胆嚢(たんのう)は、肝臓の下に位置する小さな袋状の器官で、胆汁を蓄える役割を担っています。胆汁は肝臓で生成され、消化を助けるために腸に分泌されます。胆嚢の主な機能は、この胆汁を一時的に蓄えておき、食物が小腸に入ると、胆嚢が収縮して胆汁を腸に放出することです。このプロセスは、脂肪の消化を助ける重要な役割を果たしています。しかし、さまざまな病状や障害が胆嚢に影響を及ぼすことがあり、その中で特に胆石や胆嚢炎が問題になります。
1. 胆嚢の構造と機能
胆嚢は肝臓の右下に位置し、形状は洋ナシに似た袋状をしています。約7~10センチメートルの長さで、通常は約30ミリリットルの胆汁を蓄えることができます。胆汁は肝臓で生成され、その後、胆管を通って胆嚢に運ばれます。食物が小腸に到達すると、胆嚢はホルモン「コレシストキニン(CCK)」の影響を受けて収縮し、胆汁を十二指腸に放出します。この胆汁は脂肪を乳化させる役割を果たし、脂肪の消化を助けます。

2. 胆石の形成
胆石は、胆嚢内で胆汁が固まって形成される小さな結晶です。胆石は、コレステロール、ビリルビン、またはカルシウムを含んでいます。胆嚢内で胆汁が適切に排出されない場合や、胆汁が過剰に濃縮されると、胆石が形成されやすくなります。胆石は、大きさや数に応じて無症状であることもありますが、症状を引き起こすこともあります。胆石が胆管を塞ぐと、激しい痛み(胆石症)、黄疸、または感染症(胆嚢炎)を引き起こすことがあります。
胆石の種類
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コレステロール胆石:
最も一般的なタイプで、胆汁中のコレステロールが過剰に蓄積されて固まったものです。女性や肥満の人に多く見られます。 -
色素胆石:
ビリルビン(赤血球が破壊されたときに生成される物質)が胆汁に過剰に含まれることによって形成される石です。主に肝疾患や貧血患者に見られます。 -
混合胆石:
コレステロールと色素が組み合わさったタイプで、胆嚢内で最も一般的に見られるタイプです。
3. 胆嚢炎
胆嚢炎は、胆嚢の炎症を指し、通常は胆石が胆嚢の出口を塞いで胆汁の排出を妨げることによって発生します。この状態は、急性または慢性であり、急性胆嚢炎は痛みを伴う激しい症状を引き起こすことがあります。急性胆嚢炎は、腹部右上の激しい痛み、発熱、吐き気、嘔吐を伴い、早急な治療が必要です。
慢性胆嚢炎は、繰り返しの急性発作が原因で胆嚢に損傷を与え、時間が経つにつれて症状が軽減しますが、完全に治癒することは難しく、最終的には胆嚢摘出手術が推奨されることがあります。
4. 胆嚢摘出術(胆嚢除去手術)
胆石や胆嚢炎が重度である場合、または薬物療法が効果的でない場合、胆嚢摘出手術が必要になることがあります。胆嚢摘出術には、主に以下の方法があります。
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腹腔鏡下胆嚢摘出術(腹腔鏡手術):
最も一般的な方法で、数か所の小さな切開を使ってカメラと小さな器具を使い、胆嚢を取り除く手術です。この方法は回復が早く、入院期間が短いのが特徴です。 -
開腹手術:
腹腔鏡下手術ができない場合や合併症がある場合に行われる手術です。大きな切開を使って胆嚢を取り除きます。回復には時間がかかり、リスクも高くなります。
胆嚢摘出後、胆汁は直接小腸に流れ込むようになりますが、胆嚢がなくても消化機能には大きな影響はありません。ただし、脂肪の消化に若干の影響があることがあります。
5. 胆嚢に関連する疾患
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胆管炎:
胆嚢炎が進行して、胆管が感染することがあります。これは非常に危険で、早期の治療が必要です。 -
胆嚢ポリープ:
胆嚢の内壁にできる良性の腫瘍で、通常は無症状ですが、大きくなると痛みを引き起こすことがあります。 -
胆汁うっ滞:
胆汁が肝臓から正常に流れない場合に発生します。これにより、黄疸が現れたり、腹部の不快感を感じることがあります。
6. 予防と生活習慣
胆嚢の健康を保つためには、以下の生活習慣が推奨されます。
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バランスの取れた食事:
健康的な体重を維持するために、低脂肪、低コレステロールの食事が推奨されます。 -
定期的な運動:
適度な運動は体重管理に役立ち、胆石の予防にもつながります。 -
水分補給:
十分な水分を摂取することで、胆汁の濃縮を防ぐことができます。 -
アルコールの摂取制限:
過度なアルコール摂取は胆嚢に負担をかけることがあるため、適度にすることが望ましいです。
結論
胆嚢は消化において重要な役割を果たす器官であり、その健康を保つことは全身の健康にとって非常に大切です。胆嚢に問題が生じると、痛みや不快感が現れることがあり、場合によっては手術が必要となることもあります。胆石や胆嚢炎などの疾患に対する予防措置や早期発見が重要であり、生活習慣の改善を通じて、胆嚢の健康を維持することが可能です。