脾臓の腫れ(脾腫)は、様々な病状や異常が原因で発生する可能性があり、一般的に脾臓が正常な大きさを超えて拡大する現象を指します。脾臓は体内で重要な役割を果たしており、免疫システムの一部として血液をろ過し、老化した血球を破壊する働きを担っています。また、異常が発生すると、血液中の異常な成分を取り除く能力が低下し、さまざまな健康問題を引き起こすことがあります。脾臓の腫れは、急性または慢性であり、その原因は多岐にわたります。
脾臓の役割と正常な状態
脾臓は約12センチメートルの大きさで、通常は肋骨の下に位置しています。脾臓の主な機能は以下の通りです。

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血液のろ過: 血液中の不要な物質や老化した血球を取り除く。
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免疫反応: 細菌やウイルスなどの病原体に対して免疫反応を引き起こす。
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血液の貯蔵: 血小板や赤血球を貯蔵しており、必要に応じて体内で放出します。
これらの機能を果たすため、脾臓は健全な状態である必要があります。脾臓が異常に大きくなると、これらの機能に支障をきたし、健康に深刻な影響を与える可能性があります。
脾臓の腫れの原因
脾臓が腫れる原因は多岐にわたります。これらは主に以下のカテゴリに分類されます。
1. 感染症による脾臓の腫れ
ウイルスや細菌、寄生虫などの感染症が脾臓の腫れを引き起こすことがあります。これには以下のようなものが含まれます。
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ウイルス性肝炎: B型やC型肝炎ウイルスが脾臓を含む体内の多くの臓器に影響を与えることがあります。
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単核球症(モノヌクレオシス): エプスタイン・バーウイルス(EBウイルス)が原因で、特に若年層で脾臓の腫れを引き起こします。
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結核: 結核は体内の複数の臓器を侵すことがあり、脾臓もその影響を受けることがあります。
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マラリア: マラリアを引き起こす原虫が血液に感染すると、脾臓が腫れることがあります。
2. 肝臓疾患による脾臓の腫れ
肝硬変や肝炎など、肝臓の病気が進行すると、血流が阻害され、脾臓に血液が滞留して腫れることがあります。この状態は「脾臓腫脹」と呼ばれ、肝臓と脾臓の機能が関連していることを示しています。
3. 血液疾患による脾臓の腫れ
いくつかの血液疾患が脾臓の腫れを引き起こすことがあります。これには以下が含まれます。
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白血病: 白血病は血液細胞のがんであり、脾臓や他の臓器に腫れを引き起こすことがあります。
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骨髄異形成症候群: 骨髄が正常に血液細胞を生成できなくなる病気で、脾臓が腫れることがあります。
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貧血: 特に「遺伝性球状赤血球症」などの貧血が原因で脾臓が腫れることがあります。
4. 自己免疫疾患による脾臓の腫れ
自己免疫疾患では、免疫システムが誤って自分自身の細胞を攻撃することがあります。これにより脾臓が腫れることがあります。代表的な疾患には以下があります。
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全身性エリテマトーデス(SLE): この疾患は体の免疫システムが自分の臓器を攻撃し、脾臓を含むいくつかの臓器が腫れることがあります。
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関節リウマチ: 関節リウマチも自己免疫疾患であり、脾臓の腫れを引き起こすことがあります。
5. 癌による脾臓の腫れ
がん細胞が脾臓に転移することにより、腫れが生じる場合もあります。例えば、乳がん、肺がん、胃がんなどの転移が脾臓に及ぶことがあります。また、脾臓自体に原発性のがんが発生することもあります。
6. 他の疾患や状態による脾臓の腫れ
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肝臓のうっ血: 肝臓が障害を受け、血液が脾臓に戻ることで腫れが生じることがあります。
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膠原病: 膠原病や血管炎など、脾臓に炎症が生じることがあります。
脾臓の腫れの症状
脾臓が腫れても、初期段階では明確な症状が現れないことが多いです。しかし、腫れが進行するにつれて、以下のような症状が現れることがあります。
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腹部の膨満感や圧迫感
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体重減少
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発熱
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疲れやすさ、倦怠感
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腹痛や不快感(特に左側の上腹部)
脾臓が大きくなると、隣接する臓器(例えば胃)に圧力をかけ、食欲不振や消化不良などの問題を引き起こすこともあります。
診断と治療
脾臓の腫れを診断するためには、以下のような検査が行われます。
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超音波検査: 脾臓の大きさや形状を確認するために使用されます。
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血液検査: 感染症や血液疾患などの原因を特定するために行われます。
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CTスキャンやMRI: より詳細な画像診断を行い、脾臓の腫れの原因を特定します。
治療方法は、原因となる疾患によって異なります。感染症が原因の場合は抗生物質や抗ウイルス薬が使用されることがあります。血液疾患の場合は化学療法や骨髄移植が必要となる場合があります。自己免疫疾患の場合は免疫抑制剤やステロイド薬が使用されることがあります。
結論
脾臓の腫れは多くの病状によって引き起こされる可能性があり、その原因を特定することが重要です。症状が現れた場合には早期に医療機関を受診し、適切な治療を受けることが必要です。脾臓の腫れが進行することで、体内の他の機能にも影響を及ぼす可能性があるため、早期の対応が健康にとって重要です。