睡眠中の呼吸困難、すなわち「夜間の息苦しさ」にはさまざまな原因が考えられます。この問題は、安眠を妨げ、健康に大きな影響を与える可能性があります。この記事では、睡眠中に呼吸が困難になる原因について、医学的視点から詳しく解説していきます。
1. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が一時的に停止または浅くなる状態を指します。最も一般的な原因は「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」で、喉の筋肉が緩み、気道が塞がることで呼吸が一時的に止まります。この状態は、睡眠中に何度も繰り返され、酸素供給が途絶えるため、身体に大きな負担をかけます。

主な症状:
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大きないびき
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眠気や疲労感
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朝起きたときの喉の痛み
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頭痛や集中力の低下
治療法:
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体重管理
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CPAP(持続的気道陽圧法)装置の使用
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外科的手術(気道の開放)
2. 喘息
喘息は気道が炎症を起こし、狭くなることで呼吸困難を引き起こします。夜間、特に寝ている間に症状が悪化することが多く、「夜間喘息」として知られています。喘息はアレルゲンや環境の変化、風邪などによって引き起こされることがあります。
主な症状:
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喉の締め付け感
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息切れや咳
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呼吸音(ゼーゼー、ヒューヒュー)
治療法:
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吸入薬(気管支拡張薬、ステロイド)
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アレルゲンの回避
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環境調整(室内温度、湿度管理)
3. 心不全
心不全は心臓が十分な血液を送り出せなくなる病状で、睡眠中に呼吸困難を引き起こす原因となります。特に「パラドックス的夜間呼吸困難(PND)」と呼ばれる状態が見られ、寝ている間に息が苦しくなり、起き上がると改善することがあります。これは、横になっていることで血液が肺に集まり、呼吸を妨げるためです。
主な症状:
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立ち上がると楽になる呼吸困難
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足や足首のむくみ
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夜間に頻繁に起きる
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息切れや動悸
治療法:
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利尿薬
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ACE阻害薬やβ遮断薬などの心臓治療薬
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体位管理(高枕で寝る、横向きで寝る)
4. GERD(胃食道逆流症)
胃食道逆流症(GERD)は、胃酸が食道に逆流することで起こる病気で、寝ているときに胃酸が逆流し、呼吸を妨げることがあります。これにより胸焼けや咳が引き起こされ、夜間の呼吸困難を感じることがあります。
主な症状:
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胸やけ
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喉の不快感
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咳や喘鳴
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夜間の呼吸困難
治療法:
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食事の改善(脂っこい食べ物を避ける)
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PPI(プロトンポンプ阻害薬)の使用
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頭を高くして寝る
5. アレルギー
アレルギー反応が夜間に悪化することがあります。特にダニやカビ、花粉などのアレルゲンが寝具や室内に多く存在する場合、これらが呼吸困難を引き起こすことがあります。アレルギー性鼻炎やアレルギー性喘息が原因となることもあります。
主な症状:
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鼻づまり
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咳や喉のかゆみ
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目のかゆみや涙目
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呼吸困難
治療法:
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抗ヒスタミン薬
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ステロイド点鼻薬
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空気清浄機の使用
6. 睡眠中の姿勢
睡眠中の姿勢も呼吸に大きな影響を与えます。特に仰向けで寝ると舌や喉の筋肉が気道を塞ぎ、呼吸困難を引き起こすことがあります。このような場合、横向きで寝ることが推奨されることがあります。
7. 体重の増加
肥満は呼吸困難の原因となることがあります。体重が増加すると、胸や腹部の圧迫が呼吸に影響を与え、特に寝ているときに呼吸がしづらくなることがあります。肥満による気道の圧迫が睡眠時無呼吸症候群のリスクを高めることもあります。
主な症状:
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息切れや疲れやすさ
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睡眠中の大きないびき
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起きたときの喉の痛みや乾燥
治療法:
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体重管理とダイエット
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定期的な運動
8. 薬の副作用
一部の薬物は、睡眠中に呼吸困難を引き起こすことがあります。特に、鎮静薬や抗うつ薬などは筋肉の弛緩を引き起こし、気道が狭くなることがあります。
主な症状:
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睡眠中の呼吸停止や不規則な呼吸
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めまいや息切れ
対策:
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薬の服用時間の変更や、医師に相談して別の薬に変更する
まとめ
睡眠中の呼吸困難は多くの原因によって引き起こされます。もし睡眠中に息苦しさを感じることがあれば、まずはその原因を明確にすることが重要です。睡眠時無呼吸症候群や喘息、心不全など、治療が必要な疾患が隠れていることがあるため、早期に医師の診断を受けることが推奨されます。日常生活でできる予防法や対策を取り入れ、快適な睡眠を取り戻すことが重要です。