血栓症(深部静脈血栓症、DVT)は、血液が血管内で固まり、血栓(血の塊)を形成する状態を指します。特に脚部の静脈に血栓が形成されることが多く、これが放置されると深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。血栓が肺に移動すると肺塞栓症(PE)を引き起こし、命に関わる場合もあります。この記事では、血栓症の原因、症状、予防方法、治療法について詳しく説明します。
血栓症の原因
血栓症は、血液が異常に凝固して血栓を形成することで発生します。血栓が形成される主な原因は、以下の3つの要因によって引き起こされます。

1. 血流の遅延
長時間の座りっぱなしや寝たきりの状態が続くと、脚の静脈内の血流が遅くなり、血栓ができやすくなります。長時間の飛行機や車での移動が一例です。これを「エコノミークラス症候群」とも呼び、特に足の深部静脈に血栓ができやすくなります。
2. 血管の損傷
手術や外傷などで血管に損傷が生じると、血栓ができるリスクが高まります。特に骨折や外科的手術後、血管が傷つくことで血栓が形成されることがあります。
3. 血液の凝固異常
遺伝的な要因や特定の病気(例:血友病やがん、ホルモン療法など)が血液の凝固を促進する場合もあります。この場合、血栓が形成されやすくなります。
血栓症の症状
血栓症の症状は個人によって異なりますが、一般的には以下のような症状が現れます。
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脚の腫れ: 脚の下部(特に足首やふくらはぎ)が腫れることがあります。
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痛みや圧迫感: 脚に痛みや圧迫感を感じることがあり、歩くのが難しくなることもあります。
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発赤や熱感: 血栓がある部分の皮膚が赤くなったり、温かくなったりすることがあります。
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足の冷感: 血流が遮断されることで、足が冷たく感じることがあります。
これらの症状が現れた場合、すぐに医師に相談することが重要です。
血栓症の予防方法
血栓症を予防するためには、血液の循環を促進し、血栓の形成を防ぐことが大切です。以下の予防方法が効果的です。
1. 適度な運動
血液の循環を良くするためには、定期的な運動が重要です。特に、長時間同じ姿勢でいる場合は、定期的に足を動かすことが血栓を予防する助けになります。特に旅行中や長時間の座りっぱなしでの仕事では、足を伸ばしたり、歩いたりすることが推奨されます。
2. こまめな水分補給
脱水症状が血液の凝固を助長することがありますので、適切な水分補給が重要です。特に長時間の移動や暑い環境では、水分をこまめに取るよう心がけましょう。
3. 弾性ストッキングの使用
医師の指導の下で弾性ストッキングを着用することにより、脚の血流を助け、血栓を予防することができます。これらは特に、手術後や妊娠中に有効です。
4. 定期的な医師の診察
特に血栓症のリスクが高い人(例えば、がん患者や心臓病患者など)は、定期的に医師の診察を受け、必要な検査を行うことが重要です。
血栓症の治療法
血栓症が発見された場合、治療は迅速に行う必要があります。治療法には、主に以下の方法があります。
1. 抗凝固薬
血栓が形成されるのを防ぐために、抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を使用します。最も一般的な抗凝固薬には、ワルファリンやヘパリンがあり、これにより血栓の拡大を防ぎます。
2. 直接経皮的治療(血栓の除去)
非常に大きな血栓があったり、抗凝固薬が効かない場合には、外科的またはカテーテルを使った治療で血栓を取り除くことが考慮されます。
3. 圧迫療法
弾性ストッキングや圧迫療法を用いることで、血液の循環を改善し、血栓の発展を防ぐことができます。
血栓症の予後と合併症
早期に治療を行えば、血栓症の予後は良好です。しかし、治療が遅れると、血栓が肺に移動して肺塞栓症を引き起こし、命にかかわる状態となることがあります。また、血栓が残ると、後遺症として脚の腫れや痛みが続く場合があります。このため、血栓症の早期発見と治療が非常に重要です。
結論
血栓症は放置すると命に関わるリスクが高い疾患ですが、適切な予防策を講じることで予防可能です。長時間座っている場合や、手術後などに血栓症のリスクが高まるため、こまめに足を動かしたり、医師に相談することが推奨されます。また、治療が遅れることなく行われれば、回復の可能性は高いので、早期発見と適切な治療が求められます。