妊娠中の羊水量の減少、すなわち羊水過少症は、胎児の健康と発育に重大な影響を及ぼす可能性があります。羊水は胎児を保護し、運動の自由を提供し、肺の発達を促進するなど、妊娠中に多くの重要な役割を果たします。羊水量の減少の原因は多岐にわたり、以下に主な要因を詳述します。
1. 胎盤機能不全

胎盤は胎児への酸素と栄養素の供給を担う重要な器官です。胎盤の機能が低下すると、胎児への血流が減少し、結果として羊水の生成も減少します。高血圧や妊娠高血圧症候群、糖尿病などの母体の健康状態が胎盤機能不全を引き起こすことがあります。
2. 母体の脱水
母体の水分摂取が不十分であると、羊水量も減少する可能性があります。妊娠中は通常よりも多くの水分が必要であり、脱水は羊水の減少を招く一因となります。
3. 胎児の腎臓異常
胎児の腎臓は羊水の主要な供給源です。胎児の腎形成異常や尿路閉塞などの腎臓や尿路の異常がある場合、尿の生成が減少し、結果として羊水量も減少します。
4. 羊膜の破裂
羊膜が破裂すると、羊水が漏れ出し、羊水量が減少します。これは早期破水として知られ、感染症のリスクも高まります。
5. 過期妊娠
妊娠が42週を超えると、羊水量が自然に減少する傾向があります。これは胎盤の老化や機能低下によるものと考えられています。
6. 多胎妊娠
双子や三つ子などの多胎妊娠では、胎児間で羊水量の不均衡が生じることがあります。一方の胎児が過剰な羊水を持ち、他方が不足する双胎間輸血症候群などがその例です。
7. 薬剤の影響
特定の薬剤、特にアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、羊水量の減少と関連しています。妊娠中の薬剤使用は医師と相談の上、慎重に行う必要があります。
8. 子宮内胎児発育遅延(IUGR)
胎児の成長が遅れると、羊水量も減少することがあります。これは胎盤機能不全や母体の健康状態、遺伝的要因などが関与しています。
9. 染色体異常
胎児の染色体異常、例えばトリソミー18(エドワーズ症候群)などは、羊水量の減少と関連することがあります。
10. 不明な原因
場合によっては、明確な原因が特定できないこともあります。これを特発性羊水過少症と呼びます。
まとめ
羊水量の減少は、胎児の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、定期的な妊婦健診での監視が重要です。上記のようなリスク要因を理解し、早期に対処することで、母体と胎児の健康を守ることができます。妊娠中の異常や懸念がある場合は、速やかに医療機関に相談することが推奨されます。