眼圧の上昇(高眼圧)は、目の健康にとって非常に重要な問題です。眼圧が正常範囲を超えると、緑内障などの眼疾患を引き起こす可能性があり、最終的に視力を損なうことがあります。この記事では、眼圧が上昇する原因について、包括的に説明します。
1. 眼圧のメカニズム
眼圧は、眼球内の液体である房水の圧力によって決まります。房水は、眼の前部にある前房という部分で生成され、眼の隅角(眼の前部の隅)を通って排出されます。房水の生成と排出がバランスを保っているとき、眼圧は正常範囲に保たれます。しかし、房水の排出がうまくいかなくなると、眼圧が上昇することになります。

2. 高眼圧の原因
高眼圧は、いくつかの異なる原因によって引き起こされます。以下に、代表的な原因をいくつか挙げます。
(1) 房水の排出障害
房水が正常に排出されないと、眼圧が上昇します。排出路である隅角部分が狭くなる、もしくは詰まることが原因となります。これは特に、閉塞隅角緑内障や開放隅角緑内障で見られる問題です。隅角が閉塞すると房水が正常に流れず、眼圧が急激に上昇することがあります。
(2) 房水の過剰生成
房水の生成量が過剰になることも、眼圧を上昇させる原因となります。通常、房水は生成と排出がバランスを取っているため、過剰に生成されるとその排出量を上回り、眼圧が上昇します。この場合、特に目の中で房水を生成する毛様体の働きが関与しています。
(3) 加齢
加齢によって、眼の隅角部分の形状や構造が変化することがあります。これにより、房水の排出路が狭くなり、眼圧が上昇する可能性があります。また、加齢による眼の筋肉の弱化も影響を与えることがあります。
(4) 遺伝的要因
高眼圧の発症には遺伝的要因が大きく関与しているとされています。家族に緑内障を患った人がいる場合、その人も高眼圧を発症するリスクが高いことが分かっています。遺伝的な要因により、房水の生成量や排出機能に違いが生じることが原因です。
(5) 糖尿病
糖尿病は、眼圧に直接的な影響を与える可能性があります。糖尿病によって目の血管が損傷し、目の内圧が異常に高くなることがあります。特に、糖尿病網膜症などの合併症を持つ患者は、高眼圧を発症するリスクが高くなります。
(6) 高血圧
高血圧(高血圧症)は、眼の血流に影響を与え、眼圧の上昇を引き起こすことがあります。血圧が高いと、目の血管にかかる圧力が増し、これが間接的に眼圧を上昇させる原因となります。特に、高血圧と高眼圧が同時に発生することがあり、これが緑内障のリスクを増大させる可能性があります。
(7) ステロイドの使用
長期間にわたってステロイド(特に眼用ステロイドや経口ステロイド)を使用することは、眼圧を上昇させる一因となります。ステロイドは、房水の排出を妨げる作用を持ち、眼圧を上昇させる可能性があります。ステロイド使用者は、高眼圧や緑内障を発症するリスクが高くなるため、注意が必要です。
(8) 目の外傷
眼球に外的な衝撃を受けることによって、目の構造が変化し、房水の流れが妨げられることがあります。これにより眼圧が上昇し、最終的には視力に影響を与えることがあります。
(9) 眼の炎症
眼の内部に炎症が起きることも、眼圧を上昇させる原因となります。虹彩炎やぶどう膜炎などの眼の炎症が進行すると、房水の排出が妨げられ、眼圧が上昇することがあります。
3. 高眼圧と緑内障
高眼圧が続くと、緑内障という疾患を引き起こすことがあります。緑内障は、視神経が圧迫されることによって視力が低下する疾患で、放置すると失明の原因となります。高眼圧が必ずしも緑内障を引き起こすわけではありませんが、高眼圧は緑内障の最も重要な危険因子とされています。
緑内障の初期には自覚症状がほとんどなく、視野の欠損が進行するまで気づかないことが多いため、定期的な眼科検診が非常に重要です。
4. 予防と治療
高眼圧を予防し、管理するためには、早期の発見と適切な治療が必要です。眼科での定期検査を受け、視力や眼圧の状態をチェックすることが推奨されます。また、生活習慣の改善や、薬物治療、場合によっては手術によって、眼圧をコントロールすることができます。
(1) 薬物治療
眼圧を下げるための薬物治療は、点眼薬が主に使用されます。これにより、房水の生成を抑えたり、排出を促進したりすることができます。点眼薬以外にも、内服薬や手術が選択肢となることがあります。
(2) ライフスタイルの改善
高血圧や糖尿病を予防するための食事や運動などの健康的なライフスタイルを維持することも、眼圧管理において重要です。禁煙やアルコール摂取の制限も、眼圧の上昇を防ぐ助けになります。
結論
高眼圧は様々な原因によって引き起こされる可能性があり、早期に発見し適切に管理することが重要です。定期的な眼科検診を受け、生活習慣を改善することで、眼圧の上昇を予防し、健康な目を保つことができます。