はじめに
急激に高熱が続き、皮膚に赤い発疹が現れる症状を示す疾患として「はしか」や「水痘」などが知られていますが、今回取り上げるのは「猩紅熱(しょうこうねつ)」、いわゆる「スカーレットフィーバー」または「スカーレット熱」としても知られる病気です。猩紅熱は、特に子供に多く見られ、発症からの早期治療が大切です。本記事では、猩紅熱の症状、原因、治療方法に関する情報を詳述し、予防法についても触れていきます。

猩紅熱の症状
猩紅熱の主な症状は急激な発熱と皮膚に現れる特徴的な発疹です。症状は以下のように進行します:
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高熱
猩紅熱は急激に発熱が始まるのが特徴です。通常、38度から40度の高熱が見られ、発熱は数日間続きます。この熱は、体温が急激に上がるため、患者は非常に不快感を覚えることが多いです。 -
咽頭炎
発症の初期段階では、喉の痛みや炎症が強く現れることが一般的です。喉の奥が赤く腫れ、飲み込みにくくなることがあります。白い膿がのどに付着することもあります。 -
特徴的な発疹
熱が続くと、皮膚に発疹が現れます。この発疹は通常、体幹(胸部や背中)から始まり、その後、顔、手足に広がります。発疹は細かいブツブツが集まったようなもので、手触りはザラザラとしています。特に首回りや脇の下、股の間に集中して見られることが多いです。 -
顔色の変化
顔が赤くなることがあり、目の周りは特に赤くなることがあります。発疹の発生から数日後には、顔色の赤みが強調され、顔が非常に目立つようになります。 -
皮膚の剥がれ
発疹が治まった後、皮膚が剥がれることがあります。この皮膚の剥がれは、特に手のひらや足の裏に見られ、患者は乾燥肌やかゆみを感じることがあります。 -
舌の変化(草苺舌)
猩紅熱では、舌が赤く腫れ、白い苔がつくことがあります。これを「草苺舌」と呼び、猩紅熱の特徴的な症状の一つとして知られています。 -
倦怠感と食欲不振
患者は極度の倦怠感を感じることが多く、普段通りの活動をすることが困難になります。また、食欲不振が続き、食べることが辛く感じられる場合があります。
猩紅熱の原因
猩紅熱は、**A群β溶血性連鎖球菌(ストレプトコッカス・ピオゲネス)**という細菌によって引き起こされます。この細菌は、喉の炎症を引き起こし、その毒素が体内に広がることで発疹などの症状を引き起こします。A群β溶血性連鎖球菌は、風邪や咽頭炎、扁桃炎などを引き起こす細菌としても知られており、猩紅熱はこれらの感染症が進行して発症することが多いです。
この細菌は、感染した人との密接な接触や飛沫を通じて広がります。特に咳やくしゃみをしたときに放出される飛沫を吸い込むことで感染することが多く、感染者が使用した食器やタオルなどを共有することでも感染が広がる可能性があります。幼児や小児が感染しやすいですが、大人でも感染することがあります。
猩紅熱の診断
猩紅熱の診断は、主に症状と身体的な所見を基に行います。発熱や発疹、喉の炎症などが明らかであれば、医師は猩紅熱を疑います。しかし、確定診断を行うためには、喉のぬぐいを使ってA群β溶血性連鎖球菌の感染を確認するための検査(迅速抗原検査や培養検査)を行うことが重要です。この検査により、細菌感染を特定し、適切な治療を行うことができます。
猩紅熱の治療方法
猩紅熱は抗生物質で治療することができます。診断が確定したら、通常はペニシリン系の抗生物質が処方されます。ペニシリンは、A群β溶血性連鎖球菌を殺菌する作用があり、症状が改善するまでの期間を大幅に短縮することができます。抗生物質を服用することで、感染の拡大を防ぎ、他の人への感染リスクを減少させることができます。
治療を受けることで、通常は数日以内に熱が下がり、発疹も徐々に回復します。ただし、抗生物質を途中で中止せず、医師の指示通りに服用を続けることが大切です。もし治療を中途半端に終わらせてしまうと、再発や合併症を引き起こす可能性があります。
また、発熱や痛みを和らげるために、解熱剤や鎮痛剤が使用されることがあります。十分な休養と水分補給も大切です。
猩紅熱の予防方法
猩紅熱の予防には、感染拡大を防ぐために以下のような対策が有効です:
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手洗いの徹底
手洗いは最も基本的かつ効果的な予防方法です。特に外出後や食事の前には、しっかりと手を洗うことが推奨されます。 -
マスクの着用
感染者が咳やくしゃみをしている場合、飛沫感染を防ぐためにマスクの着用が有効です。また、感染者は他の人との接触を避けることが大切です。 -
予防接種
現在、猩紅熱専用のワクチンは存在しませんが、A群β溶血性連鎖球菌に対する予防接種の研究は進められています。感染のリスクが高い場合、早期の発見と治療が予防に繋がります。 -
感染者との接触を避ける
猩紅熱にかかっている患者と直接接触しないことが最も有効な予防策です。感染者は治療を受けてから24時間が経過するまで、他の人と接触しないようにしましょう。
猩紅熱の合併症
猩紅熱は、適切な治療を行うことでほとんどの患者が回復しますが、治療が遅れると以下のような合併症を引き起こす可能性があります:
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腎炎(急性糸球体腎炎)
A群β溶血性連鎖球菌の感染が原因で腎臓に炎症が生じることがあります。腎炎は高血圧や浮腫(むくみ)を引き起こすことがあり、早期の治療が必要です。 -
リウマチ熱
リウマチ熱は心臓、関節、皮