血中の鉄分が過剰になる状態は、「鉄過剰症」や「ヘモクロマトーシス」と呼ばれ、体内の鉄の蓄積が異常に進んでしまう病気です。この状態が長期間続くと、肝臓や心臓、膵臓などの重要な臓器に損傷を与える可能性があります。そのため、鉄分過剰症を早期に発見し、適切に治療を行うことが非常に重要です。この記事では、鉄分過剰症の原因、症状、診断方法、治療法について詳しく解説します。
鉄過剰症の原因
鉄過剰症の主な原因は以下の通りです。
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遺伝性ヘモクロマトーシス
遺伝性ヘモクロマトーシスは、鉄を過剰に吸収する遺伝的な疾患です。体内で鉄を処理する能力が低下し、鉄が蓄積されてしまいます。この病気は、特に白人の男性に多く見られる遺伝病です。 -
過剰な鉄摂取
鉄分が多く含まれるサプリメントを過剰に摂取したり、鉄強化食品を多く摂取することが原因で鉄分が過剰になることがあります。 -
慢性疾患や血液疾患
慢性的な貧血を治療するために鉄分を補充することがありますが、これが過剰になると鉄過剰症のリスクを引き起こすことがあります。また、血液の障害や頻繁な輸血も鉄過剰症の原因となる場合があります。 -
アルコールの過剰摂取
長期間にわたるアルコールの過剰摂取も、鉄分の過剰蓄積を引き起こすことがあります。アルコールは肝臓にダメージを与えるため、鉄分が正常に処理されなくなります。
鉄過剰症の症状
鉄分が体内に過剰に蓄積されると、さまざまな症状が現れます。初期の段階では症状が軽度であるため、見逃されがちですが、進行すると以下のような症状が現れます。
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疲労感や倦怠感
鉄分が過剰に蓄積されると、体はその過剰な鉄を処理するためにエネルギーを使うため、常に疲れを感じやすくなります。 -
関節痛
鉄が関節に蓄積されることで、関節炎や関節痛が起こることがあります。 -
肝臓や心臓の障害
鉄分が肝臓や心臓に蓄積すると、それぞれ肝硬変や心不全などの重篤な疾患を引き起こすことがあります。 -
皮膚の色が暗くなる
鉄過剰症では、皮膚が黒ずんだり、くすんだりすることがあります。これは「鉄沈着症」と呼ばれ、過剰な鉄が皮膚に蓄積することによって起こります。 -
糖尿病
鉄分が膵臓に蓄積すると、インスリンの分泌が妨げられ、糖尿病を引き起こすことがあります。
鉄過剰症の診断
鉄過剰症の診断にはいくつかの検査が行われます。最も一般的な検査は以下の通りです。
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血液検査
血液検査で、血中の鉄濃度やフェリチン(鉄貯蔵タンパク質)のレベルを測定します。フェリチンが高い場合、鉄分が過剰に蓄積されている可能性があります。 -
遺伝子検査
遺伝性ヘモクロマトーシスが疑われる場合、遺伝子検査を行い、特定の遺伝子異常があるかを調べます。 -
肝臓の画像診断
進行した場合、肝臓やその他の臓器にどの程度鉄が蓄積されているかを確認するために、肝臓の超音波検査やMRIが行われることがあります。 -
肝生検
鉄の蓄積が疑われる場合、肝臓からサンプルを採取し、鉄の蓄積状況を直接確認することがあります。
鉄過剰症の治療法
鉄過剰症の治療は、原因や進行具合によって異なりますが、主に以下の方法が用いられます。
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瀉血療法(しゃけつりょうほう)
鉄分を減らすための最も一般的な方法は、瀉血療法です。この方法では、定期的に血液を少量抜き取ることで、体内の鉄分を減少させます。瀉血は、鉄を除去する最も効果的な方法とされています。 -
鉄キレート療法
鉄分を体外に排出するために、鉄を結びつけて排出を促す薬を服用する治療法です。鉄キレート剤は、注射や経口で使用されますが、通常は瀉血療法と併用されることが多いです。 -
食事療法
鉄分を過剰に摂取しないよう、食事を管理することが重要です。赤身肉や鉄強化食品を控え、ビタミンCが豊富な食べ物を摂ることで鉄の吸収を抑制することができます。 -
肝臓移植
進行した鉄過剰症により、肝臓が重度に損傷している場合には、肝臓移植が検討されることがあります。移植後は鉄分の管理が引き続き重要となります。
生活習慣の改善
治療を受けている場合でも、日常生活における注意が重要です。以下の点を心がけることで、鉄過剰症の進行を防ぐことができます。
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アルコールを控える
アルコールは肝臓に負担をかけ、鉄分の処理能力を低下させるため、過剰摂取は避けましょう。 -
定期的な運動を行う
適度な運動は、鉄の代謝を改善し、全体的な健康を保つ助けになります。 -
医師の指示に従う
治療中は、定期的に医師の診察を受け、血液検査やその他の検査を通じて、鉄分の状態を監視することが重要です。
結論
鉄過剰症は適切な治療を受ければ管理が可能ですが、放置すると深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。早期に診断を受け、治療を開始することで、健康へのリスクを最小限に抑えることができます。鉄分の摂取や生活習慣に注意を払い、定期的な健康チェックを行うことが重要です。
