流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は、耳下腺(唾液腺)に炎症を引き起こすウイルス感染症です。主にウイルスによって引き起こされ、特に小児に見られますが、大人にも感染することがあります。この疾患は、感染から数日後に特徴的な症状が現れることが多いです。以下では、流行性耳下腺炎の症状について詳しく解説します。
1. 耳の下の腫れ
流行性耳下腺炎の最も特徴的な症状は、耳の下、つまり頬の部分にある耳下腺が腫れることです。腫れは通常、片側から始まり、数日後にもう一方の耳下腺にも広がることがあります。この腫れは痛みを伴うこともあり、顔全体が膨らんで見えることもあります。この腫れは数日続き、数日後に徐々に軽減します。

2. 発熱
耳下腺が腫れ始める数日前から発熱が見られることが多いです。発熱は通常、中等度から高熱(38〜40度)となり、数日間続くことがあります。熱が出た後に、耳下腺の腫れが始まるケースもあります。発熱と腫れのタイミングは個人差があり、必ずしも同時に発症するわけではありません。
3. 頭痛
発熱とともに、頭痛を伴うことが多いです。特に、耳下腺の腫れが進行するにつれて、頭痛が強くなることがあります。頭痛の強さは個人差がありますが、一般的に軽度から中程度の痛みが多いです。
4. 食欲不振と口の乾き
流行性耳下腺炎に感染すると、唾液腺が腫れるため、唾液の分泌が減少し、口の中が乾燥することがあります。また、腫れた耳下腺が痛みを引き起こすことから、食事を取るのが困難になる場合があります。特に固形物を食べることが辛くなることが多いです。
5. 筋肉痛と全身のだるさ
ウイルス感染に伴う全身のだるさや筋肉痛も流行性耳下腺炎の症状の一部です。体がだるく、動きが鈍く感じることが多く、日常的な活動をするのが辛くなることがあります。これらの症状は発熱や耳下腺の腫れと並行して現れることが多いです。
6. 喉の痛みや嚥下のしづらさ
耳下腺が腫れると、周囲の組織にも圧力がかかり、喉に痛みを感じることがあります。特に、食べ物を飲み込む際に違和感を覚えることが多いです。また、耳下腺周辺の腫れがあるため、声がかすれることもあります。
7. 感染拡大による合併症のリスク
流行性耳下腺炎は通常軽度の症状で治癒しますが、まれに合併症が起こることがあります。特に、大人や免疫力が低下している人では、流行性耳下腺炎が以下のような合併症を引き起こすことがあります:
- 睾丸炎:男性の場合、流行性耳下腺炎が睾丸に炎症を引き起こすことがあり、これが不妊症の原因になることがあります。
- 脳炎:非常にまれですが、ウイルスが脳に影響を与え、脳炎を引き起こすことがあります。
- 膵炎:膵臓に炎症が生じ、消化不良や腹痛を引き起こすことがあります。
8. 感染経路と潜伏期間
流行性耳下腺炎は、感染者の唾液や咳、くしゃみなどの飛沫を通じて広がります。また、感染者の物品(コップや食器など)を介しても感染が拡大することがあります。潜伏期間は通常12〜25日で、症状が現れる前に感染力があるため、感染者は症状が現れる前でも他の人に感染を広げることができます。
9. 診断方法
流行性耳下腺炎の診断は、主に臨床症状に基づいて行われます。耳下腺の腫れや発熱、頭痛などが確認されれば、流行性耳下腺炎が疑われます。また、ウイルスの特定を目的として、血液検査や唾液中のウイルス検査を行うことがありますが、通常は臨床症状が診断の決め手となります。
10. 予防方法
流行性耳下腺炎の予防には、ワクチン接種が非常に効果的です。特に、子どもに対してはMMR(麻疹・おたふくかぜ・風疹)ワクチンを接種することで、流行性耳下腺炎の予防が可能です。また、発症した人と接触しないようにすること、手洗いの徹底、公共の場でのマスク着用なども予防策として重要です。
11. 治療方法
流行性耳下腺炎の治療は、基本的に対症療法が中心となります。発熱や痛みを和らげるために解熱鎮痛薬が使われることがあります。十分な休息と水分補給も重要です。耳下腺の腫れが引くまで数日から1週間程度の回復期間が必要となります。特に合併症を防ぐため、重症化した場合は医師の指示に従うことが大切です。
流行性耳下腺炎は、予後が良好なことが多いですが、症状がひどくなる前に早期に対処することが重要です。