流行性耳下腺炎（おたふくかぜ）は、耳下腺と呼ばれる唾液腺の炎症を引き起こすウイルス感染症であり、非常に伝染性が高い疾患です。この病気は、主にムンプスウイルス（おたふくかぜウイルス）によって引き起こされます。このウイルスは飛沫感染を通じて広がり、感染者の咳やくしゃみ、または唾液を介して他の人に感染することが一般的です。特に免疫力が低い子供や未接種の成人に感染することが多いですが、適切な予防接種を受けた人々には発症するリスクは少なくなります。
流行性耳下腺炎の伝染経路
流行性耳下腺炎は、主に以下の方法で伝播します。
-
飛沫感染: 患者が咳やくしゃみをした際に、ウイルスが空気中に放出され、他の人がそのウイルスを吸い込むことによって感染します。
-
接触感染: 感染者が手で口や鼻を触った後、その手で物を触ると、他の人がその物を触ることによってウイルスに感染することがあります。
-
唾液を介する感染: 患者の唾液が口の中に残っている状態で食器や飲み物を共有すると、ウイルスが他の人に感染する可能性があります。
感染の症状
流行性耳下腺炎の主な症状には以下が含まれます。
-
発熱: 体温が上昇し、熱が出ることがよくあります。
-
耳下腺の腫れと痛み: 耳の前方に位置する耳下腺が腫れ、圧痛を感じることが一般的です。この腫れはしばしば片側、または両側に見られます。
-
頭痛: 頭全体に鈍い痛みを感じることがあります。
-
食欲不振: 喉の痛みや不快感から、食欲がなくなることがあります。
-
筋肉痛や倦怠感: 体がだるく、筋肉痛が生じることもあります。
予防法
流行性耳下腺炎の予防には、最も効果的な方法としてワクチン接種があります。ムンプスワクチンは、通常は麻疹、風疹、おたふくかぜ（MMRワクチン）の三種をまとめて接種する形で提供されます。このワクチンを受けた後、感染リスクは大幅に減少しますが、完全に免疫を獲得するためには、接種後しばらく経過が必要です。
その他の予防法としては、感染者と接触しないこと、手洗いやアルコール消毒を行うことが有効です。また、感染者がいる場所では、マスクの着用や、物の共有を避けることが推奨されます。
影響と合併症
流行性耳下腺炎は多くの場合軽症で経過しますが、時に重篤な合併症を引き起こすことがあります。特に成人の場合、以下のような合併症が見られることがあります。
-
髄膜炎: 脳や脊髄を覆う膜が炎症を起こすことで、頭痛や頸部の硬直、吐き気などが現れます。
-
卵巣炎: 女性が感染した場合、卵巣に炎症を引き起こし、痛みを伴うことがあります。
-
睾丸炎: 男性が感染した場合、睾丸に炎症が生じ、腫れや痛みを引き起こすことがあります。重症の場合、不妊症のリスクが高まることもあります。
診断と治療
流行性耳下腺炎の診断は、主に症状に基づいて行われますが、確定診断には血液検査や唾液サンプルでムンプスウイルスに対する抗体を調べることがあります。
現在、流行性耳下腺炎に対する特効薬は存在しません。治療は主に症状を和らげることを目的とします。発熱や痛みには解熱剤や鎮痛剤が使われ、腫れや炎症には冷却療法が有効です。また、十分な休息と水分補給が重要です。
結論
流行性耳下腺炎は、ウイルスによって引き起こされ、非常に伝染性が高い疾患です。しかし、予防接種によってほとんどの感染を防ぐことができます。感染が疑われる場合、早期に診断と治療を受け、他の人への感染を防ぐことが重要です。流行性耳下腺炎は、多くの場合軽症で回復しますが、合併症に注意し、適切な管理が必要です。