甲状腺肥大(甲状腺腫)とは、甲状腺が異常に大きくなる状態を指します。甲状腺は首の前方に位置する蝶のような形をした腺で、体内の代謝を調整するホルモンを分泌しています。甲状腺肥大は、甲状腺が過剰にホルモンを分泌したり、逆にホルモン分泌が不足することによって引き起こされることがあります。この病気の症状はさまざまで、軽度のものから重度のものまであります。今回は、甲状腺肥大の主な症状について、詳細に説明します。
1. 甲状腺肥大の原因
甲状腺肥大は、いくつかの原因によって引き起こされることがあります。以下のような要因が考えられます:

- 甲状腺機能亢進症(バセドウ病): 甲状腺が過剰にホルモンを分泌し、代謝が過剰に活発になります。
- 甲状腺機能低下症(橋本病): 甲状腺が十分なホルモンを分泌しないため、代謝が低下します。
- 亜急性甲状腺炎: 甲状腺が炎症を起こし、腫れを引き起こします。
- 結節性甲状腺腫: 甲状腺に結節(しこり)が形成され、その周囲が腫れることがあります。
2. 甲状腺肥大の症状
甲状腺肥大の症状は、原因によって異なりますが、以下のような一般的な症状が見られることが多いです。
(1) 首の腫れ
最も顕著な症状は、首にしこりや腫れが現れることです。甲状腺が肥大すると、首の前方に膨らみができ、目立つようになります。これが最初の兆候であり、早期に気づくことが大切です。腫れはしばしば痛みを伴うことがありますが、必ずしも痛みがあるわけではありません。
(2) 体重の変動
甲状腺機能が過剰または不足している場合、体重の急激な変動が見られることがあります。バセドウ病などの甲状腺機能亢進症では、食欲が増しているにもかかわらず体重が減少することがあります。一方で、橋本病のような甲状腺機能低下症では、体重が増加することがあります。
(3) 疲労感
甲状腺が適切にホルモンを分泌しない場合、代謝が低下し、エネルギーが不足することから、疲労感が強く感じられます。これにより、日常的にだるさを感じることが増えます。甲状腺機能亢進症でも、疲労感が現れることがありますが、これは過剰な代謝活動によるものです。
(4) 動悸や心拍数の増加
甲状腺機能亢進症の場合、心拍数が異常に早くなることがあります。動悸を感じたり、急に心臓が早く打つような感覚が現れます。この症状は、ホルモンが体の代謝を過剰に活発にし、心臓の働きにも影響を与えるためです。
(5) 手の震え
バセドウ病など、甲状腺ホルモンの過剰分泌が原因となっている場合、手が震えることがあります。この震えは、軽度の場合もあれば、強く震えることもあります。
(6) 便秘や下痢
甲状腺機能低下症では便秘が一般的に見られますが、機能亢進症では下痢が発生することがあります。これらの消化器系の異常は、甲状腺ホルモンの影響を受けていることを示しています。
(7) 睡眠障害
過剰なホルモン分泌は、眠れなくなる原因となることがあります。バセドウ病では、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりすることがあります。逆に、甲状腺機能低下症の場合は、過度の眠気や昼間の眠気が強くなることがあります。
(8) 脱毛
甲状腺ホルモンの不均衡は、髪の毛に直接影響を与えることがあります。特に甲状腺機能低下症では、髪の毛が薄くなったり、抜けやすくなることがあります。
(9) 目の症状(バセドウ病の場合)
バセドウ病に関連する甲状腺機能亢進症では、目の異常が見られることがあります。目が突出して見える、乾燥感や視力の変化が起こるなどの症状が現れることがあります。
3. 甲状腺肥大の診断
甲状腺肥大が疑われる場合、まずは内科または内分泌科の専門医に相談することが必要です。診断には以下のような方法が用いられます:
- 血液検査: 甲状腺ホルモン(TSH、T3、T4)のレベルを測定することで、甲状腺の機能状態を確認します。
- 超音波検査: 首の腫れやしこりの詳細を確認するために、超音波を使って甲状腺の状態を画像で確認します。
- CTスキャンやMRI: より詳細な検査が必要な場合には、CTスキャンやMRIを行うことがあります。
- 生検: しこりが疑わしい場合、針を使って組織を採取し、癌などの異常がないか調べます。
4. 甲状腺肥大の治療
甲状腺肥大の治療は、原因に基づいて異なります。以下の治療法があります:
- 薬物療法: 甲状腺ホルモンの分泌を調整する薬が処方されることがあります。例えば、甲状腺機能亢進症には抗甲状腺薬、機能低下症には甲状腺ホルモン薬が用いられます。
- 放射線治療: 甲状腺機能亢進症や甲状腺腫瘍に対して、放射線治療が行われることもあります。
- 手術: 甲状腺腫瘍や癌が疑われる場合、手術によって甲状腺の一部または全部を取り除くことがあります。
5. まとめ
甲状腺肥大は、さまざまな原因で引き起こされ、症状も多岐にわたります。首の腫れや体重の変動、疲労感、動悸、睡眠障害など、日常生活に支障をきたす症状が現れることがあります。早期に発見し、適切な治療を行うことで、症状を改善し、健康を維持することができます。もしこれらの症状に心当たりがある場合は、早めに専門医の診断を受けることをお勧めします。