甲状腺生検(細針吸引生検、FNA)は、甲状腺の異常が疑われる場合に使用される重要な診断手段です。この手法は、超音波をガイドとして使用し、細い針を甲状腺に挿入して組織サンプルを採取する方法です。生検は通常、甲状腺の腫瘍や結節の良性・悪性を判別するために行われます。しかし、この手法にはいくつかのリスクや潜在的な弊害が伴います。本記事では、甲状腺生検の具体的なデメリットやリスクについて詳しく説明します。
1. 出血
生検を行う際、針が甲状腺に挿入されることで、血管が傷つく可能性があります。これにより、出血が発生することがあります。通常、この出血は軽度であり、止血が可能ですが、まれに血腫(血液のたまり)が形成されることがあります。血腫が大きくなると、甲状腺周辺の構造に圧力をかけることがあり、痛みや腫れが発生する場合もあります。

2. 感染症
針を使って組織サンプルを採取するため、感染症のリスクも存在します。細菌が生検針を通じて体内に侵入することにより、局所的な感染が生じることがあります。感染症の兆候としては、発熱、赤み、腫れ、膿の分泌などが挙げられます。これらの症状が現れた場合には、すぐに医師に相談し、適切な抗生物質の治療が必要です。
3. 神経損傷
甲状腺の近くには、声帯を制御する重要な神経が走行しています。生検針がこの神経に触れることによって、声帯麻痺を引き起こす可能性があります。これにより、声がかすれたり、呼吸が困難になったりすることがあります。幸い、このような神経損傷は非常に稀であり、多くの場合は一時的です。しかし、重篤な場合には手術が必要となることもあります。
4. 検査の正確性の問題
甲状腺生検は、組織サンプルを取得して診断を行う方法ですが、サンプルが不十分である場合や不正確な位置から取られた場合、診断結果が誤ってしまうことがあります。このような場合、再度生検を行う必要が生じることがあります。これにより、患者の負担が増えることや、診断が遅れることがあります。
5. 甲状腺機能への影響
生検の際に甲状腺組織に損傷を与えることがあり、これが甲状腺の機能に影響を与えることがあります。特に、大きな腫瘍や結節が生検対象である場合、その周囲の正常な甲状腺組織が影響を受ける可能性があります。これが原因で一時的に甲状腺ホルモンの分泌が低下し、甲状腺機能低下症(甲状腺機能低下症)や一時的な甲状腺機能亢進症(バセドウ病)を引き起こすことがあります。
6. 不安や心理的影響
甲状腺生検は、悪性腫瘍を疑う患者にとっては非常にストレスが大きい検査です。診断結果が出るまでの時間や、生検後の痛みや不安が精神的な負担となること