学術論文や研究報告書の「はじめに(序論)」は、その研究の目的、背景、意義を読者に伝える重要な部分です。適切な導入があることで、研究の焦点が明確になり、読者がその研究がなぜ重要なのか、どのような問題に取り組んでいるのかを理解しやすくなります。以下に、大学の研究論文における「はじめに」の書き方について詳述します。
1. 研究の背景と問題設定
まず最初に行うべきことは、研究の背景を説明することです。研究者がどのような問題に着目し、なぜその問題が重要であると考えるのかを示すことが求められます。この段階では、以下の点に注意して記述します。
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問題の特定: 現代社会や学問分野における重要な問題を特定し、その問題がどのようにして研究に結びついているのかを説明します。
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背景情報の提供: 研究対象に関連する既存の知見や文献を簡単に紹介し、問題がどのように取り上げられてきたかを概観します。
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研究の必要性の強調: これまでの研究で解決されていない課題や、未解明の部分に焦点を当て、なぜこの研究が必要であるのかを明確にします。
2. 研究目的と研究質問
次に、研究の目的や具体的な研究質問を明示します。これは、読者がこの研究の目的を理解しやすくするために必要な部分です。
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研究目的の明示: この研究が解決しようとしている問題、または研究の最終的な目標を簡潔に述べます。例えば、「本研究では、〇〇の影響を調査することを目的としている」といった形です。
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研究質問の設定: 研究の進行において答えようとしている具体的な質問を明確にします。研究質問は通常、明確で測定可能な形で設定され、研究全体を通じて一貫して追求されます。
3. 研究の重要性と意義
研究が進められる背景には、必ずその研究が社会的、学問的にどのような意義を持つのかがあります。そのため、研究の意義を述べることは重要です。
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学問的な意義: この研究が学問分野にどのように貢献するのか、または既存の理論や知識体系に新たな視点を加えることができるのかを説明します。
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社会的な意義: 研究が社会や業界に与える影響や実務的な応用の可能性について言及します。例えば、技術革新や政策提言にどのように寄与するかを示すことができます。
4. 研究方法の簡潔な説明
はじめにの段階で、研究方法について詳細に述べる必要はありませんが、どのような方法を用いて問題にアプローチするかを簡単に触れておくことが有益です。
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研究方法の概要: 研究方法についての簡単な説明を加えることで、読者に研究の進行方法や調査手法の方向性を示します。たとえば、実験的手法、調査手法、質的分析などです。
5. 論文の構成についての簡単な説明
最後に、研究論文の全体の構成を簡単に示すことも有効です。これにより、読者は論文の進行方向を理解しやすくなります。
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論文構成の説明: 各章や節がどのような内容を扱うのか、全体の流れを簡潔に紹介します。
例文
以下に、具体的な「はじめに」の例を挙げてみます。
本研究は、近年急速に進展しているAI技術の教育現場への応用について調査するものである。教育におけるAIの導入は、授業の効率化や個別化学習の実現など、多くの可能性を秘めているが、その実際の効果については未だ不明確な点が多い。本研究では、AIが学習効果に与える影響を明らかにすることを目的とし、特に小学校におけるAI活用事例を分析することに焦点を当てる。これにより、AI教育の効果的な導入方法を提案し、教育現場への実践的な貢献を目指す。
このように、研究の背景、目的、意義を明確にし、研究の重要性やアプローチ方法を示すことで、読者にとって分かりやすく有意義な導入部分を作成することができます。
