肝硬変(肝臓の線維化)は、肝臓の組織が正常な細胞から硬く、線維化した組織に置き換わる病状です。肝臓は重要な機能を担っているため、この疾患が進行することで様々な健康問題が引き起こされます。肝硬変の初期段階では、症状が現れにくいため、気づかないことが多いですが、病気が進行するにつれて症状が顕著に現れることがあります。以下では、肝硬変の症状とその進行過程について詳しく説明します。
1. 初期段階の症状
肝硬変の初期段階では、症状がほとんど現れません。肝臓はまだその機能を維持しているため、体に明らかな不調がないことが多いです。しかし、次のような軽微な症状が現れることもあります。

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疲れやすさ: 肝臓の機能が低下し始めると、体が十分にエネルギーを生産できなくなり、日常生活で疲れやすくなります。
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食欲不振: 初期段階では食欲が減退することがあります。
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体重の変化: 体重が急に増減することがあります。特に、腹部に水分がたまること(腹水)によって、見かけ上の体重増加が起こることがあります。
2. 進行した症状
肝硬変が進行すると、肝臓の機能が大幅に低下し、より深刻な症状が現れるようになります。以下はその代表的な症状です。
2.1 消化器系の症状
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黄疸(おうだん): 肝臓がビリルビンを正常に処理できなくなると、血液中のビリルビン濃度が上昇し、皮膚や目の白い部分が黄色くなる「黄疸」が現れます。
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腹水: 肝臓の血流が悪化すると、血液中のアルブミンが減少し、体内に水分がたまって腹部が膨らむことがあります。これにより、お腹が張った感じが強くなります。
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食道静脈瘤: 肝硬変が進行すると、肝臓に血液がうまく流れなくなり、食道の血管が膨らんで破裂することがあります。これが食道静脈瘤で、出血を引き起こし、嘔吐や黒い便を伴うことがあります。
2.2 神経系の症状
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肝性脳症(肝性昏睡): 肝臓が毒素を解毒できなくなると、アンモニアなどの有害物質が血液中に蓄積し、脳に影響を与えることがあります。これにより、意識障害や混乱、昏睡状態に至ることがあります。
2.3 皮膚や見た目の変化
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手掌紅斑(てのひらの赤み): 肝硬変患者では、手のひらが赤くなることがあります。この症状は、血管の拡張によるものです。
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蜘蛛状血管腫: 小さな血管が皮膚に現れ、蜘蛛の足のような形に広がることがあります。この症状は、肝機能が低下したことによる血液の循環障害が原因です。
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爪の変形: 肝硬変が進行すると、爪が白くなったり、先端が丸くなったりすることがあります。
2.4 精神的・身体的な症状
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浮腫(むくみ): 肝臓が血液中のタンパク質を十分に作れなくなると、足や足首にむくみが生じることがあります。
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出血傾向: 肝臓は血液を正常に凝固させるための物質を生成するため、肝機能が低下すると出血しやすくなることがあります。特に、歯茎からの出血や鼻血、内出血が見られることがあります。
3. 病気の進行と重篤な合併症
肝硬変が進行すると、肝臓の働きが完全に失われることがあり、肝不全に至ることがあります。肝不全は生命を脅かす状態であり、以下のような合併症が発生することがあります。
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肝癌: 肝硬変は肝臓がんのリスクを大きく高めます。肝細胞の変異が進み、がんが発生することがあります。
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肝性肺症候群: 肝硬変に伴い、肺の機能が低下することがあります。これにより、呼吸困難や低酸素状態に陥ることがあります。
4. 診断と治療
肝硬変の診断は、血液検査、画像検査(超音波、CTスキャン、MRI)、肝生検などを通じて行われます。早期に発見し、適切な治療を受けることで、進行を遅らせることが可能です。
治療方法としては、生活習慣の改善(アルコールの摂取制限、栄養バランスの取れた食事)、薬物療法(利尿剤や抗ウイルス薬)、場合によっては肝移植が検討されることもあります。
結論
肝硬変は進行性の病気であり、早期の発見と適切な管理が重要です。症状が進行すると、生活の質を大きく低下させ、命に関わる合併症を引き起こすこともあります。定期的な健康診断や、アルコールや食事の管理が予防と早期発見につながります。