猫ひっかき病とは?
猫ひっかき病(ネコひっかきびょう、英:Cat Scratch Disease)は、猫から人に感染することがある細菌性の疾患です。この病気は、主に猫に寄生しているバルトネラ・ヘンセラ(Bartonella henselae)という細菌が原因です。猫がこの細菌を体内に持っている場合、その唾液やひっかき傷、あるいは噛まれることによって、細菌が人に感染することがあります。

猫ひっかき病の症状
猫ひっかき病に感染すると、通常は数日から数週間の潜伏期間を経て症状が現れます。一般的な症状としては、以下のようなものがあります:
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発熱:感染後、軽い発熱を伴うことが多いです。発熱は数日続くことがあり、場合によっては38度以上になることもあります。
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リンパ節の腫れ:最も特徴的な症状で、ひっかき傷を受けた部位の近くにリンパ節が腫れることがあります。腫れたリンパ節は痛みを伴うこともあります。
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頭痛や倦怠感:発熱と共に、体がだるく感じたり、頭痛を引き起こすことがあります。
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皮膚の腫れや膿:感染部位で膿を伴う膨らみが現れることもあります。これは細菌が局所的に繁殖することによって引き起こされます。
感染経路
猫ひっかき病は、猫のひっかきや噛み傷を通じて感染します。感染のメカニズムとしては、猫がバルトネラ・ヘンセラを体内に持っており、その唾液や爪に細菌が付着している状態で人間の皮膚が傷つけられると、細菌が直接血流に入って感染します。
特に、若い猫や野良猫はバルトネラ菌を持っている可能性が高いため、猫との接触には注意が必要です。ひっかき傷や咬傷があった場合は、感染のリスクが高くなります。
診断方法
猫ひっかき病の診断は、主に症状と患者の病歴に基づいて行われます。医師は、猫と接触したことがあるかどうか、ひっかき傷や噛まれた場所があるかを確認します。さらに、血液検査を行ってバルトネラ・ヘンセラに対する抗体を調べることもあります。
また、場合によってはリンパ節からの細菌培養やPCR検査を行って、確定診断がなされることもあります。
治療方法
猫ひっかき病は、通常、軽度の症状であれば特別な治療を必要としません。発熱やリンパ節の腫れなどの症状が軽度であれば、安静にして自然に回復することが多いです。しかし、症状が重くなる前に治療を開始することが重要です。
抗生物質が処方されることが一般的で、特にアジスロマイシンやドキシサイクリンといった抗生物質が用いられます。治療は通常、数週間にわたって行われることが多いです。場合によっては、抗生物質を長期間服用することもあります。
予防方法
猫ひっかき病を予防するためには、猫との接触時にいくつかの予防策を取ることが重要です。以下は予防方法の一例です:
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猫の爪の手入れ:猫の爪を定期的に切ることで、ひっかき傷のリスクを減らすことができます。
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野良猫との接触を避ける:特に野良猫や新しく飼い始めた猫には注意が必要です。猫が感染している場合、見た目には健康に見えても細菌を持っている可能性があります。
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ひっかき傷や噛まれた傷をすぐに洗う:万が一、猫にひっかかれたり噛まれたりした場合は、すぐに傷を石鹸でよく洗い、消毒をすることが大切です。また、傷がひどい場合は、早めに医師の診察を受けることが推奨されます。
猫ひっかき病と他の疾患
猫ひっかき病は、同様の症状を持つ他の疾患と混同されることがあります。例えば、リンパ節の腫れや発熱は、他の感染症や炎症性疾患とも関連しているため、診断が難しい場合があります。猫ひっかき病を疑った場合には、他の疾患を除外するために医師の診断が重要です。
また、稀に猫ひっかき病が重篤な症状を引き起こすこともあります。免疫不全のある人や高齢者、子供などは特に注意が必要です。重篤な場合には、細菌が血流に入って全身に広がることがあり、これを敗血症と呼びます。敗血症が発生すると、生命に危険を及ぼすことがあるため、早期の診断と治療が求められます。
結論
猫ひっかき病は一般的には軽度で回復可能な疾患ですが、適切な予防策と治療を行うことが大切です。猫との接触時に十分な注意を払い、万が一ひっかき傷や噛まれた傷ができた場合は、速やかに処置を行うことが重要です。特に免疫が低下している人々は、感染リスクが高いため、猫との接触を避けるか、感染の兆候があった場合は早期に医師に相談することが推奨されます。