女性の健康において、膣炎(または膣の炎症)は非常に一般的な問題です。膣炎は、膣の内部が炎症を起こし、不快な症状を引き起こす状態を指します。これは、細菌、真菌、ウイルス、アレルギー反応、または膣内のpHバランスの崩れなど、さまざまな原因によって引き起こされることがあります。この記事では、膣炎の種類、原因、症状、そしてその治療法について、詳細に解説します。
膣炎の種類
膣炎にはさまざまな種類がありますが、主に以下の3つのタイプが最も一般的です。

1. 細菌性膣炎(バクテリア・バガリス膣炎)
細菌性膣炎は、膣内の自然な細菌バランスが崩れ、病原性の細菌が過剰に増殖することによって引き起こされます。最も一般的な原因となる細菌は「ガードネレラ・バガリス」という菌で、この細菌が膣内で異常に増えることで炎症が発生します。細菌性膣炎は、性的接触や不衛生な衛生習慣、抗生物質の使用などが引き金となることがあります。
2. カンジダ膣炎
カンジダ膣炎は、膣内でカンジダという真菌が過剰に増殖することによって起こります。カンジダは、正常な膣内にも存在している微生物の一つですが、免疫力が低下したり、ホルモンバランスが崩れたりすることで異常に増殖し、炎症を引き起こします。特に、妊娠中や糖尿病患者、抗生物質の使用後に発症しやすいと言われています。
3. トリコモナス膣炎
トリコモナス膣炎は、トリコモナスという原虫が膣内に感染することによって引き起こされます。これは、性的接触によって感染することが一般的ですが、衛生状態の悪化や不衛生な環境にも関係しています。トリコモナス膣炎は、膣炎の中でも比較的少ない種類ですが、症状が重篤になることがあります。
膣炎の原因
膣炎の原因は非常に多岐に渡ります。主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
1. 細菌や真菌の感染
細菌性膣炎やカンジダ膣炎は、感染症によって引き起こされます。性交渉や衛生状態が悪い場合、これらの感染症は簡単に伝播し、膣内で炎症を引き起こすことがあります。
2. ホルモンバランスの乱れ
女性の体内でのホルモンバランスが崩れると、膣内のpHバランスにも影響を与えます。特に、妊娠中や更年期の女性はホルモン変動が激しく、この変動が膣炎を引き起こす原因となります。
3. 抗生物質や薬の使用
抗生物質や免疫抑制薬の使用は、膣内の正常な細菌バランスを乱し、カンジダなどの病原菌が増殖する原因になります。また、薬の副作用として膣炎が引き起こされることもあります。
4. 性的接触
性的接触は、膣炎の主な感染経路の一つです。特に不特定多数との性交渉が原因となり、細菌や真菌が感染することがあります。
5. 不衛生な衛生習慣
膣内を過剰に洗浄したり、不適切な生理用品を使用したりすることが膣内のpHバランスを崩す原因となり、膣炎を引き起こすことがあります。また、長時間の湿った状態や締め付けの強い衣類も影響します。
膣炎の症状
膣炎の症状は、炎症の種類や原因によって異なりますが、一般的には以下のような症状が見られます。
1. かゆみ
膣内や外陰部にかゆみを感じることが多いです。カンジダ膣炎では特に強いかゆみが生じることがあります。
2. おりものの異常
膣炎ではおりものの色や量が異常になることがあります。細菌性膣炎では、白っぽいまたは灰色がかったおりものが出ることが多く、カンジダ膣炎では、ヨーグルト状のおりものが見られることが特徴です。
3. 膣の痛みや不快感
膣内が炎症を起こすことで、性交時やトイレに行った際に痛みを感じることがあります。また、膣の内側に圧迫感や不快感を感じることもあります。
4. 悪臭
細菌性膣炎では、膣から悪臭を伴うおりものが出ることがあります。これは、膣内で細菌が増殖し、腐敗臭を放つためです。
5. 排尿時の痛み
膣炎が膀胱にも影響を及ぼすことがあり、排尿時に痛みを感じることがあります。これを「膀胱炎様症状」と呼ぶこともあります。
膣炎の診断
膣炎の診断は、医師による詳細な問診と検査によって行われます。通常、医師は患者の症状や病歴を確認し、必要に応じて膣内の分泌物を採取して顕微鏡検査や培養検査を行います。これにより、細菌性膣炎、カンジダ膣炎、トリコモナス膣炎などの原因を特定します。
膣炎の治療法
膣炎の治療法は、原因となる病原菌や感染症によって異なりますが、一般的な治療法として以下の方法が挙げられます。
1. 抗生物質や抗真菌薬の使用
細菌性膣炎の場合、抗生物質が処方されることがあります。カンジダ膣炎の場合は、抗真菌薬が使用されます。これらの薬は、膣内に直接塗布するタイプや経口薬として提供されることがあります。
2. pHバランスの調整
膣内のpHバランスが崩れたことが原因の場合、pHバランスを調整する薬や膣内洗浄液が処方されることがあります。また、食事や生活習慣の改善も推奨されます。
3. 生活習慣の改善
衛生状態を清潔に保つことが重要です。過剰な洗浄を避け、適切な生理用品を使用すること、そして性行為後にトイレを済ませることが膣炎の予防につながります。
4. 免疫力を高める
免疫力が低下すると、膣炎を引き起こしやすくなります。適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠を取ることで免疫力を高めることが予防に繋がります。
予防方法
膣炎の予防には、以下の方法が有効です。
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清潔を保つ: 過剰な膣内洗浄を避け、外陰部のみを清潔に保つようにしましょう。
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適切な下着の選択: 綿製の通気性の良い下着を選ぶことで、湿気が溜まりにくくなります。
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性行為後のケア: 性行為後は、すぐにトイレに行き、膣内を清潔に保つようにしましょう。
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ストレス管理と健康的な生活習慣: 健康的な食生活、適度な運動、十分な睡眠など、免疫力を高めることが予防に繋がります。
膣炎は非常に一般的な疾患であり、適切な治療を受けることで、ほとんどのケースが改善します。膣炎の症状を感じた場合は、早期に医師の診察を受けることが重要です。