腎炎(じんえん)は、腎臓の炎症を指す医学的な状態であり、腎臓の機能に重大な影響を及ぼす可能性があります。この疾患は、急性と慢性の2つの主要なタイプに分かれ、それぞれ異なる原因と症状を持っています。腎炎は、体内の老廃物や余分な水分を除去するという腎臓の重要な機能を妨げることがあり、適切な治療を受けないと腎不全に進行することもあります。本記事では、腎炎の原因、症状、診断方法、治療法について包括的に解説します。
腎炎の種類
腎炎は、その進行速度や原因によって大きく2種類に分けられます。これらは「急性腎炎」と「慢性腎炎」と呼ばれ、それぞれ治療方法や予後が異なります。

急性腎炎
急性腎炎は、腎臓の急速な炎症を引き起こす疾患です。主に感染症や免疫系の異常反応が原因となることが多いです。例えば、風邪や喉の感染症が原因で、免疫系が腎臓を攻撃する場合があります。急性腎炎の症状には、血尿(尿に血液が混ざる)、むくみ、発熱、疲労感などがあります。早期に治療を行えば、多くの場合回復が可能ですが、適切な治療が行われない場合、慢性腎炎に移行することもあります。
慢性腎炎
慢性腎炎は、腎臓の炎症が長期間にわたって続く疾患で、徐々に腎臓の機能が低下していきます。このタイプの腎炎は、長期間にわたる高血圧や糖尿病、免疫疾患などが原因で起こることがあります。慢性腎炎は、しばしば症状が目立たないため、診断が遅れることが多いです。しかし、症状が進行すると、腎機能の低下により体に必要な老廃物を排出することができなくなり、最終的には腎不全に至ることがあります。
腎炎の原因
腎炎の原因は多岐にわたりますが、主な原因は次の通りです。
1. 感染症
腎炎の最も一般的な原因の一つは、細菌やウイルスによる感染です。特に、A群溶血性連鎖球菌(のどの感染症の原因となる細菌)が引き起こす「急性糸球体腎炎」などが知られています。また、尿路感染症が腎臓に広がることで腎炎が発生することもあります。
2. 免疫系の異常
免疫系の異常により、体が自分の腎臓を攻撃することがあります。この場合、自己免疫疾患が関与していることが多いです。例えば、ループス腎炎(全身性エリテマトーデスによる腎炎)は、免疫系が異常に働き、腎臓を傷つける疾患です。
3. 慢性疾患
高血圧や糖尿病などの慢性疾患も腎炎の原因となります。これらの疾患が長期間続くことで、腎臓が慢性的にダメージを受け、炎症が引き起こされることがあります。
4. 薬物
一部の薬剤、特に長期間使用される薬や過剰に使用された薬は、腎臓にダメージを与える可能性があります。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗生物質などが例です。
腎炎の症状
腎炎の症状は、急性か慢性か、またその重症度によって異なります。急性腎炎の場合、以下のような症状が現れます。
- 血尿(尿が赤色または茶色になる)
- むくみ(特に足首や顔)
- 高血圧
- 発熱や寒気
- 疲労感や倦怠感
慢性腎炎の場合、症状が進行するにつれて以下のような症状が現れることがあります。
- むくみ
- 食欲不振
- 高血圧
- 体重減少
- 足や手のしびれ
これらの症状は、腎臓の機能が低下することに伴って現れます。
腎炎の診断方法
腎炎の診断は、患者の症状や病歴、検査結果を基に行われます。主な診断方法は以下の通りです。
1. 尿検査
尿に血液やたんぱく質が含まれているかを確認するための尿検査が行われます。血尿やたんぱく尿は腎炎の兆候であり、この検査によって腎臓の状態を評価することができます。
2. 血液検査
血液中のクレアチニンや尿素窒素(BUN)の濃度を測定することで、腎臓の機能を確認します。これらの値が高い場合、腎臓の機能が低下していることが示唆されます。
3. 腎臓の画像検査
超音波検査やCTスキャンなどの画像検査を行い、腎臓の構造やサイズを確認します。腎臓の大きさや形状に異常がある場合、腎炎の存在が疑われます。
4. 生検
腎臓の組織を少量採取して、顕微鏡で調べることがあります。これにより、炎症の程度や原因を特定することができます。
腎炎の治療法
腎炎の治療は、その原因や重症度に応じて異なります。治療の主な目的は、炎症を抑えることと、腎臓の機能を保護することです。
1. 薬物療法
急性腎炎や免疫系の異常が原因の場合、ステロイドや免疫抑制剤などが使用されることがあります。また、感染症が原因の場合は、抗生物質や抗ウイルス薬が処方されることがあります。
2. 高血圧の管理
腎炎が高血圧に伴っている場合、降圧薬を使用して血圧を管理することが重要です。これにより、腎臓への負担を軽減できます。
3. 食事療法
腎炎の治療中は、腎臓に負担をかけない食事を心がけることが推奨されます。低塩分、高カリウム、低たんぱく質の食事が推奨されることがあります。
4. 血液透析
慢性腎炎が進行して腎不全に至った場合、血液透析が必要となることがあります。透析は、人工的に血液中の老廃物や余分な水分を除去する治療法です。
まとめ
腎炎は、腎臓の炎症が原因で腎機能に重大な影響を与える疾患です。急性腎炎と慢性腎炎の2種類があり、それぞれ異なる原因と治療法があります。腎炎の早期発見と適切な治療が、腎臓の機能を守るために非常に重要です。腎炎の症状が現れた場合は、早急に医師の診断を受け、適切な治療を行うことが必要です。