肺線維症（ふうせんいしょう）は、肺の組織が傷つき、硬くなる疾患であり、最終的には肺が十分に機能しなくなる病気です。この疾患は、進行性であり、症状が徐々に悪化するため、早期の発見と治療が重要です。肺線維症はその原因によって大きく分けることができ、特定の原因が明確でない特発性肺線維症と、外的な要因（職業的な曝露や薬剤など）が原因となる二次性肺線維症に分類されます。この記事では、肺線維症の原因、症状、診断方法、治療法、予後について詳細に解説します。
肺線維症の原因
肺線維症の原因は多岐にわたり、特に環境的要因や遺伝的要因が影響を与えることが知られています。原因が特定できる場合と特定できない場合がありますが、以下に主な原因を示します。
1. 特発性肺線維症
特発性肺線維症は、原因が不明な場合に診断されます。この疾患は、年齢を重ねるごとに発症リスクが高まりますが、その原因については明確な解明には至っていません。しかし、遺伝的要因や免疫系の異常が関与している可能性があると考えられています。また、特発性肺線維症は、一般的に中高年層に多く見られ、徐々に進行するため、早期発見が難しいことが多いです。
2. 喫煙
喫煙は、肺線維症の主要な原因の一つとして広く認識されています。特に長年にわたる喫煙は、肺組織に深刻なダメージを与え、その結果、肺の硬化を引き起こすことがあります。煙草の煙に含まれる有害物質が肺に蓄積され、免疫系が過剰に反応することで、炎症が引き起こされ、その炎症が慢性化すると肺線維症が発症します。
3. 職業的曝露
石綿（アスベスト）や粉塵（シリカ粉塵など）に長期間曝露されることも肺線維症の原因として知られています。これらの物質は、肺に深刻な損傷を与える可能性があり、特に建設業や鉱業など、これらの環境に従事している労働者に多く見られます。アスベストに曝露されることで、肺の線維化が引き起こされる「アスベスト関連肺疾患」が発症することがあります。
4. 薬剤性肺線維症
特定の薬剤が肺線維症を引き起こすことがあります。例えば、抗生物質の一部や化学療法薬などが原因となることが知られています。これらの薬剤は、肺の細胞に直接的なダメージを与え、長期間使用すると肺の繊維化を引き起こすことがあります。
5. アレルギー性肺炎
アレルギー反応が原因となり、肺に炎症が生じることがあります。このような炎症が慢性化すると、最終的に肺の線維化に繋がる可能性があります。例えば、カビや鳥の羽毛などにアレルギー反応を示す場合に、アレルギー性肺炎を引き起こし、その結果として肺線維症が進行することがあります。
肺線維症の症状
肺線維症は、初期段階では症状が軽微であることが多いため、発症から進行までの期間は個人差があります。しかし、進行するにつれて、次第に呼吸困難や咳、疲れやすさなどの症状が現れ、生活の質に深刻な影響を及ぼします。主な症状は以下の通りです。
1. 呼吸困難（息切れ）
肺線維症の最も一般的な症状は呼吸困難です。特に運動をしていない時でも息切れを感じることがあり、進行するにつれて、安静時にも息苦しさを感じることがあります。
2. 慢性の咳
長期間にわたる乾いた咳が続くことが多いです。この咳は、しばしば他の呼吸器疾患と誤診されることがありますが、肺線維症が進行することで、咳が悪化することがあります。
3. 疲れやすさ
肺が十分に酸素を供給できなくなるため、日常生活の中で疲れやすくなることがあります。少しの運動でも疲れを感じることが多く、体力の低下が見られることがあります。
4. 体重減少
進行した肺線維症では、食欲不振や体力の低下によって体重減少が見られることがあります。これは、肺機能の低下により、全身の酸素供給が不十分になるため、体が栄養をうまく吸収できないことが一因です。
5. 指先の変形（ばしつ）
進行した肺線維症の患者では、指先が膨らんで変形することがあります。この症状は「ばしつ」と呼ばれ、酸素が十分に供給されないために血流の異常が起こることが原因です。
肺線維症の診断
肺線維症の診断は、患者の症状や病歴に基づいて行われます。診断においては、まず問診や身体検査が行われ、次に以下の検査が実施されることが一般的です。
1. 胸部X線
胸部X線検査は、肺の異常を確認するための基本的な検査です。肺線維症が進行すると、肺の構造が変化し、X線画像に線維化の兆候が現れることがあります。
2. CTスキャン
CTスキャンは、肺の詳細な画像を取得することができ、肺の線維化の進行具合を確認するために重要です。特に高解像度CT（HRCT）は、肺の微細な変化をより正確に捉えることができます。
3. 肺機能検査
肺機能検査は、呼吸の効率を測定するための検査です。肺線維症が進行すると、肺の拡張能力が低下し、呼吸機能が悪化します。この検査により、肺の機能がどれくらい低下しているかを把握できます。
4. 血液検査
血液検査では、炎症反応や免疫系の異常を調べることができます。特発性肺線維症の場合、血液中の特定のマーカーが異常値を示すことがあります。
肺線維症の治療法
肺線維症の治療は、疾患の進行を遅らせ、症状を緩和することを目的としています。現在、肺線維症を完全に治す方法はありませんが、いくつかの治療法が効果的とされています。
1. 薬物療法
薬物療法は、肺線維症の進行を遅らせるために使用されます。特に、抗線維化薬（ピルフェニドンやニンテダニブなど）は、肺の線維化を抑える効果があり、進行を遅らせる可能性があります。
2. 酸素療法
進行した肺線維症の患者には、酸素療法が推奨されることがあります。酸素療法により、体内に十分な酸素を供給し、呼吸困難を緩和することができます。
3. 呼吸リハビリテーション
呼吸リハビリテーションは、患者が効率的に呼吸する方法を学び、呼吸機能を改善するためのトレーニングです。これにより、日常生活での息切れを軽減することができます。
4. 肺移植
肺