疥癬(かいせん)に関する完全かつ包括的な解説
疥癬(かいせん)は、人間に影響を与える皮膚疾患の一つで、主に「疥癬ダニ」と呼ばれる微小な寄生虫によって引き起こされます。これらのダニは皮膚の表面に穴を掘り、繁殖することによって強いかゆみや炎症を引き起こします。疥癬は非常に感染力が強く、接触感染によって広がるため、家庭や学校、施設などで集団感染が発生することがあります。本記事では、疥癬の症状、原因、診断方法、治療法、予防法などについて詳細に解説します。

1. 疥癬の原因と病原体
疥癬の原因は、「疥癬ダニ(Sarcoptes scabiei)」という微小な寄生虫です。このダニは、通常肉眼では見ることができないほど小さく、わずか0.3ミリメートル程度の大きさです。疥癬ダニは皮膚に穴を掘り、卵を産みつけ、孵化した幼虫は再び皮膚に移動して繁殖します。これが繰り返されることにより、皮膚の炎症やかゆみが発生します。
疥癬ダニは、直接的な皮膚接触を通じて人から人へと感染します。特に、長時間の密接な接触があった場合、感染のリスクが高まります。例えば、寝具やタオル、衣服などを共有することで、感染が広がることがあります。また、免疫力が低下している人や高齢者、子供などは、より感染しやすい傾向にあります。
2. 疥癬の症状
疥癬の最も特徴的な症状は、強いかゆみです。ダニが皮膚に穴を掘り卵を産むことによって炎症が引き起こされ、皮膚に赤い発疹や膿疱(膿がたまった小さな丘疹)が現れます。かゆみは特に夜間に強くなることがあり、患者は睡眠中に掻いてしまうことが多いため、症状が悪化することがあります。
疥癬の発疹は通常、体の特定の部位に集中します。典型的には、指の間、手首、肘、膝、陰部、臀部などに現れることが多いですが、顔や頭部には通常発疹が現れません。特に小さな子供の場合、顔や頭皮にも症状が現れることがあります。発疹は赤い斑点や小さな水疱として現れることもあり、かゆみがひどくなると皮膚が傷ついて膿が出ることもあります。
3. 疥癬の診断方法
疥癬の診断は、主に臨床症状を基に行われます。医師は、患者の皮膚の状態を観察し、発疹の特徴やかゆみの強さを確認します。診断を確定するためには、皮膚を軽くかきむしり、顕微鏡でダニや卵を検出することが重要です。この方法は、「皮膚掻爬(そうは)」と呼ばれ、最も確実な検査方法とされています。
また、疥癬の症状が他の皮膚疾患と似ていることがあるため、診断には注意が必要です。たとえば、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎など、かゆみを伴う他の病気と混同されることがあります。したがって、医師は症状の詳細を確認し、適切な診断を行います。
4. 疥癬の治療方法
疥癬は適切な治療を行えば治癒することができます。治療の基本は、疥癬ダニを殺す薬剤を使用することです。現在、疥癬の治療に最も一般的に使用される薬は、パーメトリン軟膏です。これは、疥癬ダニを殺す効果があり、皮膚に塗布することでダニを駆除します。通常、患部全体に塗布し、数時間後に洗い流します。治療は1回で完了することが多いですが、症状が残っている場合は、数日後に再度治療を行うことがあります。
また、重症例や治療が効果を示さない場合には、イベルメクチンという経口薬が処方されることがあります。イベルメクチンは、ダニの神経系に作用し、ダニを死滅させる効果があります。
治療中は、患部を清潔に保ち、かゆみを抑えるために抗ヒスタミン薬を使うこともあります。かきむしりを防ぐため、皮膚を傷つけないように注意が必要です。さらに、家族や密接に接触する人々も予防的に治療を受けることが推奨されます。
5. 疥癬の予防方法
疥癬は感染力が強いため、予防が非常に重要です。予防のためには、以下のような対策を講じることが効果的です。
- 密接な接触を避ける:疥癬は直接的な皮膚接触によって感染します。感染者と長時間、または頻繁に接触することを避けることが基本的な予防策です。
- 個人用品の共有を避ける:タオル、寝具、衣服などの個人用品を共有しないようにしましょう。これにより、間接的な感染を防ぐことができます。
- 家庭内での清潔を保つ:家族に感染者がいる場合は、家の中を清潔に保ち、タオルやシーツは頻繁に洗濯し、熱湯で洗うことが推奨されます。
- 早期の診断と治療:疥癬の疑いがある場合は、早期に医師の診断を受け、治療を始めることが重要です。早期に治療を行うことで、感染の拡大を防ぐことができます。
6. 疥癬の合併症
適切な治療が行われない場合、疥癬は合併症を引き起こすことがあります。特に、掻きむしりによって皮膚に傷ができると、細菌感染を引き起こすことがあります。これにより、膿瘍や**蜂窩織炎(ほうかしきえん)**といった皮膚の感染症が発生することがあります。これらの合併症は、抗生物質で治療する必要があります。
また、免疫力が低下している人(HIV感染者、高齢者、免疫抑制剤を使用している人など)は、ノルウェー疥癬という重度の形式を発症することがあります。ノルウェー疥癬は、非常に広範囲にわたる皮膚病変が現れ、治療が難しいことが多いです。
結論
疥癬は、疥癬ダニによって引き起こされる皮膚疾患であり、強いかゆみや発疹を伴います。感染力が強いため、早期の診断と治療が重要です。適切な治療法としては、パーメトリン軟膏やイベルメクチンが有効です。また、予防のためには、密接な接触を避けることや個人用品を共有しないことが大切です。疥癬は適切な治療を受ければ完治する病気であり、治療後も再感染を防ぐための注意が必要です。