甲状腺肥大(こうじょうせんひだい)は、甲状腺が異常に大きくなる病状を指します。甲状腺は首の前方に位置する小さな臓器で、体の代謝を調節するホルモンを分泌します。甲状腺が肥大すると、さまざまな症状が現れ、原因や重症度によっては治療が必要となります。本記事では、甲状腺肥大の原因、症状、診断方法、治療法について詳しく説明します。
甲状腺肥大の原因
甲状腺肥大の主な原因は以下の通りです:

-
甲状腺機能低下症(甲状腺機能低下症)
甲状腺が十分なホルモンを分泌できない状態です。これにより、体が十分なエネルギーを得られず、甲状腺が大きくなることがあります。 -
甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
甲状腺が過剰にホルモンを分泌することによって、体の代謝が加速し、甲状腺が肥大することがあります。バセドウ病はこの症状の典型例です。 -
ヨウ素欠乏症
ヨウ素は甲状腺ホルモンの合成に必須の元素ですが、ヨウ素が不足すると甲状腺が過剰に働こうとして肥大します。特に発展途上国ではこの原因が一般的です。 -
甲状腺結節や甲状腺癌
甲状腺に結節ができることがあり、これが肥大の原因となることがあります。良性の結節もあれば、悪性の結節(甲状腺癌)もあります。 -
慢性甲状腺炎(橋本病など)
免疫系が甲状腺を攻撃する自己免疫疾患で、これが原因で甲状腺が炎症を起こし、結果として肥大します。 -
遺伝的要因
一部の甲状腺疾患は遺伝的要因によって発症することがあります。家族に甲状腺疾患を持つ人が多い場合、リスクが高くなることがあります。
甲状腺肥大の症状
甲状腺肥大の症状は、その原因や重症度によって異なります。主な症状は以下の通りです:
-
首の腫れや違和感
甲状腺が肥大すると、首の前方に腫れが見られることがあります。大きな腫れの場合、呼吸や飲み込みに支障をきたすこともあります。 -
体重の増減
甲状腺機能低下症では体重が増加することがあり、逆に甲状腺機能亢進症では体重が減少することがあります。 -
エネルギーの低下や疲れやすさ
甲状腺ホルモンが不足すると、エネルギーが不足し、疲れやすくなることがあります。逆にホルモンが過剰だと、過剰なエネルギーで体が落ち着かない感じになります。 -
心拍数の変化
甲状腺機能亢進症の場合、心拍数が速くなることがあり、甲状腺機能低下症では逆に心拍数が遅くなることがあります。 -
皮膚や髪の変化
甲状腺機能低下症では皮膚が乾燥し、髪が薄くなることがあります。逆に機能亢進症では、発汗が増え、髪が抜けやすくなることがあります。 -
情緒の変化
甲状腺ホルモンの異常は、感情や気分に影響を与えることがあります。甲状腺機能低下症では憂鬱や抑うつ感が生じやすく、甲状腺機能亢進症では焦燥感やイライラが増えることがあります。
甲状腺肥大の診断方法
甲状腺肥大の診断には、いくつかの方法があります:
-
身体検査
医師が首を触診し、甲状腺の腫れや硬さを確認します。 -
血液検査
血液検査を行い、甲状腺ホルモン(T3、T4、TSH)のレベルを確認します。これにより、甲状腺機能が正常かどうかを判断できます。 -
超音波検査
超音波を使って甲状腺の形状や大きさ、結節の有無を調べます。 -
細胞診(生検)
甲状腺に異常な腫れが見られる場合、針で組織を採取して、良性か悪性かを調べることがあります。 -
CTスキャンやMRI
より詳細な画像診断を行うことがありますが、通常は超音波検査で十分な情報が得られる場合が多いです。
甲状腺肥大の治療方法
甲状腺肥大の治療方法は、その原因に応じて異なります:
-
甲状腺ホルモンの補充(甲状腺機能低下症の場合)
甲状腺ホルモンが不足している場合、合成甲状腺ホルモン(レボチロキシン)を服用することでホルモンバランスを調整します。 -
抗甲状腺薬(甲状腺機能亢進症の場合)
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されている場合、抗甲状腺薬(メチマゾールなど)を使ってホルモンの分泌を抑える治療を行います。 -
放射線治療(ヨウ素治療)
甲状腺機能亢進症や甲状腺癌の場合、放射線ヨウ素(I-131)を使って甲状腺の一部を治療することがあります。 -
外科手術
甲状腺に大きな腫瘍がある場合や、甲状腺が非常に肥大している場合は、手術によって甲状腺の一部または全部を摘出することがあります。 -
生活習慣の改善
ヨウ素欠乏症が原因の場合、食事にヨウ素を適切に摂取することが推奨されます。ヨウ素を豊富に含む食品(海藻、魚介類など)を食べることが役立ちます。
予防と注意点
甲状腺肥大の予防には、以下のような注意点があります:
-
ヨウ素の摂取
ヨウ素欠乏を防ぐために、ヨウ素を豊富に含む食材を積極的に摂取しましょう。 -
定期的な健康診断
定期的に甲状腺の検査を受けることが、早期に問題を発見するために重要です。 -
ストレス管理
ストレスは甲状腺に悪影響を与えることがあるため、リラックスできる時間を持つことが推奨されます。
結論
甲状腺肥大は、様々な原因で発生する可能性があり、早期に適切な診断と治療を受けることが重要です。自分の体に異常を感じた場合は、早めに医師に相談し、必要な検査を受けることが健康を守るために不可欠です。