妊娠期間において、胎児の肺は非常に重要な発達過程を経ます。肺の成熟は、出生後の自立的な呼吸を可能にするために不可欠であり、妊娠の進行に合わせてその発達が進みます。この過程を理解することは、妊婦や医療従事者にとって非常に重要です。胎児の肺は、妊娠のどの段階で完全に成熟するのでしょうか。以下にその詳細を説明します。
胎児の肺の発達
胎児の肺は、妊娠の初期段階ではまだ完全には発達していません。妊娠初期(約0〜12週)には、肺の基礎的な構造が形成されるものの、呼吸に必要な機能はほとんどありません。肺の発達は、妊娠中期(13〜26週)および後期(27週以降)に進行します。

1. 妊娠13〜16週
この期間、胎児の肺は気管支(気道)と呼ばれる部分が形成され、肺胞(酸素と二酸化炭素を交換する部分)の基礎が作られ始めます。しかし、この時点では肺はまだ機能的ではありません。まだ酸素を取り入れて血液中の酸素濃度を維持するための能力はなく、胎盤を通じて母体から酸素を供給されています。
2. 妊娠17〜24週
この段階では、胎児の肺はさらに発展し、肺胞がより多く形成されますが、それでも肺の成熟度は低いです。この時期に肺の発達が急速に進みますが、呼吸に必要な物質(サーファクタント)の分泌は十分ではありません。サーファクタントは肺胞が膨張するために重要な役割を果たし、呼吸を助ける物質です。この物質が不足していると、新生児は呼吸困難になる可能性があります。
3. 妊娠25〜28週
この時期に、肺はさらに成熟し、サーファクタントの分泌が始まります。しかし、まだ完全には十分ではなく、肺は未熟な状態が続きます。28週を過ぎると、早産児でも肺の発達が進み、呼吸器系の機能が改善される場合がありますが、通常は人工呼吸器を使用することが必要となります。
妊娠32〜34週目の肺の成熟
胎児の肺がほぼ完全に成熟するのは、妊娠32〜34週目です。この段階で、肺のサーファクタントの分泌が十分になり、肺胞が膨張しやすくなります。この時期の胎児は、早産であっても自分で呼吸できる可能性が高まります。しかし、呼吸器の完全な成熟にはまだ時間が必要です。
妊娠36〜37週目
妊娠36週を超えると、胎児の肺はほぼ完全に成熟します。この時期には、肺が自立して働くために必要なすべての構造と機能が整い、サーファクタントの分泌量も最大に達します。これにより、胎児は生まれた後に自分で呼吸する能力を持つようになります。
出産直前の肺の最終的な発達
出産前の最終的な肺の成熟は、妊娠38〜40週目でほぼ完了します。この時期、肺は新生児が生まれた後に必要なすべての機能を備えており、自分で呼吸を始めることができます。サーファクタントが十分に分泌され、肺胞が膨らみ、肺が酸素を効率的に取り込み、二酸化炭素を排出する準備が整います。
まとめ
胎児の肺は、妊娠の初期には未発達であり、進行する妊娠週数に伴って成熟していきます。32〜34週の間に肺はほぼ完全に成熟し、37週を超えると自分で呼吸できる能力が備わります。早産の場合でも、適切な医療介入により、肺の成熟を助けることができるため、早期に出産が行われる場合は、人工呼吸器の使用やサーファクタントの投与が行われます。胎児の肺の発達は、出産後の健康に大きな影響を与えるため、妊娠中期から後期にかけての適切な管理が非常に重要です。