医学と健康

盲腸炎の症状と治療

盲腸炎(Appendicitis)とは、盲腸(大腸の一部)に付随している細長い袋状の器官である「虫垂(ちゅうすい)」が炎症を起こす病気です。盲腸炎は、急性腹痛の原因として非常に一般的であり、適切に治療しないと命にかかわる可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。本記事では、盲腸炎の原因、症状、診断方法、治療法、予防法について包括的に解説します。

盲腸炎とは?

盲腸炎は、虫垂(盲腸の先端部分)の内部が細菌に感染することで発症します。感染が進行すると、虫垂が膨張し、炎症を引き起こします。最も一般的な形態は急性盲腸炎であり、急激に腹痛が現れます。慢性盲腸炎は稀であり、症状が長期間にわたって軽度に続くことがあります。

盲腸炎の原因は、虫垂の内部が閉塞され、そこに細菌が繁殖することによって発症します。閉塞の原因としては、腸内の便や異物、または腫瘍が虫垂に詰まることが挙げられます。

盲腸炎の症状

盲腸炎の主な症状は次の通りです:

  1. 腹痛:最も典型的な症状は腹痛で、初めはお腹の中央や上腹部に鈍い痛みとして現れることが多いですが、徐々に右下腹部に強い痛みを感じるようになります。この痛みは、咳や動くことで悪化することがあります。

  2. 吐き気と嘔吐:腹痛が悪化する前に、吐き気や嘔吐が現れることがあります。これらの症状は痛みと共に進行することが多いです。

  3. 発熱:軽度の発熱が見られることがあり、体温は38度程度に上昇することがあります。

  4. 食欲不振:盲腸炎が進行するにつれて食欲が減退することが多いです。

  5. 便通異常:便秘や下痢など、腸の働きに異常を感じることがあります。

症状が急激に悪化する場合、虫垂が破裂するリスクがあり、これは命にかかわる状態です。破裂すると、腹腔内で感染が広がり、重篤な腹膜炎を引き起こす可能性があります。

盲腸炎の診断

盲腸炎の診断は、患者の症状や医師による身体検査に基づいて行われます。診断を確定するためには、以下の方法が用いられます:

  1. 身体検査:医師は患者の腹部を触診して、右下腹部に痛みや圧痛があるかどうかを確認します。また、筋肉の緊張や反跳痛(お腹を押した後に離したときの痛み)も診断の手がかりとなります。

  2. 血液検査:血液検査を行い、炎症を示す指標である白血球数の増加を確認することがあります。これにより、感染の兆候を確認できます。

  3. 画像診断

    • 超音波検査:腹部の超音波検査で、虫垂の腫れや炎症の有無を確認することができます。特に小児や妊婦に対しては、放射線被ばくがないため安全に行える方法です。
    • CTスキャン:CTスキャンは、急性盲腸炎の診断において高い精度を誇ります。虫垂の膨張や炎症、周囲の組織への影響を詳細に確認することができます。

盲腸炎の治療方法

盲腸炎の治療は、基本的には手術によって虫垂を摘出する方法(虫垂切除術)が一般的です。手術は通常、以下の方法で行われます:

  1. 開腹手術:虫垂が破裂していない場合や、炎症が軽度の場合は、開腹手術を行い、虫垂を取り除きます。この手術は、比較的簡単で回復も早い場合が多いです。

  2. 腹腔鏡手術:腹腔鏡を使って、少ない切開で虫垂を取り除く方法です。この方法では、入院期間が短く、回復が早いことが特徴です。現在では、腹腔鏡手術が多くの患者に選ばれています。

手術が早期に行われれば、ほとんどの場合、回復は順調ですが、手術が遅れると、虫垂が破裂し、腹膜炎などの重篤な合併症が発生することがあります。

盲腸炎の予防

盲腸炎には明確な予防策はありませんが、以下の方法でリスクを減らすことができます:

  1. バランスの取れた食事:食物繊維が豊富な食事を摂ることで、便秘を予防し、虫垂の閉塞を防ぐ可能性があります。

  2. 早期の症状の認識:腹痛や吐き気などの症状が現れた場合、すぐに医療機関に相談することが重要です。早期に治療を受けることで、合併症のリスクを減らすことができます。

  3. 規則正しい生活習慣:健康的な生活習慣を維持することで、免疫力を高め、細菌感染を防ぐ助けになります。

まとめ

盲腸炎は急性の腹痛を引き起こす一般的な病気であり、適切な診断と治療を受けることで、ほとんどの患者は回復します。重要なのは、症状を見逃さず、早期に治療を行うことです。手術が遅れると、命に関わる合併症が発生することがあるため、痛みや不調を感じた際には、すぐに医師に相談することを強くお勧めします。

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