水痘(みずぼうそう)は、風疹やインフルエンザと並ぶ代表的なウイルス性疾患の一つで、主に子どもに多く見られるが、大人にも感染することがある。水痘の原因、症状、治療法について理解することは、予防や早期治療に役立つ。本記事では、水痘の基礎知識から、症状の発現、治療法、そして予防に至るまで、広範囲にわたって詳しく解説していく。
水痘の原因
水痘の主な原因は、バリセラ・ゾスターウイルス(VZV)というウイルスである。このウイルスは、ヒトに特有のウイルスで、空気感染や直接的な接触を通じて広がる。具体的には、感染者の咳やくしゃみ、または水痘の発疹から分泌される液体が、周囲の人々に飛散することによって感染が広がる。感染者との接触があった場合、ウイルスは容易に他者に伝播する。

ウイルスに感染すると、潜伏期間があり、通常は2週間から3週間の間に症状が現れる。この間、感染者は自覚症状がないため、周囲の人々に気づかれないことが多い。潜伏期間後、発症し始める。
水痘の症状
水痘の初期症状としては、発熱、倦怠感、食欲不振、そして頭痛などが現れる。これらの症状は、風邪や他のウイルス性疾患に似ているため、最初の段階では水痘であると特定することが難しいこともある。しかし、発熱から数日内に、特徴的な水疱が皮膚に現れ、これが水痘の診断の決め手となる。
水疱は最初は小さな赤い発疹として現れ、その後、数時間以内に水ぶくれ状になります。水疱の中身は透明で、最初は膨らんだ状態だが、次第にかさぶたになり、最終的に乾燥してかさぶたが剥がれ落ちる。水疱は全身に広がることが多く、顔、胸部、背中、そして時には口の中にも現れることがある。
水痘の発疹は、急速に広がることが特徴で、数日から1週間ほどで新たな水疱が次々に現れる。しかし、この症状が現れる時期にすでに感染力が高いため、感染者は発疹が出現した時点で他者にうつさないように注意しなければならない。
水痘の合併症
水痘は基本的には軽症で終わることが多いが、稀に合併症を引き起こすことがある。特に免疫力が低下している人々(例:高齢者、妊婦、免疫抑制療法を受けている人など)においては、深刻な合併症が発生することがある。代表的な合併症には以下が含まれる。
- 細菌感染: 水疱が破れて傷つくことで、細菌感染が二次的に発生することがある。これは特に子どもに多く見られ、傷口から細菌が侵入し、膿がたまることがある。
- 肺炎: 水痘による肺炎は、特に免疫が低下している人々に発症しやすく、重症化すると命に関わることもある。
- 神経系の問題: 水痘が神経系に影響を与えることがあり、髄膜炎や脳炎を引き起こすことがある。これも免疫力が低い人々に見られる。
- 肝炎: 稀に、ウイルスが肝臓に影響を与え、肝炎を引き起こすことがある。
これらの合併症は、特に発症初期に速やかに医療機関に相談し、適切な治療を受けることが重要である。
水痘の治療法
水痘には特効薬はないものの、症状を和らげるための治療法がいくつかある。軽度の場合、特別な治療が必要ないことが多く、自宅での安静が推奨される。しかし、症状が重篤な場合や合併症が疑われる場合は、早期に医師の診断を受け、治療を始める必要がある。
1. 対症療法
水痘の治療では、主に以下の方法で症状を和らげることが目指される。
- 解熱剤: 発熱が続く場合には、解熱剤を使用することが多い。ただし、アスピリンは水痘患者には使用しないようにし、他の解熱剤を使用することが推奨される。
- かゆみ止め: 発疹のかゆみを軽減するために、抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬が使用されることがある。
- 抗ウイルス薬: 軽度の水痘には通常必要ないが、免疫力が低下している患者や重症化するリスクが高い場合には、抗ウイルス薬(アシクロビルなど)が処方されることがある。
2. 免疫グロブリンの投与
免疫力が低下している人や、妊婦などの高リスク群には、免疫グロブリンが投与されることがある。これにより、水痘の発症を予防したり、症状を軽減する効果が期待できる。
3. 入院治療
免疫力が低下している人や、合併症が発生した場合は、入院して集中的な治療が行われることがある。特に肺炎や脳炎、重度の皮膚感染症などが発生した場合には、専門的な医療が必要である。
水痘の予防
水痘は予防接種によって効果的に防ぐことができる。日本では、水痘ワクチンが定期接種として推奨されており、2歳前後で接種を受けることが一般的である。ワクチンは、ウイルスの感染を予防するだけでなく、仮に感染しても症状を軽く抑える効果がある。
水痘ワクチンは、接種後に一定の効果を発揮するため、接種を受けることで水痘にかかるリスクを大幅に低減させることができる。特に、成人になってから水痘にかかると、症状が重くなる可能性が高いため、子どものうちに接種を受けることが強く勧められる。
結論
水痘は比較的軽度な病気であることが多いが、感染力が強いため予防が非常に重要である。特に、免疫力が低い人々や妊婦、高齢者などにおいては、注意が必要であり、適切な治療を受けることが重要である。水痘ワクチンを利用した予防接種を受けることで、感染を未然に防ぎ、もし感染しても重症化を防ぐことができるので、積極的にワクチン接種を受けることを推奨する。