一般外科

痔核の症状と見分け方

痔核(いわゆる「いぼ痔」)の完全ガイド:自分が痔核を患っているかどうかを見極めるための包括的な解説

痔核(じかく)は、日本人の多くが一度は経験する一般的な肛門疾患であるにもかかわらず、多くの人が恥ずかしさや誤解から適切な治療を受けずに放置してしまう傾向があります。特に初期段階では軽視されやすく、慢性化することで日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。この記事では、痔核とは何か、自覚症状、診断の方法、重症化する前に自分で気づくためのポイント、治療法、予防法までを科学的根拠に基づいて詳しく解説します。


痔核とは何か?

痔核とは、肛門の静脈が拡張し、血流が滞ることで発生する血管のうっ血性のこぶです。一般的に「内痔核」と「外痔核」の2種類に分類されます。

分類 発生部位 主な症状 目視確認
内痔核 肛門の内側 出血、排便時の不快感 難しい
外痔核 肛門の外側 痛み、腫れ、触れるしこり 容易

痔核の主な症状:これらのサインに要注意

以下の症状が複数当てはまる場合、痔核の可能性が高くなります。

1. 排便時の出血

最も一般的な症状のひとつ。鮮やかな赤色の出血が見られる場合、内痔核による出血であることが多いです。トイレットペーパーに血がついたり、便器の中に血がたまることもあります。

2. 肛門のかゆみや違和感

痔核によるうっ血や粘液の分泌によって、かゆみが引き起こされることがあります。初期には違和感だけですが、進行すると持続的なかゆみになる場合があります。

3. 肛門の腫れやしこり

外痔核は肛門の外にしこりとして現れるため、指で触れて確認できることが多いです。突然の激しい腫れや痛みがある場合は、血栓性外痔核の可能性があります。

4. 排便時の強い痛み

特に外痔核は痛みを伴うことが多く、長時間座ることや排便時に強い痛みが出る場合、症状が進行している可能性があります。

5. 脱出(脱肛)

内痔核が進行すると、排便時に肛門の外へ出てくることがあります(脱出)。軽度であれば自然に戻りますが、重症化すると指で押し戻す必要が出てきます。


自己診断の注意点と限界

市販薬で一時的に症状が改善することがありますが、根本原因を特定しないまま放置すると、症状が悪化する危険があります。特に以下のような場合は、早急に肛門科や消化器外科を受診する必要があります。

  • 一度に大量の出血がある

  • 症状が数週間以上持続している

  • 排便に強い恐怖感がある

  • 排便時にしこりや異物感がある

  • 発熱や全身の倦怠感を伴う


痔核と他疾患との鑑別診断

痔核の症状と似ている他の疾患には以下のようなものがあります。

疾患名 症状の類似点 鑑別ポイント
肛門裂肛(切れ痔) 出血、痛み 排便直後の鋭い痛みが特徴
直腸がん 出血、便の形状の変化 慢性的かつ断続的な出血
潰瘍性大腸炎 下血、粘液便、腹痛 下痢と粘血便が長期間続く
クローン病 肛門の腫瘍、下痢、出血 体重減少、口腔潰瘍など全身症状あり

医学的診断のプロセス

診察は次のステップで行われます。

  1. 問診:出血の量、頻度、痛みの有無、排便習慣などを確認。

  2. 視診・触診:肛門周囲の腫れやしこりを確認。外痔核は視診で確認可能。

  3. 肛門鏡検査:内痔核の状態を詳しく確認するための重要な検査。

  4. 大腸内視鏡検査(必要に応じて):直腸がんなどの他疾患を除外するために実施されることがある。


治療法の選択肢:重症度に応じたアプローチ

重症度 治療方法 特徴
軽度 生活習慣改善、座薬、軟膏 食物繊維の摂取、排便の習慣改善が効果的
中等度 注射療法(ジオン注)、内痔核硬化療法 日帰り可能、出血を抑える目的
重度 外科的手術(結紮切除術) 入院が必要なケースもあり

予防法:生活習慣の見直しが鍵

食生活

  • 食物繊維を豊富に含む野菜、果物、全粒穀物を摂取

  • 水分を1日1.5〜2リットル以上摂取することで便を柔らかくする

  • アルコールやカフェインの過剰摂取を避ける

排便習慣

  • トイレに長時間座らない(目安は5分以内)

  • 我慢せず、便意を感じたらすぐに排便する

  • 強くいきまない

運動習慣

  • 軽いウォーキングやストレッチを継続的に行うことで血流改善

  • 長時間の座り仕事では30分ごとに立ち上がる


最新研究と展望

近年の研究では、痔核の発症には遺伝的要因や骨盤底筋の緩みが関係している可能性も示唆されています。また、低侵襲手術の技術進歩により、従来よりも痛みや出血の少ない治療が可能になってきました(出典:日本臨床肛門病学会誌 2023)。


結論

痔核は多くの人に起こり得る疾患でありながら、正しい知識と早期対応があれば重症化を防ぐことができます。排便時の違和感や出血は、決して「一時的なこと」と軽視せず、恥ずかしさを乗り越えて専門医の診察を受けることが最も重要です。生活習慣の見直しと予防的なアプローチによって、再発を防ぎ、快適な生活を取り戻すことができるのです。


参考文献:

  • 日本臨床肛門病学会「痔核の診療ガイドライン2023」

  • 厚生労働省:肛門疾患に関する啓発資料

  • 『日本大腸肛門病学会雑誌』第76巻第3号(2022)

  • 国立がん研究センター:肛門・直腸の出血に関する検査指針


日本の読者の皆様が、自分自身の身体のサインに耳を傾け、健康を保つための第一歩を踏み出せるよう、この記事が一助となれば幸いです。

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