腎盂炎(じんようえん)は、腎臓の一部である腎盂に感染が生じ、炎症を引き起こす疾患です。この病気は通常、細菌感染が原因で発生し、早期に適切な治療を行わなければ、腎臓の機能に深刻な影響を及ぼすことがあります。腎盂炎の症状は多岐にわたりますが、主要な症状やその背景について詳しく説明します。
1. 発熱と寒気
腎盂炎の最も一般的な症状の一つが発熱です。感染症に対する身体の反応として、高い体温が現れます。発熱は通常、突然に現れ、38度を超えることが多いです。これに伴い、寒気や震えも感じることが多く、患者は身体を震わせることがあります。これらの症状は体内で感染が広がっているサインであり、早期治療が求められます。
2. 腰痛
腎盂炎では、腰や背中に鋭い痛みを感じることがよくあります。この痛みは、腎臓の位置に近い部分、特に腰のあたりで強く感じることが一般的です。痛みの程度は人によって異なりますが、深刻な場合には動けないほどの痛みを引き起こすこともあります。痛みは、感染が腎盂に広がったことによる腎臓の腫れや圧力によって引き起こされます。
3. 頻尿と排尿時の痛み
腎盂炎の患者は、頻尿や排尿時の痛みを感じることがよくあります。これは、感染が尿道や膀胱から腎臓に広がることで、排尿に関連する部分が炎症を引き起こしているためです。排尿時に焼けるような痛みや不快感を感じることがあり、尿が少ししか出ないこともあります。
4. 悪寒と全身倦怠感
腎盂炎の患者は、体が非常に疲れやすく、全身的に倦怠感を感じることがあります。体が感染に対処するため、エネルギーを大量に消費するため、日常的な活動が難しくなることがあります。また、食欲が低下することも多く、体力が低下することで回復が遅れる場合もあります。
5. 嘔吐と吐き気
感染症が進行するにつれて、腎盂炎の患者は嘔吐や吐き気を伴うことがあります。これは、体内の毒素が蓄積され、体調が悪化することによって引き起こされる症状です。特に、腎臓が適切に機能していない場合、体内に老廃物が溜まり、これが胃腸に影響を及ぼすことがあります。
6. 尿の異常
腎盂炎の患者は、尿に異常を感じることがしばしばあります。尿が濁ったり、悪臭を放ったりすることがあります。また、血尿(尿に血液が混ざる現象)が見られることもあります。血尿は、感染が尿道や膀胱から腎臓に広がり、腎臓の組織に損傷を与えるために発生することがあります。
7. 体重減少
長期間にわたる腎盂炎や、治療が遅れた場合、体重減少が見られることがあります。食欲の低下や嘔吐が続くことにより、栄養の摂取が不足し、体重が減少することがあります。また、身体の炎症反応が強くなると、代謝が変化し、体重が減少する原因となります。
8. 精神的な症状
腎盂炎の進行が遅れると、患者の精神状態にも影響が出ることがあります。意識がぼんやりして、混乱や幻覚を感じることもあります。このような症状は、感染が重度になり、体内の毒素が脳に影響を与えることが原因です。
9. 高血圧
腎臓の機能が低下すると、高血圧を引き起こすことがあります。腎臓は血圧を調節する役割も担っており、感染によって腎臓が損傷すると、血圧が上昇することがあります。高血圧は、腎盂炎が進行する前に適切な治療が必要であるサインでもあります。
10. 肌の冷感
感染が進行して体温が不安定になると、皮膚に冷感を感じることがあります。血流が体の中心部に集中し、四肢が冷たく感じることがあるためです。冷や汗をかいたり、手足がひどく冷たく感じることもあります。
腎盂炎は放置すると腎不全や敗血症など、生命を脅かす重篤な状態に進行する可能性があります。これらの症状を感じた場合は、早期に医療機関を受診することが重要です。適切な抗生物質の投与や、場合によっては入院治療が必要です。腎盂炎の予防には、尿路感染症を早期に治療することや、日常的な水分補給、清潔を保つことが効果的です。
