甲状腺炎は、甲状腺に炎症が生じる状態を指し、その原因や症状は多岐にわたります。甲状腺は体内で重要なホルモンを分泌する器官であり、これらのホルモンは新陳代謝、エネルギー生成、体温の調節などに関与しています。甲状腺炎が進行すると、これらのホルモンのバランスが崩れ、さまざまな症状が現れることがあります。本記事では、甲状腺炎の症状、原因、診断、治療法について、詳しく説明します。
甲状腺炎の種類
甲状腺炎にはいくつかの異なる種類があり、症状や治療法もそれぞれ異なります。代表的な甲状腺炎の種類には、以下のものがあります。

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慢性甲状腺炎(橋本病)
慢性甲状腺炎は、免疫系が誤って自分の甲状腺を攻撃することによって引き起こされます。この病気は、最も一般的な甲状腺疾患の1つで、甲状腺の機能低下(甲状腺機能低下症)を引き起こします。甲状腺が次第に萎縮し、ホルモンの分泌が減少します。 -
急性甲状腺炎
急性甲状腺炎は、細菌感染が原因で甲状腺に急激な炎症を引き起こす病気です。この場合、甲状腺が腫れ、激しい痛みを伴うことがあります。 -
亜急性甲状腺炎(痛風性甲状腺炎)
亜急性甲状腺炎は、ウイルス感染によって引き起こされることが多く、甲状腺に炎症が発生します。このタイプの甲状腺炎は、通常一時的なものであり、甲状腺の機能は回復しますが、発症時には痛みや発熱が伴うことがあります。 -
無痛性甲状腺炎
無痛性甲状腺炎は、痛みがほとんどないものの、甲状腺に炎症が生じ、甲状腺ホルモンのバランスに影響を与えます。このタイプの甲状腺炎は、女性に多く見られ、特に出産後に発症することがあります。
甲状腺炎の症状
甲状腺炎の症状は、病気の種類や進行度によって異なりますが、一般的には次のような症状が現れます。
1. 甲状腺機能低下症(甲状腺機能低下症)の症状
慢性甲状腺炎(橋本病)などの甲状腺機能低下症では、甲状腺のホルモンが不足し、体の代謝が遅くなります。主な症状には以下があります:
- 疲れやすい
- 体重増加
- 寒がり
- 便秘
- 乾燥肌
- 髪の毛が抜けやすい
- 声がかすれる
- うつ症状
2. 甲状腺機能亢進症(甲状腺機能亢進症)の症状
一方で、亜急性甲状腺炎などの一部の甲状腺炎では、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることがあります。これが原因で甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが過剰)の症状が現れることがあります。主な症状には以下が含まれます:
- 手の震え
- 心拍数の増加(動悸)
- 発汗
- 体重減少
- 不安感や興奮
- 熱感(暑がり)
- 目の乾燥やかゆみ
3. 甲状腺腫大の症状
甲状腺が炎症を起こすと、甲状腺自体が腫れることがあります。これにより、首の周りに腫れを感じたり、触れることができることがあります。痛みを伴う場合もあります。
4. 急性甲状腺炎の症状
急性甲状腺炎では、細菌感染が原因で炎症が急速に進行し、次のような症状が現れることがあります:
- 激しい喉の痛みや首の痛み
- 発熱
- 甲状腺の腫れや圧痛
- のどの違和感や飲み込みにくさ
甲状腺炎の原因
甲状腺炎は、さまざまな原因によって引き起こされる可能性があります。以下はその主な原因です。
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自己免疫疾患
自己免疫疾患は、体の免疫システムが誤って自分自身の甲状腺を攻撃することによって起こります。慢性甲状腺炎(橋本病)はこの典型的な例で、免疫システムが甲状腺を攻撃し、機能低下を引き起こします。 -
感染症
ウイルスや細菌による感染が原因で甲状腺に炎症が生じることがあります。亜急性甲状腺炎はウイルス感染によって引き起こされることが多く、急性甲状腺炎は細菌感染によって発生します。 -
妊娠後のホルモン変動
妊娠中や出産後にホルモンのバランスが変化することにより、無痛性甲状腺炎を引き起こすことがあります。この状態は多くの場合、出産後数ヶ月以内に発症し、回復することが一般的です。 -
薬剤や治療による影響
一部の薬剤、特にリチウムなどの精神疾患の治療に使用される薬剤や、放射線治療によって甲状腺が影響を受けることがあります。
甲状腺炎の診断
甲状腺炎の診断は、主に血液検査と画像検査を基に行われます。血液検査では、甲状腺ホルモンのレベル(T3、T4)や、甲状腺刺激ホルモン(TSH)のレベルを測定し、甲状腺の機能状態を確認します。加えて、甲状腺の抗体を測定することもあり、自己免疫性の甲状腺炎の診断に役立ちます。
画像検査としては、超音波検査が一般的で、甲状腺の大きさや形状、腫瘍の有無などを調べます。必要に応じて、CTスキャンやMRIも使用されることがあります。
甲状腺炎の治療法
甲状腺炎の治療は、その種類や症状に応じて異なります。一般的な治療法は以下の通りです。
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甲状腺機能低下症の治療
甲状腺機能低下症の場合、甲状腺ホルモンを補充する治療が行われます。主に、レボチロキシンという薬を用いてホルモンのレベルを正常に保ちます。 -
甲状腺機能亢進症の治療
甲状腺機能亢進症の場合、抗甲状腺薬(メチマゾールなど)が使用されることが一般的です。また、重症の場合には、放射線治療や手術が必要になることがあります。 -
急性甲状腺炎の治療
急性甲状腺炎では、抗生物質が使用されることが多いです。細菌感染が原因の場合、感染を抑えるために適切な抗生物質を投与します。 -
痛みや炎症の管理
甲状腺炎による痛みや腫れを軽減するために、鎮痛剤や抗炎症薬が使用されることがあります。
まとめ
甲状腺炎は、甲状腺に炎症が生じる病気であり、その症状や治療法はタイプによって異なります。甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性があり、それぞれ異なる治療が必要です。症状に気づいた場合は、早期に医師の診断を受けることが重要です。