脳波検査(EEG)とは何か
脳波検査(EEG:Electroencephalogram)は、脳の電気的活動を記録するための検査方法で、神経科学や臨床医学において重要な役割を果たしています。EEGは、脳のニューロン(神経細胞)が発生させる微弱な電気信号を測定し、それを記録する技術です。この検査は、主に神経系の疾患や脳の機能に関する問題を診断するために使用されます。

EEGの基本的な仕組み
脳波検査は、頭皮に配置された電極を使用して行います。これらの電極は、脳の表面で発生する電気信号を捉え、そのデータをコンピュータに送信して波形として表示します。波形は、通常、秒単位で変化する一連の信号として表され、これを専門の医師が解析することで、脳の異常な電気活動や疾患の兆候を発見します。
EEGの波形は、いくつかの異なる周波数帯域に分けられ、それぞれが脳の異なる状態を反映します。これらの波形の種類には、以下のものがあります:
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デルタ波(0.5–4 Hz)
主に深い睡眠中に見られる波形で、脳が休息し修復を行っている状態を示します。 -
シータ波(4–8 Hz)
軽い睡眠状態や、リラックスしている状態で見られます。瞑想や軽い集中時にも現れることがあります。 -
アルファ波(8–13 Hz)
覚醒しているがリラックスした状態のときに現れます。目を閉じてリラックスしている時に多く見られます。 -
ベータ波(13–30 Hz)
集中しているときや思考をしているときに見られます。精神的な活動が活発な状態での波形です。 -
ガンマ波(30 Hz以上)
高い認知活動を示す波形で、複雑な情報処理を行っているときに現れます。
脳波検査の目的と使用例
脳波検査は、以下のような様々な神経学的疾患の診断に用いられます:
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てんかん
EEGは、てんかん発作の兆候や発作のタイプを特定するのに非常に効果的です。発作の前兆となる異常な電気活動(発作前の放電)を記録することができます。 -
睡眠障害
睡眠時の脳波を記録することで、睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシーなどの睡眠障害を診断することができます。 -
脳の障害や損傷
脳卒中や脳外傷後に発生する電気的な異常を検出するためにEEGが使用されることがあります。 -
認知症やアルツハイマー病
脳波の変化は、アルツハイマー病などの認知症の初期段階においても見られることがあり、早期の診断に役立つことがあります。 -
精神疾患
一部の精神疾患(例えば、統合失調症やうつ病)でも、脳波に異常が見られることがあります。これにより、症状の理解が深まることがあります。
脳波検査の実施方法
脳波検査は、特別な準備を必要とせず、通常は外来で行われます。検査自体は比較的短時間で終わり、数十分程度で結果を得ることができます。以下は、一般的なEEG検査の流れです:
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電極の装着
頭皮に電極を付ける前に、髪の毛や皮膚の表面が清潔であることを確認します。電極は、特別なジェルや接着剤を使って頭皮に固定され、通常、10〜20個程度の電極が使用されます。 -
検査の実施
検査中は、リラックスして静かに座ったり横になったりします。時には、目を閉じる、深呼吸をする、あるいは軽い刺激を与える(例:光を点滅させる)こともあります。これにより、脳波の異常を誘発したり、反応を観察したりします。 -
結果の解析
検査終了後、医師は記録された波形を解析し、異常がないか確認します。場合によっては、さらに詳細な検査(例えば、24時間EEGモニタリングなど)が行われることもあります。
脳波検査の利点と制限
利点:
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EEGは非侵襲的で痛みを伴わない検査であるため、患者にとって負担が少ないです。
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脳の電気的な活動をリアルタイムで観察できるため、疾患の発作的な発生や異常を直接捉えることができます。
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比較的安価で実施でき、検査の準備や実施に多くの時間を必要としません。
制限:
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EEGは、深部の脳活動を捉えることができないため、脳の表面の活動に限定されるという制限があります。
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一部の脳の障害や疾患は、EEGに明確な異常を示さない場合があり、他の診断方法と組み合わせて使用する必要があります。
まとめ
脳波検査(EEG)は、脳の電気的な活動を記録するための重要な検査手段であり、てんかんや睡眠障害、脳の障害など、様々な神経学的な疾患の診断に役立ちます。EEGは、非侵襲的で比較的簡便に行える検査方法であり、その結果は神経学的な診断や治療計画において重要な情報を提供します。しかし、EEGだけではすべての脳の問題を検出することはできないため、他の検査方法と組み合わせて使用することが一般的です。