水の質の測定は、公共の健康や環境保護にとって非常に重要です。水は人間にとって必要不可欠な資源であり、その質は飲用や農業、工業など多くの分野で影響を与えます。水質基準を確立し、適切に管理することは、環境への影響を最小限に抑え、安全な水供給を確保するために不可欠です。本稿では、水の質を測定するための基準や方法について、さまざまな側面から詳しく説明します。
1. 水質の基本的な指標
水質は、多くの化学的、物理的、生物学的要因によって評価されます。以下は、一般的に使用される水質指標です。

1.1 pH値
pH値は水の酸性度やアルカリ性を示す指標であり、水質の基本的な性質を表します。pH値が7の場合は中性、7より低い値は酸性、7より高い値はアルカリ性を示します。飲料水のpH値は通常6.5から8.5の範囲に保たれるべきとされています。pH値が極端に高いまたは低いと、水生生物の生息環境に悪影響を及ぼし、さらには人間にも害を及ぼす可能性があります。
1.2 溶存酸素量(DO)
溶存酸素量(DO)は、水中に溶け込んでいる酸素の量を測定する指標で、これは水生生物の生存に直結する重要な要素です。水のDOが高いほど、魚や水生植物などの生物が健康に生息できます。逆に、DOが低下すると、魚や水生生物が窒息し、環境破壊が進む可能性があります。通常、飲料水や良好な水域では、DOの値は5mg/L以上が望ましいとされています。
1.3 水温
水温は、水質に直接的な影響を与える要因であり、特に水生生物に重要な役割を果たします。高温になると酸素の溶解度が低下し、また有害な藻類の繁殖が促進されることがあります。逆に低温では、水生生物の代謝が遅くなるため、これも生態系に影響を与える可能性があります。水温は地域や季節によって変動するものの、安定した水温を保つことが理想的です。
1.4 臭気と色
水の色や臭いも水質を評価するための指標の一つです。臭気や色が異常である場合、それは水中に有害な化学物質や有機物が含まれている可能性を示唆しています。例えば、腐敗した物質が含まれていると、水は異臭を放ち、色も濁ることがあります。このような場合、迅速な水質改善が求められます。
2. 化学的指標
水質の化学的な評価は、さまざまな化学物質の濃度を測定することによって行います。以下に、主要な化学的指標を示します。
2.1 残留塩素
残留塩素は、特に飲料水の消毒処理後に含まれることが多い成分で、細菌やウイルスの除去に役立ちます。しかし、過剰な残留塩素は水の味や臭いを悪化させ、また健康に害を及ぼす可能性もあります。水道水の残留塩素濃度は通常、0.2~0.5mg/L程度が適正とされています。
2.2 重金属
水中に含まれる重金属(鉛、カドミウム、ヒ素、水銀など)は、極めて危険な物質です。これらの物質は微量であっても人間の健康に深刻な影響を与える可能性があり、長期的な摂取は重大な病気を引き起こすことがあります。飲料水におけるこれらの物質の濃度は、各国の規制基準によって厳しく管理されています。例えば、鉛の許容濃度は0.01mg/L以下とされています。
2.3 有機物(COD, BOD)
有機物の指標として、化学的酸素要求量(COD)や生物学的酸素要求量(BOD)が用いられます。CODは水中に含まれる酸化可能な有機物の総量を示し、BODは微生物が水中の有機物を分解するために消費する酸素量を示します。これらの指標が高い場合、過剰な有機物が水中に存在し、これが水質の悪化を引き起こすことになります。
2.4 窒素およびリン
窒素(NH₃)やリン(PO₄)は、主に農業からの排水や下水処理施設から流出することが多い成分です。これらの物質が水域に過剰に存在すると、富栄養化が進み、有害な藻類の繁殖を促進し、ひいては水質の劣化を引き起こします。特に富栄養化によって発生する赤潮や青潮は、漁業や観光業に悪影響を与えることが知られています。
3. 微生物指標
水中の微生物の数や種類は、水質を評価するために重要な情報を提供します。特に病原菌やウイルスの存在が水質に与える影響は非常に大きいです。
3.1 大腸菌群
大腸菌群(特に大腸菌)は、飲料水や接触する可能性のある水源における汚染の指標として広く使用されます。大腸菌が検出される場合、その水が未処理の下水や動物の排泄物に汚染されている可能性が高いです。飲料水では、大腸菌群が検出されないことが最も重要な基準となります。
3.2 病原菌
水中に存在する可能性のある病原菌としては、コレラ菌、腸炎ビブリオ、赤痢菌などがあり、これらは水源から直接人間に感染することがあります。これらの微生物が水中にいる場合、その水は飲用に適さず、適切な消毒が必要です。
4. 水質管理と規制基準
各国や地域では、水質を保護するための規制基準が設けられています。これらの基準は、飲料水、農業用水、工業用水などの利用目的に応じて異なります。日本においては、水道法に基づき、飲料水の水質基準が厳格に定められています。また、工業用水や灌漑用水についても、それぞれの使用目的に応じた基準が設けられています。
水質管理は、浄水施設や下水処理施設で行われる技術的な処理だけでなく、農業や産業活動からの排水管理、都市開発に伴う水環境への配慮など、さまざまな側面から取り組む必要があります。
結論
水質の測定は、人間の健康と環境保護の観点から非常に重要です。水質を適切に管理するためには、化学的、物理的、生物学的な各種指標を総合的に評価し、問題を早期に発見し対策を講じることが求められます。また、規制基準の遵守とともに、適切な水質管理を通じて、安全で持続可能な水供給を確保することが、私たちの未来にとって欠かせない課題となっています。