のいくつか、特にB1、B2、B3、B5、B6、B7、B9も一定量含まれており、体の健康維持に大きく貢献する。特に葉酸(B9)とビタミンB6は多くの果物に含まれており、妊娠中の女性や神経機能を高めたい人にとって重要である。毎日の食生活にさまざまな果物を取り入れることで、栄養のバランスが整い、長期的な健康に寄与することは間違いない。
参考文献:
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日本食品標準成分表(八訂)文部科学省
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World Health Organization. Vitamin and mineral requirements in human nutrition. 2004.
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Institute of Medicine. Dietary Reference Intakes for Thiamin, Riboflavin, Niacin, Vitamin B6, Folate, Vitamin B12, etc.
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Harvard T.H. Chan School of Public Health – Nutrition Source: B Vitamins
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United States Department of Agriculture (USDA) FoodData Central
