腋窩(わきの下)のしこりが現れる原因はさまざまであり、体内で発生するいくつかの異常が考えられます。腋窩にしこりを感じた場合、それが良性のものである場合もあれば、悪性のものもあり得るため、適切な診断を受けることが重要です。以下では、腋窩にしこりができる代表的な原因について詳細に説明します。
1. リンパ節の腫れ
腋窩は身体のリンパ節が集まっている部位で、体内で異常が起きたときに最初に反応する場所です。感染症、炎症、または免疫反応の結果として、リンパ節が腫れることがあります。代表的な原因としては以下のようなものがあります。
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風邪やインフルエンザ:これらのウイルス感染により、免疫系が反応してリンパ節が腫れることがあります。
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細菌感染:皮膚や毛包に細菌感染が起こると、腋窩のリンパ節が腫れることがあります。例えば、毛嚢炎や膿瘍が原因になることがあります。
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猫ひっかき病:猫にひっかかれた際に感染することがある細菌感染症で、リンパ節が腫れることがあります。
リンパ節の腫れは通常、一時的なもので、感染症が治るとともに自然に治癒します。しかし、腫れが長期間続く場合や、他の症状(発熱、発疹、体重減少など)が伴う場合は、さらなる検査が必要です。
2. 良性腫瘍
腋窩にしこりができる原因として、良性腫瘍が挙げられます。良性腫瘍は通常、痛みがなく、動くことができます。以下のような良性腫瘍が考えられます。
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脂肪腫(アテローム):皮膚の下に脂肪が塊となって現れる良性腫瘍です。触れると柔らかく、通常は痛みを伴いません。
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乳腺線維腺腫:腋窩の近くにある乳腺が腫れることがあります。この腫れも良性であり、通常は特別な治療を必要としません。
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リンパ管腫:リンパ管が異常に増殖して腫れを引き起こすことがあります。これも良性の腫瘍であり、しこりとして触れることがあります。
良性腫瘍は、通常は命に関わることはなく、見た目や大きさが気になる場合に外科的に取り除かれることがあります。
3. 悪性腫瘍
腋窩にしこりが現れる場合、悪性腫瘍、すなわちがんの可能性も否定できません。腋窩にできる悪性腫瘍としては、乳がんが最も一般的です。乳がんが腋窩に転移すると、腋窩のリンパ節にしこりが現れることがあります。
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乳がん:乳腺に発生したがんがリンパ系を通じて腋窩に転移することがあります。腋窩のしこりが硬く、動かない場合、悪性腫瘍である可能性があります。
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悪性リンパ腫:リンパ系に発生するがんで、腋窩のリンパ節にしこりが現れることがあります。この場合、しこりは痛みを伴わず、しばしば急激に大きくなります。
悪性腫瘍の疑いがある場合、早期の診断と治療が非常に重要です。しこりが硬く、動かず、痛みがない場合、または他の異常症状がある場合は、直ちに医師の診察を受けることが推奨されます。
4. 皮膚疾患
腋窩の皮膚に関連する疾患も、しこりを引き起こす原因となることがあります。これらはしばしば感染症や炎症によって発生します。
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膿瘍:皮膚や皮膚下で膿がたまることでしこりができることがあります。膿瘍は細菌感染によって引き起こされ、痛みを伴い、発熱を引き起こすこともあります。
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毛嚢炎:毛穴に細菌が感染すると、炎症を引き起こし、腫れやしこりが現れることがあります。通常は治療により改善しますが、感染が広がると膿瘍になることもあります。
これらの皮膚疾患は通常、抗生物質や外科的処置で治療が可能です。
5. その他の原因
腋窩のしこりには、上記の原因以外にもいくつかの可能性があります。例えば、薬剤による副作用やホルモンの変化が原因で腫れることもあります。特にホルモン療法や免疫抑制薬を使用している場合、リンパ節の腫れが現れることがあります。
また、妊娠や授乳中の女性では、ホルモンの変化が原因で腋窩にしこりができることもあります。これらのしこりは通常、時間と共に自然に治癒しますが、疑わしい場合は医師に相談することが重要です。
結論
腋窩にしこりが現れる原因はさまざまであり、良性のものから悪性のものまで多岐にわたります。しこりの特徴や痛みの有無、大きさ、発症時期などを考慮し、早期に医師の診察を受けることが最も重要です。特に悪性腫瘍の可能性がある場合は、早期発見が予後を大きく改善するため、無視せず適切な検査を受けるようにしましょう。
