甲状腺腫瘍についての完全かつ包括的な記事
甲状腺腫瘍は、甲状腺に発生する異常な細胞の塊や腫れを指します。甲状腺は首の前部に位置し、ホルモンを分泌する内分泌腺であり、これらのホルモンは体内の新陳代謝を調節する重要な役割を果たしています。甲状腺腫瘍には良性と悪性のものがあり、その治療法や予後は腫瘍の種類や大きさ、進行具合によって異なります。本記事では、甲状腺腫瘍の種類、原因、症状、診断方法、治療法について詳細に解説します。

甲状腺腫瘍の種類
甲状腺腫瘍は、主に良性腫瘍と悪性腫瘍に分類されます。それぞれの特徴について詳しく見ていきます。
1. 良性甲状腺腫瘍
良性の甲状腺腫瘍は、腫瘍が悪性に転化することなく成長を続けるものです。良性腫瘍は、通常、癌にはならないとされていますが、腫瘍が大きくなることで甲状腺の機能に影響を与えることがあります。以下は良性腫瘍の例です。
-
甲状腺腺腫(腺腫):最も一般的な良性腫瘍で、腫瘍が甲状腺の一部で発生します。通常は無症状で、腫瘍が大きくなることはまれです。
-
甲状腺結節:甲状腺内に小さな塊ができることがあり、これも良性のものが多いです。結節は超音波検査で発見されることが多く、定期的に経過観察を行うことが一般的です。
2. 悪性甲状腺腫瘍
悪性の甲状腺腫瘍、すなわち甲状腺癌は、正常な細胞が異常に増殖し、周囲の組織に浸潤したり、転移する可能性があります。甲状腺癌にはいくつかの種類があります。
-
乳頭状甲状腺癌:最も一般的な甲状腺癌で、全体の約80%を占めます。若年層に多く見られ、治療後の生存率が非常に高いとされています。
-
濾胞状甲状腺癌:乳頭状甲状腺癌に次いで一般的で、やや進行が早い場合があります。転移の可能性もありますが、治療に対する反応は良好です。
-
髄様甲状腺癌:甲状腺ホルモンを分泌しない癌で、甲状腺内のC細胞から発生します。遺伝的な要因が関連していることがあり、早期発見が重要です。
-
未分化甲状腺癌:非常に稀な癌で、非常に悪性度が高いです。進行が速く、予後が悪いため、早期発見が治療の鍵となります。
甲状腺腫瘍の原因
甲状腺腫瘍の原因は、まだ完全に解明されていない部分もありますが、いくつかのリスク因子が知られています。
-
遺伝的要因:甲状腺腫瘍は、遺伝的な要因が関与している場合があります。特に髄様甲状腺癌では、遺伝子変異が重要な要因となることがあります。家族に甲状腺癌の患者がいる場合、発症リスクが高まることがあります。
-
放射線被曝:過去に放射線治療を受けたことがある人や、放射線事故に巻き込まれた人は甲状腺腫瘍を発症するリスクが高くなります。特に子供や若年層は影響を受けやすいとされています。
-
性別と年齢:甲状腺腫瘍は、女性に多く見られる傾向があります。また、乳頭状甲状腺癌は、20~40代の若年層に多い一方、濾胞状甲状腺癌は高齢者に多く見られます。
-
ホルモンバランス:甲状腺ホルモンの過剰分泌や不足が、甲状腺腫瘍の発生に関与している可能性もあります。特に、甲状腺機能亢進症や低下症がある場合、腫瘍のリスクが増加することがあります。
甲状腺腫瘍の症状
甲状腺腫瘍が良性であっても、腫瘍のサイズや場所によっては症状が現れることがあります。悪性の場合、症状はより顕著になることが多いです。
-
首にしこり:甲状腺腫瘍の最も一般的な症状のひとつは、首の前部にしこりを感じることです。しこりは、触れると動かないことが多いです。
-
喉の違和感や圧迫感:腫瘍が大きくなると、喉に違和感や圧迫感を感じることがあります。これにより、飲み込みにくさや呼吸困難を感じることもあります。
-
声の変化:腫瘍が声帯に影響を与えると、声がかすれることがあります。これは、腫瘍が神経を圧迫することによって起こることがあります。
-
甲状腺機能異常の症状:甲状腺腫瘍がホルモン分泌に影響を与える場合、体重の増減、疲れやすさ、手の震え、心拍数の変化など、甲状腺機能異常の症状が現れることがあります。
甲状腺腫瘍の診断方法
甲状腺腫瘍が疑われる場合、いくつかの検査を行って診断が行われます。
-
超音波検査:首のしこりや腫瘍の大きさ、位置を確認するために使用される最も一般的な検査です。腫瘍が良性か悪性かをある程度評価することができます。
-
細胞診(針生検):腫瘍の組織を少量採取し、顕微鏡で調べることで、腫瘍の性質を確定するために行います。悪性か良性かの判断に役立ちます。
-
CTやMRI検査:腫瘍の大きさや他の臓器への浸潤の有無を調べるために、CTスキャンやMRIが使われることがあります。
-
血液検査:甲状腺ホルモンのレベルを測定し、腫瘍がホルモン分泌に影響を与えているかどうかを確認するために行われます。
甲状腺腫瘍の治療法
甲状腺腫瘍の治療方法は、腫瘍の種類や進行具合によって異なります。
-
手術:良性の腫瘍や小さな悪性腫瘍の場合、手術で腫瘍を取り除くことが最も一般的な治療法です。場合によっては甲状腺全体を摘出することもあります。
-
放射線治療:悪性の甲状腺癌に対しては、手術後に放射線治療が行われることがあります。放射線治療は、癌細胞が完全に取り除けない場合に補助的に使われます。
-
薬物療法:ホルモン治療や化学療法が、癌が転移した場合や手術後の再発予防として行われることがあります。
予後と生活の質
甲状腺腫瘍の予後は、腫瘍の種類や進行状況に大きく依存します。乳頭状甲状腺癌は予後が非常に良好であり、早期に発見されればほとんどの場合、完全に治療することができます。一方、未分化甲状腺癌は予後が悪く、早期の発見が治療成功の鍵となります。
治療後の生活の質は、手術の方法や術後のホルモンバランスによって異なります。甲状腺を部分的にまたは完全に摘出した場合、ホルモン補充療法が必要になることがあります。この補充療法