社会福祉研究の進め方

研究は、社会福祉の分野において非常に重要な役割を果たします。社会福祉に関する問題や課題を解決するために、実証的なデータや知見が必要とされます。そのため、研究は問題を明確にし、介入方法を評価し、最終的には福祉サービスの質の向上を目指すものです。この記事では、社会福祉における研究の進め方、特に研究の各ステップについて詳細に説明します。

1. 研究テーマの設定

社会福祉における研究は、まず研究のテーマを設定することから始まります。この段階では、研究者は社会問題や福祉サービスに関連する課題を特定し、研究が解決すべき問題を明確にします。例えば、福祉施設における利用者の満足度や、特定の介護方法が効果的かどうかを検証するテーマが考えられます。

テーマ設定にあたっては、現実的な問題を取り上げ、社会福祉の理論と実践のギャップを埋めるような研究を選ぶことが重要です。また、テーマが具体的で測定可能な問題に焦点を当てることで、後の調査がスムーズに進みます。

2. 文献レビュー（先行研究の調査）

次に、既存の文献をレビューすることが必要です。文献レビューは、過去の研究成果を調査し、既存の知識や理論、研究方法を理解するための重要なステップです。この段階で、研究者は以下のことを行います：

• 既存の研究でどのような問題が取り上げられているかを把握する。

• 自分の研究テーマに関連する先行研究がどれくらいあるかを確認する。

• 研究におけるギャップや未解決の問題を見つけ、今後の研究の方向性を決める。

文献レビューを通じて、どのような方法論が使用されているのか、どのような理論的枠組みが採用されているのかも学べます。これにより、研究者は自分の研究のアプローチを決定する際に重要な参考を得ることができます。

3. 研究の目的と仮説の設定

研究の目的を明確に設定することは、研究全体の方向性を決めるうえで非常に重要です。研究の目的が明確であることで、実施する調査や分析の焦点が絞られ、効率的に進めることができます。

さらに、目的に基づいて仮説を設定します。仮説は、研究の過程で検証するべき予測や前提です。例えば、「福祉施設のスタッフ教育が利用者の満足度に影響を与える」といった仮説を立て、その仮説が正しいかどうかを調査することになります。

4. 研究方法の選定

研究方法は、問題解決のために最も適切な手段を選ぶことが求められます。社会福祉の研究では、主に定量的研究方法と定性的研究方法が用いられます。

• 定量的研究方法：数値データを収集し、統計的に分析する方法です。アンケート調査や実験、既存データの分析がこれにあたります。この方法は、データを客観的に解析し、一般化可能な結果を導くのに適しています。

• 定性的研究方法：インタビューやフィールドワークなどを通じて、個別のケースや状況に対する深い理解を得る方法です。この方法は、特定の事例を深掘りして、詳細な情報を得るのに有効です。

社会福祉の研究では、これらの方法を組み合わせた混合研究法もよく用いられます。研究の目的や問題に応じて、最適な方法を選択することが重要です。

5. データ収集

データ収集は、研究の核心部分です。定量的研究では、アンケート調査や実験、観察などを通じて数値データを収集します。定性的研究では、インタビューやグループディスカッションを通じて、個人の意見や体験を収集します。

データ収集にあたっては、倫理的配慮が重要です。社会福祉の研究では、研究対象者のプライバシーを守り、インフォームド・コンセントを得ることが求められます。また、データ収集の方法や対象者の選定についても透明性を持たせる必要があります。

6. データ分析

収集したデータは、次に分析されます。定量的データの場合、統計的手法を用いてデータを解析し、仮説が支持されるかどうかを検証します。定性的データの場合、テーマやパターンを抽出し、内容を分類・解釈します。

データ分析の結果をもとに、研究者は仮説が正しいかどうかを判断し、研究の目的に対する回答を導きます。この段階では、分析結果をわかりやすく伝えることが求められます。グラフや表を使って視覚的に結果を示すことも有効です。

7. 結果の解釈と結論

データ分析が終わった後、結果を解釈して結論を導きます。研究の目的に対してどのような回答が得られたのか、仮説は正しかったのかを明確に示します。また、研究結果が実際の社会福祉の実践にどのように役立つかを考え、政策提言や介入方法の改善点などを示すことも重要です。

さらに、研究には限界があるため、その点についても正直に述べる必要があります。例えば、サンプルサイズが小さい、調査期間が短いなど、研究の制約を明確にしておくことは、他の研究者にとっても有益な情報となります。

8. 研究結果の発表と公表

最後に、研究結果を発表し、公表する段階に入ります。社会福祉の研究結果は、学術誌に掲載するほか、カンファレンスやシンポジウムで発表することが一般的です。研究結果が社会にどのように影響を与えるかを考え、実務に反映させる方法についても議論が必要です。

発表の際には、研究の目的、方法、結果、結論を簡潔に伝えることが重要です。また、他の研究者との議論やフィードバックを受けて、研究をさらに深めることもあります。

結論

社会福祉における研究は、理論的な知識を実践に活かすために欠かせないものです。研究者は、現実の問題を解決するために慎重にデータを収集・分析し、その結果を社会福祉の改善に役立てます。研究の各ステップを着実に進めることで、福祉サービスの質の向上や社会問題の解決に貢献することができます。