栄養

胃バイパス手術の減量効果

胃バイパス手術(ルー・ワイ胃バイパス)のプロセスと減量効果について

肥満症の治療法の一つである**胃バイパス手術(ルー・ワイ胃バイパス手術)**は、長期的な減量と健康状態の改善を目的とした外科的処置です。本記事では、胃バイパス手術の詳細なプロセス、適応基準、手術後の減量率、健康上のメリットとリスクについて詳しく解説します。


1. 胃バイパス手術とは?

胃バイパス手術(Roux-en-Y Gastric Bypass: RYGB)は、胃の大部分を切り離し、小さな胃の袋(ポーチ)を作成し、小腸と直接つなぐことで、食事摂取量の制限と栄養吸収の低下を同時に達成する減量手術です。

手術の目的

  • 食事の制限:胃を小さくすることで、少量の食事で満腹感を得る。

  • 栄養吸収の抑制:小腸の一部をバイパスすることで、カロリー吸収を減少させる。

  • ホルモンバランスの変化:インスリン感受性の向上や食欲ホルモン(グレリン)の低下により、食欲を抑える。


2. 胃バイパス手術のプロセス

手術は通常、腹腔鏡(ラパロスコピー)を使用して行われ、以下のような手順で進められます。

① 小さな胃ポーチの作成

  • 胃の上部を約30〜50mLの小さなポーチ(袋)として分離し、残りの胃とは完全に切り離されます。

  • これにより、一度に食べられる量が大幅に減少します。

② 小腸の再構築(バイパス形成)

  • 小腸の一部(十二指腸と空腸の一部)を切り離し、小さな胃ポーチに直接接続します。

  • これにより、食べたものは胃の大部分と十二指腸を通らずに小腸の中間部分へと流れます。

③ 消化管の再接続

  • 切り離した小腸の一部(十二指腸を含む消化液が流れる部分)は、さらに下流の小腸と再び接続され、消化酵素と食べ物が合流するようになります。

  • これにより、栄養の吸収が一部抑えられます。

④ 手術の完了

  • 全体の手術時間は約2〜3時間

  • 入院期間は通常2〜5日間

  • 退院後は流動食から始め、段階的に通常食に戻す。


3. 手術後の減量効果とそのスピード

胃バイパス手術の後、1〜2年で総体重の30〜40%の減量が期待できます。

減量の目安(術後の経過)

期間 体重減少の割合(元の体重比) 体重減少のペース
1ヶ月 5〜10% 速い
3ヶ月 15〜20% 速い
6ヶ月 25〜30% 中程度
1年 30〜40% 徐々に低下
2年 35〜45% 安定
  • 最初の6ヶ月間は急激に体重が減少し、その後は緩やかになります。

  • 2年以降は、体重が安定し、リバウンド防止のためのライフスタイル改善が重要となります。


4. 胃バイパス手術の適応基準

胃バイパス手術は、以下のような条件に該当する患者に推奨されます。

適応基準

  1. BMI(体格指数)が35以上

    • 日本ではBMI 32以上で糖尿病などの合併症がある場合も対象。

  2. 肥満関連の疾患を持つ人

    • 2型糖尿病、高血圧、高コレステロール、睡眠時無呼吸症候群など。

  3. 食事・運動療法では効果が得られなかった人


5. 胃バイパス手術のメリットとデメリット

メリット

長期的な減量効果:適切な生活習慣の維持により、リバウンドが少ない

糖尿病の改善:2型糖尿病患者の約80%が血糖値の正常化を達成。

高血圧・高脂血症の改善:心血管リスクの低下につながる。

デメリット

栄養不足のリスク:鉄分、ビタミンB12、カルシウム不足が起こりやすい。

Dumping症候群:糖質の摂取で血糖値が急変し、めまい・動悸が発生する可能性あり。

消化不良・下痢:脂肪や乳製品の消化が困難になることがある。


6. 胃バイパス手術後の生活

手術後の生活習慣の見直しが、成功のカギとなります。

食事管理

  • 食事量を制限(少量で満足できる)

  • 高タンパク質・低糖質の食事(筋肉の維持が重要)

  • サプリメント摂取(ビタミン・ミネラル補給)

運動習慣

  • 術後1ヶ月は軽い運動(散歩など)

  • 3ヶ月後から筋力トレーニングを開始し、リバウンド防止


7. まとめ

胃バイパス手術は、食事制限と栄養吸収の抑制を組み合わせた効果的な減量手術ですが、適切な術後管理が必要です。

  • 手術後1年で30〜40%の減量が可能

  • 糖尿病や高血圧の改善が期待できる

  • 食生活と運動習慣の改善が不可欠

手術を検討する際は、医師と十分に相談し、リスクとメリットを理解した上で決断することが重要です。

Back to top button