甲状腺機能亢進症(バセドウ病)は、甲状腺ホルモンの過剰分泌によって引き起こされる病状であり、体のさまざまな部分に影響を及ぼします。この疾患の症状は多岐にわたりますが、以下にその代表的な症状を詳述します。
1. 体重減少
甲状腺ホルモンは体の代謝を調整する役割を果たします。ホルモンの過剰分泌により、基礎代謝が異常に高くなり、食欲が正常でも体重が減少することがあります。食べている量が変わらないのに体重が減少する場合、この症状が疑われます。

2. 心拍数の増加
甲状腺機能亢進症の特徴的な症状の一つが、安静時の心拍数の増加です。心拍数が100回以上になることもあります(頻脈)。これにより、動悸を感じることが多く、時には不整脈(心房細動)を引き起こすこともあります。
3. 発汗の増加
ホルモンの過剰分泌により、体温調整が乱れ、通常よりも多く汗をかくようになります。これが手のひらや顔などに現れ、異常な発汗を感じることがあります。
4. 疲労感と不安感
甲状腺ホルモンの過剰は神経系にも影響を与え、精神的な不安定さを引き起こします。過剰なホルモンが交感神経を刺激し、動悸や不安感、落ち着かない感覚を感じることがあります。また、体のエネルギーを使いすぎるため、全体的に疲れやすくなることも特徴的です。
5. 手の震え(震戦)
手のひらや指先が震える症状が見られることがあります。これは、ホルモンが過剰に分泌されることによって、神経系が過敏になるためです。この震えは、特に手を使う作業をしているときに感じやすいです。
6. 眠れない(不眠症)
甲状腺ホルモンの過剰分泌は、体内時計を乱すことがあり、夜間に寝つきが悪くなる、または夜中に何度も目が覚めることがあります。睡眠の質が低下し、日中に強い眠気を感じることもあります。
7. 筋肉の弱さとけいれん
筋肉が急速にエネルギーを消費し、筋肉が弱くなることがあります。これにより、特に手足の筋肉に痛みやこわばりを感じることがあり、場合によってはけいれんを起こすこともあります。
8. 眼の症状
特にバセドウ病において顕著なのは、眼球突出(眼球が突出して見えること)や目の乾き、目の痛み、視力の低下などの眼の症状です。この症状は「甲状腺眼症」として知られ、目の周りの筋肉が腫れることによって引き起こされます。
9. 胃腸の不調
胃腸の働きが過剰に活発になるため、下痢や腹痛が頻繁に起こることがあります。また、消化不良や食後の不快感を訴えることもあります。
10. 月経異常
女性の場合、甲状腺機能亢進症は月経周期に影響を与えることがあります。月経が不規則になったり、月経が軽くなったり、最悪の場合、月経が完全に止まることがあります。
11. 皮膚の変化
甲状腺機能亢進症では、皮膚が乾燥しやすくなり、また爪がもろくなることがあります。これらの症状はホルモンバランスが乱れることによって引き起こされます。
12. 髪の変化
髪の毛が薄くなる、または抜けやすくなることがあります。これも甲状腺ホルモンの過剰分泌が関係しており、毛周期に影響を与えるためです。
診断と治療法
甲状腺機能亢進症は血液検査で診断されます。特に、TSH(甲状腺刺激ホルモン)の低下と、T3およびT4(甲状腺ホルモン)の上昇が確認されます。治療法としては、抗甲状腺薬、放射線治療(ヨウ素131治療)、または手術(甲状腺の一部または全摘)が選択肢となります。
まとめ
甲状腺機能亢進症は、体のさまざまな部分に影響を及ぼし、多くの症状が現れます。これらの症状が同時に現れることで、早期に適切な治療を受けることが重要です。症状に気づいた場合は、専門医による診断と治療を受けることが推奨されます。