自閉症スペクトラム障害(ASD)は、発達障害の一つで、社会的相互作用、コミュニケーション、行動に特有の障害を伴います。自閉症は生まれつきのものであり、通常は3歳までに症状が現れますが、症状の現れ方やその程度は個人差があります。自閉症の診断は、専門家による観察や評価を基に行われ、診断基準に基づいて確定されます。本記事では、自閉症の診断方法、診断基準、そしてその重症度について詳述します。
1. 自閉症の特徴
自閉症は主に三つの領域で特徴的な障害を示します:

- 社会的相互作用の困難:
- 自閉症の人々は、他者との関係を築くことに困難を抱えることが多いです。例えば、アイコンタクトを避けたり、他者の感情を読み取るのが難しかったりします。
- コミュニケーションの障害:
- 言語の発達が遅れたり、言葉を使ったコミュニケーションが難しいことがあります。また、同じ言葉やフレーズを繰り返すこと(エコラリア)も見られます。
- 限られた興味と反復的な行動:
- 自閉症の特徴的な行動として、特定の物事に強い興味を持ち、その活動に固執することがあります。反復的な動作やルーチンにこだわることがあり、環境の変化に対して強い抵抗を示すこともあります。
2. 自閉症の診断基準
自閉症の診断は、主に以下の基準に基づいて行われます:
2.1 DSM-5による診断基準
アメリカ精神医学会が発行する『診断と統計マニュアル(DSM-5)』は、自閉症スペクトラム障害の診断において広く使用されています。DSM-5による自閉症の診断基準は次のように定められています:
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社会的コミュニケーションと相互作用の障害:
- 複数の場面で、社会的な相互作用に困難が見られる。
- 他者の感情を理解したり、共感することが難しい。
- 言葉を使って感情を表現することが苦手である。
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反復的で限られた行動、興味、または活動:
- 繰り返しの行動や儀式的な活動に固執する。
- 限られた興味を持つ、または異常に強い集中を示す。
- 環境の変化に対して強い抵抗を示す。
これらの症状が、幼少期から持続しており、日常生活に支障をきたしている場合に、自閉症と診断されることが一般的です。
2.2 ICD-10による診断基準
世界保健機関(WHO)による『国際疾病分類(ICD-10)』も自閉症の診断に使用されます。ICD-10では、アスペルガー症候群、広汎性発達障害(PDD)などを一つのカテゴリーにまとめ、「自閉症スペクトラム障害」として診断されます。ICD-10では、症状の存在とその社会生活への影響が診断における重要な要素となります。
3. 自閉症の診断方法
自閉症の診断は、専門的な評価が必要です。診断には、医師、心理士、言語聴覚士、作業療法士など、複数の専門家が関与することが一般的です。
3.1 観察と面接
診断においては、まず観察と面接が行われます。医師や心理士は、子どもや成人の行動を観察し、社会的な相互作用や言語の発達を確認します。また、保護者との面接を通じて、発達の歴史や日常生活での困難についても情報を収集します。
3.2 標準化された評価ツール
自閉症の診断には、標準化された評価ツールが使用されることが多いです。代表的なものには、以下のものがあります:
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ADOS(自閉症診断観察スケール):
自閉症の行動を観察するための評価ツールで、子どもから大人まで幅広い年齢層に対応しています。 -
ADI-R(自閉症診断面接尺度):
親との面接を通じて、自閉症の診断基準を満たしているかどうかを評価します。
3.3 発達歴と行動の評価
診断時には、子どもの発達歴(言語や社会的スキルの発達状況)や日常生活での行動(学校での行動、家庭での様子など)についても詳しく評価されます。これにより、他の発達障害や精神的な問題と区別することができます。
4. 自閉症の重症度
自閉症はスペクトラム(広がり)のある障害であり、その重症度や症状の現れ方は個人によって異なります。自閉症の重症度は主に以下の三つのカテゴリーで分けられます:
- 軽度(High-functioning):
- 言語や認知機能が正常またはほぼ正常であり、社会的な相互作用やコミュニケーションにおいて困難を抱えつつも、日常生活を比較的自立して行える場合。
- 中等度(Moderate):
- 言語や認知機能にやや遅れがあり、日常生活で一定の支援が必要である場合。社会的相互作用やコミュニケーションにおいても大きな障害が見られる。
- 重度(Severe):
- 言語や認知機能に顕著な遅れがあり、社会的相互作用やコミュニケーションが非常に困難で、日常生活を行うためには常に支援が必要である場合。
自閉症の重症度は、年齢とともに変化することもあります。また、治療や支援によって、重症度が改善されることもあります。
5. 自閉症の治療と支援
自閉症には治療